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街に潜む闇

4話の続き

バレないように距離を取りながら、男の後をつける。

ぱっと見は、どこにでもいそうな高身長の大人の男性。

落ち着いた雰囲気で、特に怪しいところはない。

そのまま男は街のほうへ向かっていく。

(……どこに行く気?)

警戒しながらついていくと、やがて足を止めたのは

「……さっきのお店」

精肉店の前だった。

ヴェルナは物陰から様子を窺う。

(私と同じ思考なのかな……)

だが、男は店に入る様子はない。

肉を買う素振りすら見せず、ただ店の前で待っている。

しばらくして、店の扉が開いた。

中から出てきたのは女の子。

自分と同じくらいか、少し下に見える年頃。

「ごめん、お待たせ」

「大丈夫だよ。今来たばかりだから」

自然なやり取り。

どこにでもある会話。

だが、その光景にヴェルナはゾッとする。

(……まさか)

「お母さん、行ってくるね」

「あまり遅くならないようにね」

「娘をよろしくお願いします」

「もちろんです」

店の中から母親の声。

男は柔らかく微笑んで応える。

そのまま二人は並んで歩き出した。

(あの親子……気づいてない)

男がヴェイルだということに。

気になって、さらに後を追う。

その後の光景は、あまりにも普通だった。

服を見て回り、店に入り、食事をする。

ヴェルナは距離を取りながら、客のふりをしてそれを観察する。

笑い合う二人。楽しそうな会話。

どこからどう見ても、ただのデートだった。

女の子は本当に楽しそうだった。

無理もない。

正体を隠していれば、あの男はただの優しくて爽やかな大人の男性なのだから。

(……なるほど)

理解が追いつく。

気がつけば、空は暗くなっていた。

夜。

「私、そろそろ帰らないと」

女の子が少し名残惜しそうに言う。

「ああ。その前に、ちょっと付き合ってくれないかな」

「いいよ!」

二人はそのまま、夜の道を歩いていく。

人気の少ない方向へ。

(やっぱり……)

胸の奥が、ざわつく。

男は迷いなく路地裏へ入っていく。

「……捕食する気だ」

小さく呟く。足が止まる。

(どうするべき……)

助ける?でもなんで?

別に助ける理由なんてない。

私だって、しようとしたことだ。

これから、することだ。

ゆっくりと、後ろへ下がる。

邪魔する理由なんてない。

このまま立ち去ろう。

関係ない。そう思ったのに。

足が、止まる。

(……なんで私、こんなことしてるんだろ)

頭に浮かぶのは、昼間の光景。

街の人たちの笑顔。

優しくされたこと。

あんな顔、今まで向けられたことがなかった。

子どもの頃から、ずっと蔑まれて、冷笑されてきた。

それが当たり前だった。

なのに。

(……あの笑顔が)

もし、自分が見捨てたら。あの笑顔が、消える。

そう思った瞬間―

「……っ」

気づけば、身体が動いていた。

「私ってチョロいな…」

ヴェルナは、迷いを振り払うようにして

路地裏の中へ踏み込んだ。

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