64 王の考え
岩の塊になっているが、部屋の中心に他とは雰囲気の違う大きな球体が備え付けられている。
ここがキエルの言っていたコアってやつだったのか?
王は壁に身体を預け、立っているのが精一杯のようだ。
王の心臓部は服がはだけ無理やりはめ込んだように虹色の魔導石が押し込まれている。
あれは魔導石じゃなくて、その上の魔導晶だったかな。
「禁じられた魔法だけあって想像以上の被害だったよ……産みの苦しみとでも思わせてもらおう」
「なぜ生きてられるんだ? ソウルガンドをまともに食らったはずなのに」
王は心臓に埋め込んだ魔導晶を指差した。
「死んだよ……お陰で人間じゃなくなってしまった……」
心臓代わりに魔導晶を使ってるのか、なんでもできるんだなあの石って……
「身体が無事残っていたのは魔導獣が守ったからか」
「守った? フフフフ……違うな、俺が魔導獣から魔力を全て受け取ったんだ、それで自ら魔法を防御した」
「……ってことは、魔導獣はソウルガンドを食らう前か直後には今の岩の塊になっていたってことか? いや、でも魔導獣の叫び声が聞こえたぞ」
「ああ、あれか……そういえば魔導獣から魔力を受け取るときに叫んでいたな」
魔導獣はソウルガンドを食らったことじゃなくて、王から魔力を奪われていることに苦しんでたんだ……
「なんでそんなに簡単に味方を切り捨てられるんだ……」
「味方? 魔導獣のことか?」
「それだけじゃない、城の人達や、拠点に来た時のモンスターだってそう、みんな助けようと思えば助けられたんじゃないのか?」
王が腕を組みあごに手を当て考え出した。
「何故助ける必要がある?」
ごく当たり前のような返事の仕方だった。
こいつにとっては誰かが命を張って自分のことを守ってくれたり、魔力を奪い取って生き延びたりしたとしても、相手への感謝や償いなんてものがないんだ……
どこか、この王に対して冷たいものを感じていたけど、わかった、この人には心がない……
すべて自分のためだけのために身勝手に行動している。
「大きな国の王が、なんでそんな事が言えるんだ……」
「人なんていらないだろ……力さえあれば他の者なんて邪魔なだけだ」
「そんなことない、みんなで協力するから乗り越えていけることだってある!」
「それは弱いからだ、一人でやれる力があるならそんなもの必要ない」
「お前だって、助けてもらってたじゃないか、その人達に何も感じないのか?」
王が不機嫌そうな表情になり、溜息をついた。
「そういうのが嫌なんだ、自分で勝手にしておいて感謝や好意を押し付けてくる……俺が命令して守らせたんだ、守って当たり前だろ、それをなぜ気にしなくてはいけない?」
「王を守るために死んだんだぞ、その人達に何も思わないのか?」
「命令なんだ当然のことをした、それ以外に何を思う必要がある」
石だ……王の心は心臓の代わりに付いている魔導晶と同じように冷たい。
「俺と話したいって言うけど、そんな考えの人が俺に何を聞きたいんだ……?」
「ただの興味だよ……俺と同じ特殊なジョブを持ちながら、人に振り回されて生きている、哀れな人間がどんな考えを持っているのか聞いてみたかっただけだ」
「そうだ、仲間は、俺の仲間はどうなってるんだ?」
「さあな、魔導獣の魔力を吸収したついでに召喚したモンスターに適当に相手させているが、そろそろ死体でもつれてくるんじゃないか」
「ヤヨイとヤマトがいなくなったのもそいつのせいか」
「俺の魔力が上がったからな、生贄なしにそこそこのモンスターが召喚できるようになった、もうこの世界を破壊するのも容易いくらいにな……」
「俺は仲間達を信じてる、そのモンスターを倒してみんなここまで必ずやってくる」
「それならそれでいい……それほど強いやつなら生贄にしてより強いモンスターを召喚できるからな」
もしこいつを倒すならこいつに触れられて生贄にされる前に倒さないといけない……
一撃で倒さないといけないのか。
魔導獣によって魔力も手に入れてる、やっかいな相手だ。
「君も特殊だが中々の力を持っている、契約して俺の駒にするのも悪くないな」
王が普通に動けるようになってきてる、埋め込んだ魔導晶が身体に馴染んできてるのか。
手に魔法陣を浮き上がらせた、魔道士の魔法陣とは色や形が違う、これがサモナーの使う魔法陣……
「これで俺が君を駒にしたら、君のテイムきた仲間達はどうなるんだろうな……」
「や、やめろ……」
打つ手がない……
ここを逃げようにも出口が塞がれてる、ヤヨイみたいに切断できれば楽だけどそんなことできるわけないし……
「いい表情だ、恐怖や絶望している顔っていうのは人の心が見えて嫌いじゃない」
このままじゃこいつの思うままだ……
どうする……
いや、方法を考えるんじゃない、俺はテイマーだ、テイムした仲間を信じるんだ!
「おや、どうした俺と契約する気になったか?」
逃げるのをやめて、王と向き合った。
「お前と違って俺は1人じゃない、仲間が絶対に来てくれる」
「そうだといいな……」
王が俺に手を伸ばしてきた。
《危険が迫ってます、命令をしてください》
→ 《命令する》
《全力で攻める》
《セーブして戦う》
《守りながら戦う》
誰か近くにいる?
→ 《全力で攻める》
これだ、とにかく思い切りやってくれ!
「ライトニング! お願い!!」
この声はフランかセリル!
その直後、壁を突き抜けて光線が部屋中に突き抜けてきた。
「熱っ!」
俺もライトニングに巻き込まれた。
「あっいた、ロジカおにぃちゃんだ!」




