62 ソウルガンドの存在意義
ヅィリィが冷たくなり、まるで寝ているように倒れている。
ナイナが回復の果実を絞ってかけるが、反応はなかった。
「ヒーリング、お願い!」
何度もフランが回復させようとするが目覚める様子はない。
「ヅィリィは全て出し切ったんだ……もう蘇生はできない」
「わからないよ! もしかしたら起きてくれれかもしれないでしょ!」
キエルの言葉を聞かずにフランはヅィリィにヒーリングをかけ続けた。
「ヅィリィさん……」
やりきれない顔でセリルがヅィリィを見つめる。
「そんな目で見てやるな、ヅィリィはギルドの存在意義を果たしたんだ」
ソウルガンドの存在意義……?
「この魔法は強力な浄化魔法だ、生命力を燃料にして、空間を支配し仲間を助け、対象のみを浄化させる」
生命力を燃やす……
だからこんなに痩せてしまったのか。
「じゃあ本当ならソウルガンドを使うとみんなヅィリィさんみたいになっちゃうってこと?」
「私達も死んじゃったかもしれないんだ……」
フラン達にその事を教えずに覚えさせたのかよ……
「そうだ、この魔法を使ってものは死ぬ……ただな、二人で同時に詠唱する事で消費を半減できるため命の危険は回避されるはずなんだ」
「私達の場合は2人で魔法を出したのと、ちゃんとしたソウルガンドが出せなかったからナイナおねぇちゃんの果実で回復できたんだ……」
「こんな危険な魔法を小さい子達に教えるなんて何考えてるんですか!?」
命を軽視するような魔法を教えたことにナイナが怒り出した。
そんなナイナを見てもキエルは全く動じずに返事する。
「俺はギルドメンバー全員にこの魔法を教えてもいいと思っている、それがうちの存在意義だからだ」
さっきから存在意義って言葉を強調しているな。
この魔法を使うことが存在意義ってどうな集まりなんだよ……
「ヅィリィは未熟な者達に強力な魔法を教えるのは反対していた」
「この男なら自分の立場を脅かすような奴を増やしたくないから教えないとかしそうだけどな」
ヤヨイ……この状況でそんなこと言わないでくれ……
「さすがにヅィリィもそんなつまらないことをするやつじゃない、それなら力のある者にこそ教えないようにするだろ?」
「ん……確かにそうか……」
「いつもイヤミばかり言っているから勘違いされるがヅィリィは誰よりもソウルガンドを考えていた」
「それはわかる気がする……」
「フランとセリル2人でソウルガンドを使わせようと提案したのもヅィリィなんだぞ」
「そうなの?」
「だってヅィリィさん、私達のことドラゴンのところで見捨てようとしてたよ!」
「うーん……難しいな……確かに全てを擁護できるような男ではないんだけどな、そこから力を付けていったフラン達を失いたくないって思ってたのは間違い無いんだ」
やっぱり変な奴だ……
あくまでギルドのため、ヅィリィもキエルの言う存在意義ってやつのために命をかけた……
「この世界は王に壊滅させられるところだった、こいつの思想はずっと危険だった、ソウルガンドはそのために結成したギルドだ」
「王を倒すため?」
ヤマトが言っていた世界が大変なことになるっていうのもそのことか。
「この危険な男を命をかけて浄化するそのために魔道士を集め作ったギルドがソウルガンドだ」
「そして、その王を倒すために命をかけたヅィリィは存在意義を果たした……」
キエルは岩の塊となった魔導獣を眺める。
「まだ、王の姿を確認しなければ安心できない」
魔導獣は倒したが、王は見ていない……
まだ生きてる可能性がある……
「ん……?」
魔導獣を見ているヤヨイが何か発見したようだ。
「ヤマト、来てたのか」
キエルの目線を見てみると、魔導獣を確認しているヤマトがいた。
ヤマトもここに来てたんだ。
「ヅィリィ……すぐに迎えに行くからな」
キエルはヅィリィの周りに魔法陣を浮かび上がらせると、ヅィリィは消えた。
テレポートか何かの魔法で移動させたのだろう。
俺達はヤマトのいる魔導獣のそばまで移動した。
「キエル? あの魔法はキエルじゃなかったのか?」
俺達が近くに来た事を確認したヤマトはキエルを見て驚いた、
「俺じゃない、ヅィリィだ」
「ヅィリィが? …………難しい男だったが、ある意味筋の通ったやつだったな」
意外と言う感じでもなさそうだった。
ヤマトの中でもヅィリィはそこまで薄情な男だという印象でもなかったようだ。
「なぁヤマト、なんでここにいるんだ?」
「ヤヨイ様……俺はむしろあなたにこんな危ない所にいて欲しくなかったんですが……」
「それで、ここにいて何を探してたんだヤマト?」
「ああ、みんなが城へワープした時に王がこの化物の中に入って行ったのを見たんだ、王は恐らくこの中にいる」
魔導獣は動くダンジョンだって王が言っていた。
それなら中に入ることができてもおかしくはないか……
「じゃあどこかに入口があるってことか、王はこの中にいる」
「待って、でもあんなすごい魔法を食らったんだから中にいたとしたらそれこそ死んでるんじゃない?」
ノリスが魔導獣全体を眺める、
近くでみると改めてでかい、横になっているせいで横幅もできてさらにでかさを感じる。
「万が一がある、生きていて逃すようなことがあってはならない、確実に奴の姿を見るまでは気が抜けないどこかに入口があるはずだ……」
こんな巨大な塊の中から入れる所を探す?
口とかから入るってことじゃないだろうし……
「別に、入口にこだわる必要はないんだろ?」
ヤヨイが魔導獣に近寄って、斬りつけた。
「えっ!? ちょっと、ヤヨイ?」
「ヤヨイ様! そんな無茶な!」
岩状の魔導獣の一部がヤヨイの斬撃で崩れ落ちる。
空洞だ、崩れた魔導獣の身体の中にスペースがある。
「まさか……」
「ここから中に入れるの?」
相変わらずのヤヨイの無茶のお陰で、入口が作られた……




