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レイについて

13話の続き

サイカはとにかくよく喋る女だった。

聞いてもいないことまで、ぺらぺらと話し続ける。

でもそのおかげでヴェルナは、レイについて多くを知ることになった。

「名前はレイ。まあそのまんま」

軽い口調で始まる。

「年齢は16。」

「……同い年?」

思わず聞き返す。

「あなたも16歳なんだ!」

サイカは頷く。

「で、所属はブレイドの特務執行課」

「いわゆる戦闘科だね」

「しかも最年少」

サイカ自身も戦闘。

それでも25歳。

それを考えればどれだけ異質か、分かる。

「でね」

サイカが少し声を落とす。

「レイくんってさ、作られた子なんだよね」

「……作られた?」

「そう!」

軽く頷く。

「組織の実験」

「親はどっちも戦闘科の人間」

「優秀な遺伝子を掛け合わせた、いわばサラブレッドってやつ」

「……」

ヴェルナは黙って聞く。

「もちろんね、レイくんだけじゃないよ」

「同じように作られた子供は何人もいる」

「でも全部失敗」

淡々とした口調。

「訓練についてこれなくて死んだ子」

「反抗して逃げた子」

「壊れちゃった子」

「……色々」

「……」

空気が、少し重くなる。

「でもさ」

サイカは笑う。

「レイくんだけは違ったみたい」

「才能が飛び抜けてて、しかも反抗もしない」

「完璧な成功例」

一瞬、間を置く。

「……だからこそ、不気味がられたんだけどね」

「……どういうこと?」

ヴェルナが問う。

「だってさ」

サイカは肩をすくめる。

「普通、どこかで壊れるでしょ?」

「怒るとか、泣くとか、逃げるとか」

「でもレイくんは、それがない」

「だからそのせいで孤立しちゃったんだよね」

「もし途中で気が変わって反抗したり、裏切ったら手に負えないし」

「今じゃ組織的には手に余る存在」

「でもちゃんと任務はこなすから」

「だから何も言えない」

「そんな感じ」

話はそこで一区切りついた。

「……ねぇ」

今度はサイカが覗き込んでくる。

「あなたのことも聞かせてよ」

「……」

少し迷う。

だが。

ヴェルナは口を開いた。

家を追い出されたこと。

居場所を失ったこと。

そしてレイに捕まったこと。

全てを、簡単に話した。

「……そっか」

サイカは静かに聞いていた。

そして。

「……うぅ……」

「……え?」

泣いていた。

「ヴェイルにも色々あるんだねぇ……!」

ぼろぼろと涙を流す。

「……何それ」

思わず引く。

温度差がすごい。

けれど、その空気感に少しだけ救われる。

そして。

ヴェルナは気になっていたことを聞く。

「……ねぇ」

「ん?」

「ブレイド殺しのヴェイルって、何?」

その言葉に。

サイカの表情が、少し変わった。

「……あー、それね」

軽く息を吐く。

そして

「私がブレイドに入った理由、話したっけ?」

「……聞いてない」

「そっか」

サイカは、ゆっくりと語り始める。

「父親を、ヴェイルに殺されたから」

静かな声だった。

「元々ね、私の父もブレイドの人間だったの」

「母親は違うけどね」

「戦闘科」

「私と同じ」

「でも18年前」

「任務から帰ってこなかった」

「……」

「見つかった時には、もう死んでた」

少しだけ、視線が落ちる。

「腹部を両断されてた」

「多分、一撃」

「……あの人、戦闘科でも強かったのにさ」

かすかに笑う。

「それが、ショックでさ」

「相手が誰かも分からないまま」

「私は父の背中を追って、ブレイドに入った」

「……」

「でね」

サイカは顔を上げる。

「そのヴェイルを探してる」

「ずっと」

「……」

「そしたらさ」

少し声が強くなる。

「最近また、戦闘科の人間が殺されたの」

「それも一撃」

「急所を正確に切られてた」

「今、ブレイドはその話題でもちきり」

「戦闘科がやられるなんて、大事件だからね」

「……」

「でも私からしたらさ」

サイカは笑う。

「チャンスだった」

「もしかしたら」

「父を殺したヴェイルに、会えるかもしれないって」

沈黙。

その話を聞いて。

ヴェルナは、少しだけ躊躇いながら口を開く。

「私のこと、憎くないの?」

「……?」

サイカが首を傾げる。

「なんで?」

「だって……」

言葉を選ぶ。

「私だって、ヴェイルよ」

「あなたの父親を殺したのと、同じ」

一瞬の静寂。

そして。

「……あー」

サイカは納得したように頷く。

「別に、ヴェルナちゃんが殺したわけじゃないでしょ?」

「……そうだけど」

「種族が同じだからってさ」

「全員同じってわけじゃないじゃん」

あっけらかんと言う。

「……」

その言葉に。

ヴェルナは、何も返せなかった。

その時。

ピッ

サイカの無線が鳴る。

「……あ、ごめん」

耳に当てる。

「仕事入ったわ」

短いやり取りのあと。

ぱっと顔を上げる。

「そうだ!」

にこっと笑う。

「よかったらさ、ヴェルナちゃんも来る?」

「……え?」

状況が理解できない。

「ちょうどいい機会じゃん?」

「現場、見てみなよ」

「いやちょっと」

拒否する間もなく。

「はい、決定〜」

手を掴まれる。

「ちょ、待っ」

そのまま、強引に引っ張られる。

「いってきまーす、ってね!」

「勝手すぎるでしょ……!」

夜の街へ。強制連行。

ヴェルナは引きずられるようにして新たな現場へ向かうことになった。

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