61 ヅィリィの決意
魔導獣の攻撃をソウルガンドのキエルとヅィリィが止めた。
城を飲み込むほどの光線を防ぎきるほどのバリアを張れる魔力を持ってるのか。
大規模ギルドのトップ達だけあって、こいつらも規格外の実力だったみたいだ。
敵か味方か分からない奴らだけど、今は心強い。
キエルがフランとセリルに話しかけた。
「あの魔法を使えたんだな」
さっきの王以外のモンスターを全員倒した浄化魔法、ギルド名と同じ名前だったやつのことか……
「はい、でも……防がれちゃって王には届かなかったせいで、こんなことになっちゃいました……」
「完璧なソウルガンドが唱えられれば、防ぐなんてできないはずだ、未熟な魔法を使うからこんな事態になる」
ヅィリィの辛辣な言葉にフランとセリルは縮こまった。
この男は相変わらず憎まれ口ばかりだ。
「そういうなヅィリィ、あそこで王の周囲のモンスター達を倒せただけでも十分だ、奴等もかなりの強さだったぞ」
まるで見ていたかのように話しているな、それなら助けてくれればよかったのに……
「目的を達成しない魔法なんてどれだけ威力があったとしても不十分だ」
噛み合わない2人だな、この2人がソウルガンドのトップなんだろうけど、いつもこんなまとまらなくて大丈夫なのか……?
「オォォォォォォォォォ!」
魔導獣が叫び声を上げた。
「なんか怒ってないか?」
「一撃で城を沈められなかったのがショックだったのかも……」
ゴクーがキエルに話しかける。
「あんたら何か策はあるのか? こんな巨大な相手まともに立ち向かえないぞ」
「策ねぇ……」
ヅィリィが呟く。
「ソウルガンドを使うしかないだろうな」
またあの魔法……
ヅィリィが溜息をついた。
「この時のための、このギルドだからな」
いつもどこか人をおちょくったふざけた話し方をしているヅィリィが真面目な話ぶりで話した。
ヅィリィが魔導獣に向けて一歩前に出る。
いつものヅィリィの表情じゃない、決意をしたような凛々しさすら感じる。
「かっこいい……」
普段なら絶対に言わないだろう事をセリルが言った。
「ヅィリィ、俺がやる下がっててくれ」
キエルが話しかけるがヅィリィは振り向きもしなかった。
「これは元々俺の役目だろうが」
ヅィリィの身体から煙がほとばしっている。
まるでヤヨイがバーストをした時みたいな状態だ。
「キエルさん、ヅィリィさんはどうしちゃったの?」
あまりのヅィリィの変わりようにフランが質問せずにはいられなかったようだ。
「いいか……フラン、セリル。 2人ともヅィリィの最後をよく見ておくんだ」
最後?
ヅィリィを囲うように魔法陣が浮かび上がる。
魔導獣か城に向かってジャンプしてきた。
かろうじて形が捕らえられるほど離れた距離にいるのにそこから一回の跳躍でここまで向かってくるつもりのようだ。
魔導獣は鳥が羽ばたくように空に舞い上がり、天高く上昇し、城に向かって飛び降りようとしてきた。
巨大な塊が空を覆い太陽が遮られ当たりは暗くなった。
魔導獣の身体からも虹色の光がほとばしっている。
かなりの魔力を込めて城に向かって一撃を入れるつもりなのかもしれない。
ヅィリィを中心に白い光が広がってくる。
一瞬であたりは白く、浄化の光で覆われた。
ヅィリィは両手を広げ、徐々に手前に伸ばして手を重ねる。
空間全体を覆っていた、浄化の光が魔導獣に集まっていく。
魔導獣は宙に浮いたまま凝縮した浄化の光に覆われた。
白い球体のような光に囲まれて魔導獣の姿は見えなくなった。
「何が起きてるの?」
「私達の使ったソウルガンドとは迫力が違う」
このソウルガンドを見ると、フランとセリルが使ったのは確かに未熟だったかもしれない……
それくらい、洗練されている。
純白の球体の中で魔導獣の叫び声が聞こえて来た。
ダメージを受けてる……
あのでかい塊が苦しんでる。
「ねえ、ヅィリィさんが!」
「えっ……ヅィリィさん……」
ヅィリィの髪が白くなり、元々やつれていた身体はさらにやせ細り骨にかろうじて皮膚が張り付いているような見た目になっている。
フランとセリルは悲痛な見た目にヅィリィから目を背けた。
「ダメだ、2人ともヅィリィを最後まで見届けるんだ!」
こんな状態になってるのに、魔法の勢いはまったく衰えていない。
なんて精神力なんだ……
気づけば魔導獣の叫び声は聞こえなくなっていた。
それでも、ヅィリィはまだ魔法を止めようとしない。
もういいんじゃないか?
魔導獣は活動を停止したんじゃ……?
キエルは目を赤くしながらヅィリィを見て話し出した。
「分かっているんだ、ヅィリィは…… やり過ぎなんてない、活動再開ができる可能性が1パーセントでも残らないように確実に決める」
ヅィリィがフラつき始めた。
限界……
いや、もうとっくに限界なんて超えてるんだろうが、気持ちで支えるのも、もうできなくなってしまったのだろう……
見てられなくなったフランとセリルがヅィリィを支え出した。
魔導獣を囲んでいる浄化の光が強く輝きまた、空間全体を照らし出した。
眩しすぎて何も見えなかった……
聞いたことのないような大きなものの落ちると共に地響きがした。
ぼんやりと見えた先には魔導獣が地面にめり込み倒れていた。
魔導石の輝きは失われ、ただの岩の塊のようになっている。
魔導獣を倒した、しかもたった一人で……
「「ヅィリィさん!」」
声の先にはやせ細り、動かなくなったヅィリィが倒れていた。




