表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

気まぐれ

5話の続き

男は静かに、路地裏の奥へと歩いていく。

女の子は少しだけ戸惑いながらも、その後を追った。

「あの……用事って、こっちに何かあるんですか?」

暗い路地。人の気配もない。

違和感はあったはずだ。

それでも信じきっていた。

男は、足を止める。

そして、ゆっくりと振り返った。

「ダメだよ」

口元が、歪む。

「いくら信用してるとはいえ、路地裏までついてきちゃ」

「え……?」

理解が追いつく前に男の筋肉が、異様に膨れ上がった。

次の瞬間。

視界が追いつかない速度で、男の足が振り抜かれる。

鈍い音。

そして鮮血が、飛び散った。

「あぁぁぁぁぁ!!」

崩れ落ちる女の子。

潰された足。

あり得ない方向に曲がっている。

「痛い……痛いよぉ……!」

泣き叫ぶ声が、路地裏に響く。

だが誰も来ない。

「安心しろよ」

男はゆっくりと近づく。

その顔には、もうさっきまで優男の面影はない。

「殺しはしねぇ。貴重な食料は、ちゃんとストックしねぇとな」

腕を掴み、引きずろうとしたその瞬間。

「そこまでよ」

声。

空気が張り詰める。

「……あ?」

男が振り返る。

そこに立っていたのはヴェルナ。

「なんだ、お前……!」

一瞬、目を見開く。

「ブレイドか!?」

着ているコートに視線が行く。

だが、すぐに違和感に気づく。

「……いや、違うな」

目を細める。

「お前、ヴェイルか」

ニヤリ、と笑う。

「なんでヴェイルがブレイドの格好してんだ?」

ヴェルナは一歩、踏み出す。

「こっちにも色々事情があるのよ」

「はっ……なるほどな」

男は肩をすくめる。

「分けてほしいのか?生憎、こっちは譲る気はねぇよ」

「さっさと消えろ」

その言葉に

「助けて……」

か細い声。

女の子が、必死にこちらへ手を伸ばしている。

瞬の沈黙。

そして、ヴェルナは口を開く。

「……こちらも退く気なんてないわ」

男の表情が、僅かに歪む。

「おいおい、こんなとこで争ってもメリットねぇだろ」

「……」

「それでもやるってか?」

「えぇ」

ヴェルナは静かに構える。

「ただの気まぐれよ」

次の瞬間、空気が弾けた。

男が踏み込む。

地面が砕けるほどの脚力。

だが

「遅い」

ヴェルナの姿が、消える。

背後。

鋭い蹴りが、男の脇腹を貫く。

「がっ……!?」

吹き飛ぶ。

壁に叩きつけられ、粉塵が舞う。

「……っ!」

男はすぐに立ち上がる。

だが、その身体はさらに膨れ上がっていく。

筋肉が軋み、爪が伸び、牙が露出する。

「……ははっ、いいねぇ!」

完全に戦闘形態。

再び突っ込む。今度は速い。

だが

それでも届かない。

ヴェルナは最小限の動きでそれをいなし、

的確に急所へと打撃を叩き込む。

一撃。

二撃。

三撃。

確実に削る。

「……何故、当たらない……!」

男の動きが鈍る。

その隙を逃さない。

「終わり」

振り下ろされる一撃。

男の身体が地面に叩きつけられる。

動かない。

完全に、制圧。

ヴェルナはゆっくりと歩み寄る。

「生憎ね」

見下ろしながら、淡々と言う。

「落ちこぼれとはいえ、私はアルシェイド」

「そこらの野良にヴェイルに負けるほど、落ちぶれてない」

爪を出し、腕を上げる。

トドメを刺すために

その瞬間。

男の口元が、ニヤリと歪んだ。

「調子に乗るなよ…小娘風情が」

小さな筒が、弾ける。

「っ!?」

煙。刺激臭。

視界が、一気に白く染まる。

「がっ……!」

喉が焼けるように痛い。

目が開かない。

身体が、動かない。

「はっ……!」

男がゆっくりと立ち上がる。

「たしかに強ぇよ」

吐き捨てるように言う。

「でも、実戦経験が足りてねぇな」

足音が近づく。

(まさかヴェイルが人間の武器使うなんて…)

爪が、振り上げられる気配。

「よくも邪魔してくれたなぁ!」

(……あぁ)

力が入らない。

(私、ここで死ぬんだ)

ぼんやりとした意識の中で思う。

結局、何もできなかった。

認められることもなく。

何も変えられず。悔しかった…。

「来世はもう少し、マシな死に方ができるといいな」

ゆっくりと、目を閉じる。

数秒。静寂。

(……あれ?)

何も来ない。

恐る恐る、目を開ける。

そこにあったのは

地面に転がる、男の首。

遅れて、首を失った身体が崩れ落ちる。

「最後、油断したな」

その後ろに立っていたのは黒いコートの男。

「……なんで」

まるで最初からそこにいたかのように、レイは静かに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ