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夜の街にて

1話の続きになります。

夜の空気は、 少し冷たい。

人間の街は明るすぎて、 落ち着かない。

それでも、 ここでやるしかない。

違法捕食。

見つかれば処分対象。

それでも

(やるしかない)

視線を巡らせる。人気の少ない通り。

監視の目も薄い区域。

その中に、 一人。 男がいた。

黒いコートを着た、 背の高い男。

街灯の下に、 静かに立っている。

……妙だ。 逃げる気配がない。

恐怖も、 警戒も感じられない。

(都合がいい)

そう判断する。 私は静かに近づいた。

気配を殺し、 音を消す。

距離を詰める。

あと一歩。 手を伸ばす。

その瞬間

「遅い」 声。

次の瞬間、 視界が回転した。

何が起きたのか理解する前に、 地面に叩きつけられる。

呼吸が止まる。

「……っ!」

動けない。

腕を押さえつけられ、 完全に制圧される。

強い。 あり得ないほどに。

(……最悪) 

理解する。  

これは、 ただの人間じゃない。

逃げられない。

「ヴェイルか」

淡々とした声。 感情のない確認。

「違法捕食」

終わった。 そう思った。

だったら、 せめて。

「……殺せ」

短く言う。 抵抗はしない。

命乞いもしない。

それだけは、 最後まで守る。

男は、 ほんの一瞬だけ沈黙した。

そして視線が、 こちらに落ちる。

(……?)

違和感。 その目が、 わずかに見開かれた。

ほんの一瞬だけ。

理解できないものを見たみたいに。

それから。 男の動きが、 止まった。

押さえつけていた力が、 わずかに緩む。

判断が、 遅れた。

それだけで、 十分だった。

視界が暗くなる。

(……何、 今の)

そう思ったところで、 意識が途切れた。

目を覚ましたとき。 天井が見えた。

知らない部屋。 白い壁。

人工的な光。

体を動かそうとして止まる。

手首。 足。 腰。

すべて、 固定されている。

拘束具。 完全に、 逃げ場がない。

(……捕まった)

冷静に理解する。 騒ぐ必要はない。

暴れる意味もない。 状況は変わらない。

視線だけを動かす。 部屋の奥。

あの男が、 立っていた。

こちらを見ている。

表情は、 読めない。

数秒、 沈黙が続く。

やがて、 男が口を開いた。

「目が覚めたか」

淡々とした声。 やはり感情は薄い。

私は少しだけ息を吐いて、 言う。

「……処分するんでしょ」

感情は乗せない。 事実の確認だけ。

「さっさとやればいい」

男は、 答えない。

ただ、 じっとこちらを見ている。

まるで、 観察するみたいに。

(……何)

違和感。 処分対象を見る目じゃない。

もっと迷っているような。

そんな目。 沈黙。

そして男は、 ゆっくりと近づいてきた。

拘束具に手をかける。

金属音。 ひとつ、 外れる。

「……」

理解が追いつかない。でも、 顔には出さない。

もう一つ。 拘束が外れる。

「……何のつもり」

初めて、 少しだけ問いを投げる。

男は短く答えた。

「殺さない」

予想外でも、 驚かない。

理由はどうせ…

「今日からお前は、 俺が管理する」

「は?」

さすがに、 間の抜けた声が出た。

すぐに口を閉じる。

男は気にした様子もなく続ける。

「逃げたいなら逃げていい」

一歩、 距離を取る。

「逃げられるならな」

自信のある声。 事実だと分かる。

さっきの一撃で、 十分すぎるほど理解した

(……意味が分からない)

どうして、 この男は。

私を殺さなかったのか。

どうして、 こんな判断をするのか。

理解できない。 でも。

ただ一つ、 確かなことがある。

この男は異常だ。 抵抗しても無駄。

だったら、 無駄なことはしない。

男は、 わずかに目を細めた。

それが何を意味するのかは、 分からない。

ただ。 この瞬間。

私の運命は、 大きく変わった。

家を追われ、 すべてを失った私が。

敵であるはずの人間に拾われるなんて。

そんなこと、 あるはずがないのに。

こうして。 ヴェルナと正体不明の男。

奇妙すぎる共同生活が、 始まった。

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