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決着

15話の続き

激しい攻防が続く。

重い一撃と、鋭い斬撃が交錯する。

ヴェルナは呆然とそれを見ていた。

(……速い)

でもどちらにも加勢できない。

ただ見ていることしかできない自分に、歯がゆさを覚える。

その時。

「どっちが勝つと思う?」

「っ……!」

振り返ると、いつの間にか背後にレイが立っていた。

「ちょっと、いきなり後ろから現れないでよ」

「いい加減慣れろよ」

「慣れるわけないでしょ!」

小さくため息をつく。

「で? どうなの?」

戦闘へ視線を戻しながら尋ねる。

「現状じゃサイカが有利に見えるけど」

ヴェルナは答える。

「ガイルは削られてる一方で、サイカは無傷。ただ」

わずかに目を細める。

「徐々に対応してきてる気がする」

「ふーん……あくまでヴェイル側の意見?」

「別にそういうわけじゃないけど」

ヴェルナは眉をひそめる。

「というか、あんたは加勢しなさいよ。仲間でしょ」

「いや、加勢しなくていいかなって」

あっさりとした返答。

レイはサイカの勝利を疑っていないようだった。

「おかしいわね……」

ヴェルナが呟く。

「削ってるはずなのに、スピードが増してる……?」

その瞬間。

ガイルの一撃がサイカの服をかすめる。

布が裂ける音。

サイカはすぐに距離を取る。

「おいおい、どうした?」

ガイルが笑う。

「当てられそうになってビビったか?」

「愚問ね」

サイカは即座に踏み込む。

大振りの一撃。地面が再び割れる。

当然のように躱す。

「焦る必要はない」

「確実に削る」

そう思った、次の瞬間。ガイルが笑みをこぼす。

振り下ろされた一撃が地面を叩いた反動で、軌道を変える。

二連撃。

「っ……!」

間一髪でかがんで回避する。

その代償に振り終わりの隙。

サイカが目を見開く。

ガイルの胴体が、無防備に晒される。

(今……!)

明らかに心臓を狙える。

サイカは迷わず突きを放つ。

だが

「なっ……!?」

刃が、通らない。

弾かれる。

(こいつ……体に何か仕込んでる!)

体勢が崩れる。ほんの一瞬の隙。

それを、ガイルは逃さない。

「捉えた」

ガイルが剣を振りかぶる。

体勢は完全に崩されている。

避けきれないそう思った、その瞬間。

カラン、と小さな音が鳴った。

「……あ?」

視線が下がる。

サイカの懐から、何かが落ちていた。

次の瞬間。閃光。

視界が白に塗り潰される。

「っ!?」

一瞬ガイルは剣を振り遅れる。

振り下ろした剣の先に、サイカの姿はない。

「どこだ……!」

直後。背後。

「さよなら」

低い声。鋭い一閃。

「がっ……!」

足元に走る激痛。

アキレス腱が、正確に断ち切られる。

支えを失い、ガイルの身体が崩れ落ちた。

「ぐっ……!」

膝が地面を打つ。立てない。

逃げられない。

「こういうの、嫌いじゃないでしょ?」

サイカが軽く息を吐く。

「真正面から殴り合うより、効率いいし」

「小細工が……!」

「そっちも同じことしたでしょ」

サイカはゆっくりと距離を詰める。

「ぐっ……」

「残念ね」

静かに告げる。

「心臓に鉄板仕込んでるのは想定外だったけど」

「生憎、相打ち狙いはこの前されたばかりだったから、対策してたのよ」

血を払う。

「タイミングが悪かったわね」

「この俺が……ブレイドなんかに……」

崩れ落ちるガイル。サイカは腰を下ろす。

「あと10年、戦うのが遅かったら勝ててたかもね」

少しだけ笑う。

「まぁ、こっちで10年生き残るなんて無理だけど」

そして迷いなく、脳天を貫いた。

サイカはドスを引き抜き、血を軽く払った。

そのまま何事もなかったかのように振り返る。

「あら、レイくんいたんだ」

気づいていたのかいなかったのか、軽い口調。

「何か言いたそうな顔ね」

「別に。効率悪いなと思っただけ」

サイカの眉がぴくりと動く。

「みんな、あなたみたいに一撃で沈められるわけじゃないの」

少し苛立ったように言い返す。

レイはそれ以上何も言わなかった。

サイカは視線をヴェルナに向ける。

「ねぇ、ヴェルナちゃん」

サイカが声をかける。

「こいつがもし、その貴族連中とやらに挑んでたら勝てると思う?」

不意の問い。

ヴェルナは少しだけ黙り込む。

ガイルの言葉が頭をよぎる。

(貴族連中を……殺す)

あの強さ。あの執念。

それでも

「……相手にもならないと思う」

静かに答えた。

サイカは小さく頷く。

「そう」

あっさりとした反応。

「近くで見てきたあなたが言うなら、間違いないわね」

興味を失ったように背を向ける。

「レイくんもいるし、私は帰るわ」

「放置したままでいいの?」

ヴェルナが思わず聞く。

「後処理は回収班の仕事だから」

サイカは軽く手を振る。

「おわりおわり〜」

そのまま、のんきな足取りで去っていった。

静寂が戻る。

血の匂いだけが、やけに濃く残っていた。

ヴェルナはその場に立ち尽くす。

ガイルの言葉が、頭から離れない。

(……貴族連中が、大っ嫌いで)

(弱いやつを見下して、差別して)

(だから俺は、あいつらを殺す)

胸の奥に、何かが引っかかる。

自分と、どこか重なる部分。

否定しきれない感情。

「……」

気づけば、拳を握っていた。

「おい」

レイの声。

現実に引き戻される。

「帰るぞ」

「……え?」

瞬遅れて反応する。

「あ、うん」

歩き出す。

だがその言葉は消えない。

頭の奥に、残り続ける。

まるで、刺さったままの棘のように。

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