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ブレイドのボス

18話の続き

エレベーターの中は、全面がガラス張りになっていた。

上昇とともに、外の景色が広がっていく。

街が遠ざかり、やがて森すらも小さく見える。

「……すごい」

思わず声が漏れる。

こんな光景、見たことがない。

「でしょ!」

サイカが楽しそうに笑う。

「ここ、100階層まであるんだよ」

「100……」

規模が違いすぎる。

「……ボスって、どんな人なの?」

ヴェルナは小さく尋ねる。

レイは少しだけ間を置いてから答えた。

「会ってみればわかるよ」

それ以上は語らない。

やがて。

軽い振動とともに、エレベーターが止まる。

「85階、到着です」

無機質な音声。

扉が開く。

その先に広がっていたのは

「……え?」

思考が止まる。

そこは、まるで別世界だった。

人工物のはずの高層階に、自然が広がっている。

水の流れる音。風に揺れる草木。

整えられた石と砂。

まるで日本庭園のような空間。

「なに……ここ……」

圧倒される。

レイは何も言わず、まっすぐ歩いていく。

その後を、ヴェルナとサイカが追う。

道の両脇には、見たこともない種類の花々。

鮮やかで、どこか現実離れしている。

思わず足を止めそうになる。

(綺麗…)

角を曲がり、庭園の中心へ。

そこに、一人の男がいた。

花に手を添え、静かに眺めている。

「……」

振り返る。穏やかな目。

柔らかな表情。

「おや、ようやく来たね」

落ち着いた声。異質なオーラ。

それだけで分かる。

「遅れてすみません、ボス」

レイとサイカが同時に頭を下げる。

(……え、私も?)

一瞬迷う。

(ていうか、この人…どこかで……)

「いいよ、堅苦しいのは」

男は軽く手を振る。

そして

「やぁ、久しぶりだね。ヴェルナちゃん」

「……え?」

心臓が跳ねる。

「覚えてないかな?何度か君の実家に顔を出してるんだけど」

その一言で、記憶が繋がる。

(……思い出した)

父と直接取引していた人間。

当時の自分は人間を嫌っていて、まともに顔すら見ていなかった。

「私はブレイド統括、及び代表のブレインだ」

静かに名乗る。

「君の経緯は、だいたい把握しているよ」

「……」

ヴェルナの表情が曇る。

すべて知られている。

「ところで」

ブレインはゆっくりと言葉を続ける。

「君は、なぜ落ちこぼれのヴェイルが追放されるか知っているかい?」

「……え?」

予想外の問い。

「強者主義の社会で、弱者が必要とされないから……?」

ヴェルナは答える。

「そうだね。それもある」

ブレインは頷く。

けどね

「本当の理由は」

空気が変わる。

「血の量だよ」

静かに告げる。

「ヴェイルは血を多く必要とする」

「だが、提供できる人間の血には限りがある」

一歩、歩く。

「ならどうするか」

視線が鋭くなる。

「弱者に分け与えるくらいなら、強者に集中させたほうがいい」

「……」

「そして不要なヴェイルは、人間界に送り込む」

「違法捕食という名目でね」

淡々とした口調。内容は残酷だった。

「……っ」

ヴェルナの拳が震える。

「弱いヴェイルは人間界では生きられない」

「仮に運良く強い人間を倒せれば、それはそれで利益になる」

「血を多く確保でき、要らないヴェイルも処理できて一石二鳥だ」

沈黙。重い空気。

ヴェルナは絞り出すように言う。

「……それを知ってて、取引を続けてるんですか?」

ブレインは、迷いなく答えた。

「ここからが本題でね」

その目に、一切の躊躇はない。

「君も感じただろう?」

「私たちも同様、ヴェイルを嫌っている」

「私はね」

一歩、近づく。

「ヴェイルを、この世から滅ぼしたいと思っている」

空気が凍る。

あまりにも大きすぎる言葉。

「不可能なんかじゃない」

静かに言い切る。

「そしてブレイドの大半が、それを望んでいる」

「一部を除いてね」

レイに視線を向ける。レイは、何も言わない。

「……私を、どうするんですか」

ヴェルナが問う。

ブレインは少しだけ考える素振りを見せてから答えた。

「本来なら、ヴェイルは全て処分対象」

「でもね」

「ある意味君も被害者だ」

「そこで、君の一週間観察させてもらった」

「……え?」

「ここ一週間、街での君の行動」

「人間に協力し、笑い、手を取り合っていた」

「全てのヴェイルが悪というわけではない」

その事実を、静かに肯定する。

「そして先日、戦闘科の人員が減った」

淡々と現実を述べる。

「今は、ヴェイルの手も借りたいところでね」

「だから条件を出そう」

空気が張り詰める。

「これから、ブレイドの一員として私が出す任務に出てもらう」

「もちろん一人でね」

強調して言う。

「その任務を達成できたら」

「君をヴェイルではなく、ブレイドの人間として迎えよう」

ブレインが笑いながら言う。

「それは面白いですね」

サイカがくすりと笑う。

レイは無言のまま、わずかに頷いた。

「それでも君はやるかい?」

逃げ道はない。

NOという選択肢はなかった。

ヴェルナにとって初めての試練。

この選択が、何を意味するのか。

まだ誰にも分からない。

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