第十一章 現状確認
「なるほど、知識を持っている能力…初めて聞きいた」
なんとか場が落ち着き、話し合いのためデルフィが口を開いた。
「正直、この行いは許すわけにはいかない案件だ、俺の私情を抜いても…マリーはおそらくかなり重い処罰になるだろう」
「それは、そうでしょうね」
深刻な声で頷くイリスに、リラは心配そうに声をかける。
「イリス様にとっては、実の妹ですのに…」
「かまいません、やってはいけないことを彼女はしてしまったので」
そういうイリスの表情には迷いはなかった。デルフィはそれならと話を続ける。
「リリー女王に対して名誉毀損、リラ王女への身分偽称。
ことの次第によっては大逆罪になる」
「身分詐称まではわかるが、大逆罪とは…やり過ぎじゃないか?」
チューリオの言葉に顔をしかめ、デルフィは少し悩む。
「どうした? デルフィ王子」
その声に、意を決したようにチューリオ王子をまっすぐ見て、先ほど知った策略を口にした。
「マリーはリリーの処刑を盾に、復讐と称したルーシュ国の侵略を企んでいる」
「何!? 我が国をかっ?」
「そうだ、先ほどアグロが来てな…どうやらやつも、マリーの仲間らしい」
その発言にイリス以外は驚いている。デルフィはアグロとの会話を語った。
「話とは、なんだ」
職務室に通し、アグロに話を促した。
「はい…実はマリー様から相談をされまして」
「ほう」
「復讐を、したい、と」
「…復讐? というと」
「女王を処刑し、自身を追放した、ルーシュ国を」
「……マリーの母国を?」
「はい、今国王は病に伏せ、どうやら第一王子のチューリオ様が、呪いをかけてたと聞いております」
「そんな状況に…」
「女王だけでなく国王まで、耐えられないと、相談されまして」
「俺ではなくアグロにか?」
「はい、国政にもかかわることですから、デルフィ様に直接は言いづらかったのかと」
「なるほど、そうか…考えよう」
「よろしくお願いします」
会話が終わり、アグロが部屋を出る。デルフィはアグロがニヤリと笑った瞬間を見逃さなかった。
「マリー、そこまでして…」
怒気を含んだ声でイリスが呟く。
「それにしてもだいぶ情報が遅れてますね、俺だったら瞬間移動があるので、あっという間ですが」
「アグロ自身が派遣した間者からの情報なんだろう、普通はこんなものでしょう」
マリーたちの情報の遅さは、確実に武器になるときイリスは確信した。
「実際ルーシュ国がその状況で攻められたら、軍事差はあっという間にひっくり返るだろうな」
このタイミングを選んでいるところからして、本気で略奪を狙っているのだろう。
イリスは怒りが収まらない、当然だ。子供のように大切な小説を、勝手に改変されているのだから。
「多分自分がリラになるために、すべての証拠を削除しようとしているのでしょう」
「なるほどな……自分の欲望のために、我が国を一つ滅ぼそうとするなんて……」
「加えて有能な能力者の確保。
モクセイとグラオス、そしてスズナがいれば、国として盤石になりますから」
見えてきたマリーの野望、推しと結ばれるための行動に執念を感じる。
それでも、決して許されることではない。
「こんなことに巻き込んで済まない」
突然全員に頭を下げるデルフィ、そこにはマリーを信じて、リラを断罪していた姿はどこにもいない。
「俺が最初からリラを間違えなければ…」
その震える声に、イリスは優しく微笑む。
「まだ間に合いますよ、ね、リラ王女」
努めて明るくリラへウィンクすれば、リラは素直にデルフィに向けて口を開く。
「はい、一緒にマリーの企みを阻止しましょう」
その言葉に、デルフィの瞳に決意が宿る。




