第27話 美少女と獣人国と心霊写真【危険な挿絵あり】
第27話
◆ 獣人国首都モンボ到着
「まもなく、終点――獣人国首都モンボです。
お降りの際は足元にご注意ください」
異世界新幹線が静かに停止する。
扉が開いた瞬間、獣人特有の体温と匂い、ざわめきが一気に流れ込んできた。
天井が高く、梁は巨大な獣骨を模したデザイン
床は石畳だが、光る魔導ラインが走っている
案内板には
獣人語、共通語、英語、日本語などの表記。
駅構内には屋台もあり、 焼いた肉の匂い、香草、スパイスが混ざる。
『一言に獣人と言ってもケモノレベルでだいぶ違うね』
『そう言えばどうして言葉がわかるの?』
『ドローン先輩の能力じゃない?知らんけど』
『あの犬の獣人めっちゃ可愛い』
獣人国首都奪還の英雄でもある一行を、
助けた元奴隷少女姉妹と獣王自らが出迎える。
「よくぞ来てくれた。おかげで今は平和を謳歌している」
「お嬢様、メイドさん。あの時はありがとうございました」
駅構内には、獣人国が誇る芸術の“巨匠”の作品がいくつも展示されていた。
祖国解放と異世界新幹線開通。
それらを力強く、ダイナミックに表現した数々の作品。
紫や青に塗装された巨大な獣の上半身が、
異世界新幹線を彷彿とさせる。
目はやけにリアルで、どこ角度からでもこちらを見ているようにも感じられた。
「……これは何かの宗教的なシンボルですか?」
「いや、我が国が誇るアーティストの作品だ。立派だろう?」
待ち合わせ場所としても有名で、
多くの者が記念写真を撮っている。
駅構内のどこを歩いても、
視界の端に必ず一体は入ってくる。
天井を見上げれば巨大な獣の顔、
足元を見ればその影、
振り返れば、さっきまで無かったはずの角がそこにある。
視聴者コメントが流れる。
『意味が分からないが、目が話せない』
『テーマは異世界新幹線と平和?』
『ここら辺の感覚はやっぱり違うよね』
『美術館に飾りたい』
威圧的で、異様で、しかし確かに“何か”を感じさせる。
そんなオブジェたちが、今日も駅を見下ろしていた。
そこで一行は記念写真の撮影。
早速撮った写真を確認すると――
右上の隅に、やたら綺麗になった貞美が心霊写真みたいに写り込んでいる。
「……貞美さんって、心霊写真の仕事もやってるんですね」
「あの子も一緒に来たかったのかしら」
写真の中の貞美がこくりと頷いた。
『心霊写真って懐かしいね』
『もう今は廃れた文化だよね』
『貞美さん頑張ってるじゃん』
『このオブジェよく見ると癖になるね』
―――
一行は駅の外に出る。
街はほぼ復興済み。
だが、あちこちに地球文化の影響が見える。
野外カラオケで獣人が地球のアニソンを歌い、
道には自動販売機が設置されている。
コンビニのような外観の店。
プリクラっぽい魔導写真機の置いてあるゲームセンター。
そして獣人メイドカフェ。
獣人メイド、ドワーフメイド、エルフメイドが道行く人に声をかけていた。
『猫の獣人めっちゃかわいいな』
『おお、エルフメイドだ』
『今すぐ異世界新幹線のチケットを予約だ』
『メイド文化は世界を超えたかー』
―――
簡素なステージの野外カラオケ。
屋根も壁もない、ただの台。その上にカラオケの機械だけがポツンとある。
獣人たちが自然と集まってきていた。
誰かが「静かにしろ、歌が始まるぞ」と小さく声を上げた。
視聴者達のたっての願いで、
銀髪の美少女――お嬢様が、マイクの前に立つ。
イオニモールのカラオケで歌った以来の公でのお嬢様の歌。
銀髪の少女は静かに歌い出した。
歌詞は分からない。
優しく、ゆっくりとした旋律。
しかし数小節も進まないうちに、
空気が、変わった。
獣人兵士の一人が、思わず膝をつく。
彼はかつて戦で右腕を失っていた。
「……?」
断面だったはずの肩が、淡く光る。
筋繊維が、血管が、骨が――
歌に合わせるように、形を取り戻していく。
誰かが息を呑む音がした。
皮膚が塞がり、指が開き、
兵士は、震える新しい腕を見つめたまま、言葉を失う。
「……腕、が」
すぐ近くで、
幼い獣人の母親が、小さく声を上げた。
「この子が――!」
ずっと咳き込み、歩くことすらままならなかった小さな獣人。
その胸の上下が、ゆっくりと整い、
赤かった顔色が、みるみるうちに落ち着いていく。
子どもはきょとんとした顔で、
初めて見る世界のように周囲を見回し、
そして――笑った。
その笑顔を見た瞬間、
広場にいた獣人たちは、全員、悟った。
奇跡だ。
だが少女は、ただ、歌い続ける。
いつも通りの、優しい歌。
癒しの光は、波紋のように広がり、
古傷、病、疲労、呪い――
それらが次々と癒されていく。
誰かが、涙を流しながら呟いた。
獣王は、深く頭を垂れた。
兵士も、民も、子どもも、
歌が終わるまで、誰一人として声を出さなかった。
最後の一音が消えた瞬間、
広場は――祈りのような静寂に包まれていた。
―――
獣人国最高級ホテル。
女神こずえが、お姫様との同室を狙うが――
メイドの容赦ないチョップで即ダウン。
部屋割は、
お嬢様とメイド。
レンと、何故か獣王と配信ドローン。
こずえと元奴隷の少女達。
夕食は獣人国の郷土料理で舌鼓を打つ。
食後は
レンの部屋に集まり楽しいおしゃべり。
明日は
週末闘技場大会。
―――以下危険な挿絵があります。
写真提供
Sランクダンジョンハンター望月レン氏。
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