表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/21

簡単な任務

14話の続き

レイの家から数キロ離れた隣街。

サイカに連れられてやってきたその場所は、静まり返った住宅街の外れだった。

「今回の任務は、うまくいけばあっさり終わるかもね」

軽い口調でサイカが言う。

「内容はシンプル。連続失踪事件の調査および原因排除」

「ここ一週間で4人。共通点は全員、夜に単独行動してた人間」

「ま、十中八九ヴェイルの仕業だね」

そして、こちらを見る。

「だからヴェルナちゃんには、その住宅街の外れに行って、襲われるかどうか確認してきて」

「……私でいいの?」

思わず聞き返す。

「ヴェイルって気づかれたら、襲われないかも」

「まぁ、釣れなかったら次は私がやるから」

あっさりとした返答だった。

試すしかない。住宅街の外れ。

人の気配はほとんどない。

街灯の光もまばらで、暗がりがやけに多い。

(……ここ、完全に狩り場じゃない)

ヴェイルにとっては、あまりにも都合のいい場所。

(本当に襲われるのかな……)

そう思った、次の瞬間。

「おい」

背後から声。

「っ……!」

振り返る。

そこにいたのは、一人の男だった。

こちらをまっすぐ見据えている。

「お前、ヴェイルか?」

一瞬の間。隠す意味はない。

「……そうよ」

男は少しだけ口角を上げた。

「へぇ、こっちで同族に会えるなんてな。珍しいこともあるもんだ」

「そういうあなたは?」

視線を逸らさずに返す。

「ここら辺で人間をさらってるヴェイル?」

「ああ、そうだよ」

あっさりと肯定する。

「俺がそのヴェイルだ」

一歩、こちらに近づいた。

「俺の名はガイル、あんたは?」

「……ヴェルナよ」

短い名乗り。

するとガイルは、興味深そうにこちらを見たあと

「なぁ、ヴェルナ」

不意に言った。

「俺と手を組まないか?」

「……は?」

あまりにも唐突な提案だった。

「どういうこと?」

「お前もここにいるってことは、追放されたってことだろ?」

「!」

言葉が詰まる。

ガイルは続ける。

「俺もな、追放された身でよ」

「上の貴族連中が大っ嫌いだ」

声に、わずかな熱が混じる。

「弱いやつを見下して、差別して……俺たちみたいなのを切り捨てる」

吐き捨てるように言う。

「だからよぉ、俺はあいつらを殺す。そのために人間の領域に来た」

まっすぐにこちらを見る。

「お前も、そうだろ?」

(……あながち、間違ってはいない)

否定できない。自分の状況と重なる部分がある。

「……でも」

考えかけた、その瞬間。

「あ?」

ガイルがわずかに視線を動かした。

次の瞬間、金属音。

火花。

サイカが、ガイルの背後からすでに斬りかかっていた。

ガイルは反応したものの、完全には避けきれない。

背中が浅く切り裂かれる。

「ははっ」

ガイルが笑う。

「ようやく来たか、ブレイドさんよぉ」

振り返りながら、楽しそうに言う。

「待った甲斐があったぜ」

サイカは軽く息を吐く。

「なるほどね。まさか、おびき寄せるためにわざとさらってたの?」

「当たり前だろ」

ガイルは肩を鳴らす。

「貴族連中を倒すにしたってよ、まずはブレイドの人間くらい倒せないと話にならねぇ」

ニヤリと笑う。

「力試しってやつだ」

そして、顎でヴェルナを示した。

「おいヴェルナ、そこで見てろ」

その直後。

ガイルの身体から流れた血が、空中で形を変える。

赤黒い液体が固まり巨大な大剣へと変わった。

「へぇ……武器生成か」

サイカがわずかに目を細める。

「ヴェイルの中でも、相当強い部類みたいだね」

それでも、足は止まらない。

「無知な人間よ」

ガイルが剣を構える。

「すまねぇが、俺の糧になってくれ」

空気が張り詰める。

次の瞬間ガイルは迷いなく踏み込んできた。

振り下ろされる大剣。轟音。

地面が割れるほどの一撃。

だが

「……馬鹿ね」

サイカは余裕の表情でそれを躱す。

紙一重で横へ流し、そのまま懐へ潜り込む。

鋭い一閃。確かに手応えはある。

しかし刃は深く入らない。

分厚い肉が、それ以上の侵入を拒んでいた。

「っ……硬っ」

サイカが小さく舌打ちする。

ガイルは気にした様子もなく、口元を歪めた。

「今のは挨拶代わりだ」

まるで楽しんでいるかのように。

サイカは距離を取りながら、軽く息を吐く。

「ねぇ、もしかしてさ」

視線を外さずに問いかける。

「前にブレイドの人間を殺したヴェイルってのも、あなた?」

ガイルは一瞬だけ眉を動かし

「あ?」

興味なさそうに鼻で笑った。

「知らねぇな」

あっさりとした否定。

「ブレイドの人間と張り合うのは、今日が初めてだ」

「……そう」

サイカは少し残念そうにしていた。

(じゃあコイツは別口か)

だが、すぐに表情を戻す。

ガイルは大剣を肩に担ぎながら、ニヤリと笑う。

「でもよ」

ゆっくりと、踏み出す。

「これからそうなるかもしれねぇな」

その言葉に、空気がわずかに張り詰める。

「……もしかして、勝てるとでも思ってるの?」

挑発。

だが、ガイルは一切揺れない。

「さぁな」

軽く首を鳴らす。

「相性は良くねぇだろうな」

事実、傍から見てもそれは明らかだった。

速度と技のサイカ。

耐久と一撃のガイル。

正面から噛み合えば、長引くのは確実。

それでも、ガイルは笑い大剣を構え直す。

「あんたが俺が倒すのが先か」

一歩。地面が軋む。

「俺が一撃入れるのが先か」

圧が増す。

「……楽しもうぜ」

その瞬間。

再び、ガイルが踏み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ