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犯人の特定

10話の続き

それから

二人は街中を回り、聞き込みを続けた。

市場、路地、商店、住宅街。

目撃情報は少ない。

共通点も、ほとんどない。

「見てないですね……」

「気づいたらいなくなってたんだ」

「変なやつ?いや、特には……」

どこへ行っても同じような返答ばかりだった。

「……手応え、ないわね」

ヴェルナが小さく呟く。

「こんなものだ」

レイは淡々としている。

だが次に訪れた家で、空気が変わった。

扉を開けたのは、一人の女性だった。

やつれた顔。目の下には深い隈。

「……ブレイドの方、ですか……?」

かすれた声。

「話を聞かせてほしい」

レイが短く告げる。

女性は、ゆっくりと頷いた。

部屋の中は静かだった。

どこか空虚な空気。

「うちの子が……いなくなったんです」

震える声。

「昨日の夕方……少し目を離した隙に……」

言葉が詰まる。

「……どこを探しても……」

そして。

「……うちの息子は……」

顔が歪む。

「大丈夫なんでしょうか……?」

そのまま、崩れるように座り込む。

「……っ」

嗚咽が漏れる。

「お願いです……助けてください……」

部屋に響く、泣き声。

沈黙。

レイが口を開く。

「……生きているかの保証はできません」

はっきりとした声だった。

ヴェルナが一瞬、目を見開く。

だが、レイは続ける。

「ただし」

「ヴェイル性質上、すぐに殺される可能性は低い」

事実だけを伝える。

希望でも、絶望でもない。

「……っ、そう……ですか……」

女性は涙を流しながら頷く。

それが救いになったのかどうかは、分からない。

二人はその場を後にした。

外に出る。夕方の空気。

「……」

ヴェルナは、しばらく何も言えなかった。

あの表情が、頭から離れない。

レイが横目で見る。

「……どうした」

「別に」

短く返す。

「……」

少し間を置いて。

レイがぽつりと呟く。

「お前もしようとしていたことだけどな」

軽い調子だった。

冗談のつもり。

だが

「……」

ヴェルナは何も言わなかった。

ただ、黙る。

その沈黙に、レイもそれ以上は何も言わなかった。

やがて日が傾き始める。

「そろそろ張る」

レイが言う。被害が起きた場所。

そして、狙われそうな条件の場所を絞る。

「手分けだ」

そういいレイは無線機を渡す。

「了解」

それぞれの位置につく。

数時間後。

「……来ないわね」

小さく呟く。気配はない。

変化もない。ただ時間だけが過ぎていく。

(……ブレイドの仕事って、こんなにきついのね)

改めて実感する。

その時

「……?」

違和感。

背筋に、何かが引っかかる。

「……もしかして」

振り返る。視線の先。

一人の男。不自然に周囲を気にしている。

「……あいつ」

無線越しにレイへ伝える。

「多分、ビンゴ」

「……便利だな」

レイの声が返る。

二人は合流し、距離を保ちながら後を追う。

男は子供連れの親子の近くを歩いていた。

そして。

親が目を離した、その一瞬。

「……っ!?」

消えた。子供の姿が。

あまりにも早い。親は気づいていない。

「確定ね」

ヴェルナが捕まえようと走り出そうとする。

だが。

動こうとした瞬間

「待て」

レイが止める。

「場所を特定する」

「……なるほどね」

そのまま尾行を続ける。

やがて。辿り着いたのは寂れた工場跡地。

「……ここね」

男は中へ入っていく。

二人も、気配を殺して侵入する。

そして。

目にした光景に言葉を失う。

数人の子供。

縛られ、吊るされている。

目隠し。口も塞がれている。

身体には、無数の傷。

まるで拷問の跡。

「……酷い」

ヴェルナが呟く。

その間にも。

連れ去られたばかりの子供が、同じように縛られていく。

「君も、僕のコレクションだ」

男は楽しそうに言う。

淡々と、作業のように。

子供は叫ぼうとする。

だが、声は出ない。

「……っ」

ヴェルナが一歩踏み出そうとする。

だが。

レイの手が、それを止める。

「……俺がやる」

低い声。

そのまま、隠れるのをやめ姿を現す。

「……あ?」

男が振り返る。

「もしかして……ブレイド?」

「そうだ」

レイは一歩踏み出す。

「気づくのが早いねぇ」

男は笑う。

「でもいいの?」

周囲を見せつける。

「人質、たくさんいますけど?」

爪を隆起させ正体を現す。

「ねぇ、一つ聞いていいか?」

レイが言う。

「いいよ」

楽しげな声。

「なんでこんなことをしている」

その問いに、男は笑った。

「なんでって楽しいからでしょ?」

うっとりとした表情。

「目隠しされて、何も分からず」

「泣き叫ぼうとしても、それすら許されない」

「恐怖」

「大人と違って、ガキは感情が豊かだからね」

「楽しめるんだよ」

「一石二鳥ってやつ」

「……そうか」

レイの声は、変わらない。

男が続ける。

「ねぇ、君もコレクションになる?」

「はははっ!」

高笑い。

「……まずい」

ヴェルナが小さく呟く。

「人質がいる。さすがにあいつでも…」

だが。その心配は一瞬で消えた。

乾いた音。銃声。

「……え?」

気づいた時には。

レイの手には銃があった。

いつ抜いたのか、見えなかった。

弾丸は正確に男の関節を撃ち抜いていた。

腕。足。

動きを完全に封じる。

「がぁぁぁぁぁ!!」

男が崩れ落ちる。

痛みに叫ぶ。

レイは、ゆっくりと近づく。

「……ねぇ」

静かな声。

「これが、本当に楽しいのか」

男は震える。

さっきまでの余裕はない。

「ひ……っ」

言葉にならない。

「……そうか」

レイは淡々と呟く。

「最後に、痛みを知れてよかったな」

懐から刀を抜く。

一閃。首が、落ちた。

静寂。

ヴェルナは、その光景を見ていた。

そして。

レイの表情を見る。

冷たい。感情がないわけではない。

だが、それは。優しさではなかった。

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