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1-13:☆ヴァージニアちゃんの乙女日記☆

公開タイミング、しばらく変動になります(どの時間帯がいいか検討するため

 えっと、まずはあらためて自己紹介。

 あたしは辺境伯クレメンスの娘、ヴァージニア。

 巷では美少女として有名。

 でも容姿を褒められると不機嫌になるから、初対面のときはとくに注意して。


 ……どうしてかって? そりゃ美人で得することは多いし、女の子に生まれたのなら、ぶさいくじゃないほうがいいに決まってるかもね。

 でもほどよいバランスというものがあって、可愛すぎるとそれはそれで大変なの。


 男のひとはあたしをペットや美術品のように扱いたがるし、女の子は嫉妬して嫌がらせばかりしてくるから。

 おかげで生まれてから一度も、心を許せる恋人とめぐりあうこともなければ、同性のお友だちができることもなかったわ。


 あげくのはてに美しさが災いして、恐ろしい魔物にさらわれてしまったのだから、冒険者さんだってさすがに、あたしがどれだけ苦労しているのか理解できるでしょ?


 あなたがもし白馬の王子さまになりたいのであれば、はじめに謝っておくわ。

 見知らぬ相手にキスされて喜ぶほど男性に飢えていないし、あまり強引にせまられると、命の恩人とはいえビンタをお見舞いしちゃうかも。


 それでもいいっていうのなら、いえ、こんなふうにお願いできるほど余裕があるわけでもないのだけど……あたしを助けてくれたときには、お友だちからはじめてもらえると嬉しいな。


 だって死にそうなめにあって最初に後悔したのは、燃えるような恋ができなかったことより、ずっと孤独に生きてきたことのほうだったもの。

 考えてもみなさいよ。

 生まれてから一度もお友だちができないって、最悪じゃない?

 

 ……あ、もしかして今、笑ったでしょ。

 でもいいわ。

 あたしを助けてくれるわけだし、ちょっとくらいの無礼は許してあげる。


 さてさて、無駄話はこのへんにして。

 魔物にさらわれるハメになったヴァージニアちゃんが、どのくらい必死にがんばっているのか、あなたに知ってもらいましょう。


 お願いだから笑わないで聞いてよね、まだ見ぬお友だち第一号さん☆

   

 

 ◇



 そもそもの発端は、とある古代遺物フォークロアだったの。


 あたしをさらった〈雪の女王〉の話によると、莫大な魔力と引き替えにあらゆる問いにひとつだけ答えてくれる代物で――好奇心が旺盛な彼女はなんと数百年もの間、その〈真実の鏡(シピーゲル)〉なる魔法のアイテムを、探し求めていたらしいの。


 で、今は女王の住処になっていることから予想できるでしょうけど、わたしにとっては不運なことに、辺境の雪原にぽつんと佇むこの遺跡に〈真実の鏡〉は眠っていたわけ。


 念願のアイテムを手にいれた女王は、さっそくその力を試してみることにしたわ。

 魔物のくせにやたらと潔癖症。そのうえ自らの美しさをなによりも自慢にしていた彼女は、ありあまる魔力を使って、真実を教えてくれる鏡にこう問いかけたの。


 ――鏡よ鏡よ鏡さん、この世でもっとも美しいのはだあれ?


 すると古代遺物は、彼女にこう答えました。


『あなたは確かに美しい。しかし内に宿りし魂は泥にまみれ、ひとたび近づけば、誰もがその汚らわしさに幻滅してしまう。ゆえにこの世でもっとも美しいのは、辺境伯クレメンスの娘、ヴァージニア。透きとおったまなざしに無垢なる心。誰もが彼女こそ雪のように美しい姫(スノウ・ホワイト)だと、賞賛の言葉を投げかけるだろう』


 

 女王がたいそうお怒りになったのは、あえて言うまでもないかしら。

 長年追い求めてきた鏡を叩き割ってしまうほどだから……神に近い魔物とはいえ、知りたくもない真実を告げられたときの反応は、人間とそう変わりはないのかも。


 そのあとに起こったことは、冒険者さんがご想像しているとおり。

 はた迷惑な鏡のとばっちりで逆恨みされたヴァージニアちゃんは、女王の手によってさらわれてしまい、今はこうして遺跡内のどこかに閉じこめられてしまったとさ。


 冷酷な女王はあたしを閉じこめるとき、こう言って笑いながら去っていったわ。


『雪のごとく白い彫像になったころ、またご挨拶しにまいります。恐怖のあまり美しくゆがんでしまったあなたのお顔を、ぜひとも拝見させてくださいましね』


 んああっ!! 思いだしただけでムカついてきちゃった!!

 あの女王ってばほんとに最悪よね。

 魔物だけにびっくりするくらい可愛いけど、鏡が告げたように性根が腐りきっているから、ずっとひとりぼっちで生きてきたはずよ。

 このヴァージニアちゃんが断言するのだからまちがいないわ。

 だってあたしもお友だちいないし。


 ……自分で言ってて悲しくなってきたから、そろそろ本題に入りましょ。

 そんなわけでやたらと寒いところに閉じこめられてしまったのだけど、よき淑女の嗜みとして習っていた魔法が、ここにきて役に立ってきたの。


 寒さを和らげてくれる術を教えてくれた、最初の家庭教師さんに感謝しなくちゃ。

 当時九歳だったあたしの入浴を水晶の魔法でのぞいていたことがバレて、お父さまに追放されてしまったことのほうが印象に残っているけど。

 優しくていいひとだと思っていたのに、まさかド変態だったとは。


 ええと……なんの話だっけ? そうそう、ここから抜けだす方法よね。


 ひとまず寒さはしのぐことができたのだけど、あたしって本職の魔法使いみたいに生まれつき才能があったわけじゃないし、冒険者さんみたいに修行で鍛えているわけでもないから、内なる魔力マナの量はそんなに多くないの。

 だから急いで抜けださないと魔法が切れてしまうし、そりゃ必死になって頭を働かせたわ。


 最初に疑問を感じたのは、どうして遺跡の中でここだけ、やたらと寒いのかってこと。

 あなたもおかしいと思わなかった? 

 これほどまでに室温が低いことには、必ず理由があるはずなの。

 たとえば――〝外の雪原から冷気が流れこんできている〟とかね。


 つまりあたしが考えたのは、このエリアのどこかに通気口か、抜け穴がある可能性。

 古代の謎技術によって作られた遺跡とはいえ空気を循環させる必要はあるはずだし、あるいは千年以上もの年月の中で、老朽化して崩れた壁や床があるかもしれないでしょ。

 

 ねえ、あたしのこと見直した?

 たぶん冒険者さんが思っているより、ヴァージニアちゃんって賢いの。

 容姿よりもそっちを褒めてくれたほうが好感度はあがるから、よーく覚えておいて。


 さて、時間がそんなにあるわけでもないから、手短に結論だけ言うわね。

 ありました。通気口。


 たぶんほかのエリアにも同じものがあるっぽいのだけど、表面にうすい膜のようなものが貼ってあって、普通の壁と見分けがつかないようになっているの。

 だけどこのエリアの通気口だけは膜がちょっと剥がれていて、そこから雪原の冷気が流れこんできているわけ。


 見た感じ表面に貼ってある膜のようなものに、室内の温度を調整する力があるみたい。今は老朽化しちゃって壊れているみたいだけど、この広いエリア全体に効果をおよぼしているのだとしたら、ものすごい技術よね。


 そんなわけであたしは、通気口を使って抜けだすことにしたわ。女王や使い魔にバレるとまずいし、念のため見つけられないように隠しておくからね。


 冒険者さんにだけはわかるように目印をつけてあるから、あなたもそこを通ってヴァージニアちゃんのあとを追ってきて。


 もし無事に合流することができたら、あなたのことも教えてください。

 まだ見ぬお友だちがどんなひとなのか期待しつつ、今はちょっと休憩しています。

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