05 嫉妬の王子と胃痛の側近
執務室に、さらなる嵐が巻き起こる。
「君のような純粋な令嬢を、こんな粗野な男に渡すわけにはいかないな」
他国のエドワード王子が、私の手を取って甘く微笑んだ。
……あら? この方も、殿下と同じくらい素敵な騎士様ね。
「ありがとうございます。でも、私は殿下の……」
「離せ!」
私の言葉を遮って、殿下がエドワード王子の胸倉を掴み上げた。
その瞳は、先ほどまでの「冷徹な王子」の仮面をかなぐり捨て、剥き出しの独占欲に満ちている。
「貴様、俺の目の前で……! 殺されたいのか!?」
「おっと、怖い怖い。そんなに怒るなんて、彼女を心底愛しているんだね?」
エドワード王子がニヤリと笑う。
その横で、側近のゼノンが深く溜息をつき、私の耳元で囁いた。
「……お嬢様。殿下の顔を見てください。悪役の演技など、嫉妬のあまり既に跡形もありません。今の殿下、本当にただの『愛妻家』ですよ」
私は殿下の赤くなった顔を見つめた。
なるほど、殿下の照れ隠しは、ここまで進化していたのね。
「殿下、そんなに嫉妬しなくても……あ、でも、嬉しいです!」
私は殿下の背中に抱きついた。
王子は「っ!!」と声を上げ、その場に固まる。
その姿を見て、側近のゼノンが「ああ、今日も今日とて王宮は平和だ……(胃が痛い)」と遠い目をするのであった。




