04 仮面が剥がれる不意討ちのキス
執務室は、相変わらずカオスだった。
窓の外には反逆者たちが潜んでいるというのに、私は殿下の隣で、焼きたてのマドレーヌを食べている。
「……あーん、です」
私はマドレーヌをひとかけら、殿下の口元に差し出した。
殿下は「貴様……!」と怒鳴ろうとして、窓の外の気配を察し、ピタリと動きを止めた。
「……ッ、今夜は、これくらいにしてやる」
そう言って殿下は、逃げるように私から顔を背ける。
……あぁ、本当に殿下は照れ屋さん。
でも、さっき、私の指が殿下の唇に触れたとき、殿下が少しだけ頬を染めて、私を愛おしそうに見つめたのを私は見逃さなかった。
「殿下、そんなに私を拒まないでください。……私、殿下のことが大好きなんです」
私がまっすぐに目を見つめてそう言うと、殿下の表情から「悪役の仮面」がスッと消えた。
その瞳には、今までの罵倒なんて嘘のような、熱い色が宿っている。
「……お前という奴は。私がどれだけ、お前を遠ざけようと必死になっているか、これっぽっちも分かっていないんだな」
殿下は私の手首を掴み、そのまま壁際まで押し込んだ。
壁ドン、というやつだ。
距離が近すぎて、殿下の鼓動の音が聞こえる。
「……ッ、反逆者ども、見ていろ。俺の女に指一本触れさせない」
殿下は私にそう囁くと、私の唇を塞ぐように、深く熱い口づけを落とした。
それは、罵倒の言葉よりもずっと雄弁に、殿下の私への執着と愛を伝えていた。
「……ふふ、やっぱり。殿下は、私のこと、大好きなんですよね?」
私が耳元でそう言うと、殿下は真っ赤になって、「うるさい!」と叫びながら、また慌てて机に戻り、何事もなかったかのように書類に向き直った。
……でも、耳まで真っ赤ですよ、殿下。




