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揺らぐ光を宿す少女は、闇の継承者に選ばれる ― ノクタ・ルミナ:優しい光の降る場所 ―  作者: 雪ノ燈子


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01│でも、誰も彼女を見ない -01-

春の光が王都ルミナリアを包みこんでいた。


王城を中心に白い街並みが並んでいる。

大通りには店が軒を連ね、人々の声と笑いが絶えない。



パンを焼く香ばしい匂い。

商人の呼び込みの声。

色とりどりの布や魔道具を並べた露店の間を、人々が楽しそうに行き交っている。


王都はいつも活気に満ちている――と、村で聞いていた通りだった。


その北の丘に建つのが、王国最高峰の魔法学院――

ルミナリア王立聖学院。


三日月の弧を描くように連なる学舎の塔。

その足元に広がるレクシア湖は鏡のように澄み、宙に浮かぶ魔法灯をゆらりと映していた。



この国――ルミナリア王国は、魔法によって栄えた国だ。


王家を中心に、四つの公爵家がその力を支えている。

アストレイド、ノクティル、ヴァルガ、ヴェリアス。


その子弟たちもまた、この学院で学ぶ。

つまりここは、王国の未来が集まる場所でもある。



「……ここが、ルミナリア王立聖学院。」


フィーナ・セレスは、胸の奥でそっとその名を繰り返した。

言葉にした瞬間、心臓が少し強く打った。


今日はこの学院の入学式。

フィーナは特待生としてここに通うことになっていた。


奨学生とはいえ、この光に満ちた世界の中に自分が立っていることが、まだ夢のようだった。


(私、本当に……来たんだ)


風が頬を撫で、制服のスカートを揺らした。


湖面に映る塔がゆらりと揺れる。

その揺らぎを見つめていると、胸の奥に残る熱がそっと灯った気がした。


思い出すのは、あの夜のこと。





村に届いた学院からの特待生試験の招待状。


そこに差出人の名はなかった。


けれど、そこにはこう書かれていた。


「ルミナリア王立聖学院で学べば、きっとこの土地を豊かにする方法が見つかるだろう。」


その言葉を思い出すたび、胸が少し熱くなる。


あの夜、森で暴走した私を助けてくれた神さま。

まるであの人が言っているかのように聞こえた。


村を救いたい。

私に、それができるのかもしれない。


その思いだけで、私は夢中で魔導書のページをめくり続けた。

眠るのも忘れて、何度も何度も。


そして今、ここに立っている。






学院の門前の広場には、新入生たちが集まっていた。


「ねぇ、あなたも新入生?」


振り向くと、赤みの強い茶色の髪を高く結んだポニーテールがふわりと揺れた。


「私はミア・カルディナ!あなたは?」

「……フィーナ・セレスです。」

「フィーナね!よかった〜、話せる人がいて!私、さっきから緊張しっぱなしで!」

「えっと…カルディナって……貴族の、あの商家の?」


フィーナは恐る恐る尋ねる。

当然だ。シルヴァリアには貴族はいないからしきたりが分からない。

失礼があったら大変だ。


その言葉を聞いてミアは目を真ん丸に見開き、くすくすと笑った。


「うん。でも、この学院では身分なんて関係ないんだって。

 貴族も平民も、みんな同じ生徒。だから仲良くしてよ!」


ミアはまたふわりと笑った。屈託のないその笑顔に、フィーナの肩の力がふっと抜けた。


「二人とも、入学式はそっちじゃないわ。」


背後から落ち着いた声がした。


「湖の方の聖堂が会場ですって。案内板を見てきたの。」


灰青の髪を整えた少女が、静かな瞳でこちらを見る。


「ありがとう!私はミア!こっちはフィーナ!」


ミアが軽やかに返事をする。


「ラナ・ヴェイル。……一緒に行きましょうか。」


三人は並んで歩き出す。

光に満ちた学院の回廊を進みながら、フィーナは胸の奥の鼓動を感じていた。


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