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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 三章・宴の終わり 「43.進路変更」

レバリーで宿の中で魔力線に捕らえられていたマチルドとアリスを救出したオリバーですが、魔力線を放出していた玉を破壊した時に闇の魔術の直撃を受け、オリバーは気を失ってしまっています。

ふと気づくと、オリバーは真っ暗な部屋の中に倒れこんでいました。



「どこだ…ここは。」



オリバーはしばらくじっと目を凝らしました。暗闇で目が慣れてくると思いきや、いつまで経っても辺りの風景は見えてきません。



「みんな…どこだ。」



オリバーはうわ言のようにつぶやきました。



「ハンス…ペーター…!ローズ…。いたら返事をしてくれ…。」



しかし、返事はありません。オリバーの声はだんだん荒くなってきました。



「ここはどこなんだ!俺をここに閉じ込めたのは誰だ!いったいみんなは、俺の大切な仲間たちはどこだ!」



オリバーは叫び続けましたが、何の音も聞こえません。オリバーはがっくりと座り込んでしまいました。



「俺は…死んでしまったのか?」



すると、オリバーを包み込むような声が聞こえてきました。



(…オリバー・ローゼンハイン)



オリバーはサッと顔をあげました。しかし、相も変わらず辺りは真っ暗です。



「俺に話しかけてくるのは誰だ。アンドレアスか?いや、この声はアンドレアスじゃないな。別の魔神か?」



声が答えました。



(俺は誰でもないさ。俺は俺だ)



オリバーは再び声を荒げました。



「どうして俺をこんなところに閉じ込めた!?俺は死んでいるのか?いや、心臓の鼓動は聞こえる。まだ俺は死んではいないはずだ。早く答えろ!」



声はひとしきり笑った後、答えました。



(ずいぶんと焦っているようだな、お前は。死ぬのが怖いのか?今まで散々人の命を奪ってきたお前が)



オリバーはドキリとして黙り込んでしまいました。声は楽しむように続けます。



(安心しろよ、お前はまだ死んでいない。だけど、生きてるってわけでもないな)



オリバーは怪訝そうな表情を見せました。



「死んでも生きてもいない…?…なるほど、俺は玉を破壊した時に闇の魔術の直撃を食らった。今は気を失っている間の夢の中、ということか。」



オリバーはホッとしたように息をつきましたが、声は笑っています。



(まあ、そう思うのが一番近いかもしれないな。だけれどこの夢はな、お前の意思で覚ますことはできないんだよ。その気になれば、お前を永遠にこのままにしておくことだってできるんだ)



オリバーは険しい表情を見せました。



「…お前は本当に誰なんだ。聞いていると、俺の身体を自在に操ることができるようだが?」



声は嘲るような息を一つつくと、言いました。



(何度も言ってるだろ、俺は俺だって。まあ、今のお前はやらなければならないことがあるようだからな、すぐに元に戻してやるよ。だが…お前はすぐにここに戻ってくることになる…あくまで、『ここに』な)



声が聞こえなくなった瞬間、オリバーの目の前が、絵具を混ぜたようにぐるぐる回り出しました。



「ま、待て!いったいどういうことだ!戻ってくる?冗談じゃない、俺は、俺はぁ…っ!」



しかし、それ以上のことはオリバーは口にすることができませんでした。頭の中を直接かき混ぜられているような感覚に襲われたからです。苦しみに悶えるオリバーの耳に、今度は聞きなれた声が徐々に聞こえてきました。



「先生…!先生…!」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



気がつくと、オリバーの顔をハンス、ペーター、そしてローズが覗き込んでいました。三人とも引きつった表情をしています。



「あ、ああ…三人とも…。」



オリバーは頭を押さえながら上体を起こしました。まだ頭が割れるようにガンガンと痛むのです。



「大丈夫ですか、先生。急にうなされだしたので、びっくりしましたよ…。」



ハンスが心配そうに言いました。



「あ、ああ…。心配をかけてしまってすまない。何だか悪夢を見たようでな…。」



「尋常じゃないうなされかたでしたよ?どんな夢だったんですか?」



ペーターも心配そうです。オリバーは夢のことをはっきりと覚えていましたが、弟子たちを安心させるために首を横に振りました。



「さぁ…あまり覚えていないな…。何かに追われているようだったかもしれない。」



ローズも不安げにオリバーの顔を覗き込んでいます。オリバーは笑顔を見せると、言いました。



「ほらほら、心配するなよ。ただの夢さ。そんなことより、ハンスとローズがいるということは、無事に合流できたわけだな。」



ハンスが口を開こうとした時、その後ろから声が聞こえてきました。



「やあ、オリバー。気がついたかい。」



パトリックの声でした。笑顔でこちらへ歩いてきます。



「ああ、パトリック。心配かけちまったな。」



オリバーも笑顔を返し、立ち上がろうとしました。しかし…、



「オリバー!」



「ぬおっ!?」



パトリックの遥か後ろから突進してきたものに、オリバーは押し倒され、再び地面に横たわることになってしまいました。



「すまぬ!吾れらを助けるためにあんな目に遭わせてしまって…。だが、お前ならば必ず助けに来てくれると信じていた。そのおかげで吾れらは命をつなぐことができたのだ!」



アリスはオリバーにしがみつきながら涙ながらに言いました。パトリックとエミリーは少し安心したようにアリスを見ています。一方、ローズは不機嫌そうな表情でハンスとペーターを蹴飛ばし続けています。オリバーは苦笑いしました。



「や、やあ、アリス。とにかく無事でよかった。マチルドは気を取り戻したのか?」



オリバーが言うと、マチルドもひょっこり顔を出しました。どこか遠い目でオリバーとアリスを見ています。



「まあなー。ここまで運ばれてくる途中にな。」



「はは、そうなのか。」



オリバーはアリスを引き離して立ち上がろうとしましたが、アリスはがっちりとオリバーを掴んでいてとても離れそうにありません。仕方なくオリバーはそのままの体勢でパトリックにたずねました。



「ところで、現状はどうなっているんだ、パトリック。」



「ああ、そうだったね。ちなみにここは、ノーザリンのもっとも南の村に近い森の中だよ。…みんなで話し合って、後は君の判断を待つだけなんだけど、私たちは予定していたルートを変更してシーガルン経由で禁じられた洞窟へ向かおうということになったんだ。」



パトリックの後を、イザベルが続けました。



「あの洗脳されていた人々ですが…、レバリーで玉を破壊した時に、人々の洗脳も解けることを期待していたのですが、そう都合よくは行かなかったようです。あの人々はシャロンが直接魔力を送って洗脳しているようですね。」



今度はレオンが続けました。



「俺たちもその洗脳された村人と遭遇した。もう少しで戦っちまうところだったんだが、アンドレアスが教えてくれて、危ない所で戦闘を回避することができたんだ。」



すると、心の中でアンドレアスの声も聞こえてきました。



「私としては全員魔術で消し去りたいところだったのだが…ローズに厳しく咎められたのでな。」



ローズは険しい表情を見せました。しかし、オリバーは瞬間的に別のことを考えていました。



(やっぱり、俺が夢の中で聞いていた声はアンドレアスの声ではなかったか…)



考えこむオリバーに、ビアンカが言いました。



「というわけなんだよ。このままノーザリンを突っ切るんじゃとても時間がかかっちゃうからね、いっそのことシーガルン経由で行った方がいいんじゃないか、って話。どうかな、師匠?」



「ん、ああ。…そうだな。みんなの言うとおり、そうしようか。レバリーまでたどり着くまでも大変だったのに、レバリー市内もひどい感じだったからな。じゃあすぐにシーガルンへ向かおう。」



オリバーはここになってようやくアリスを引き離すと、立ち上がりました。他の仲間たちも次々と準備を始めました。そんな中、アリスはローズに近づきました。



「ローズ、少し気がかりなことがあるのだ。」



ローズは不機嫌そうにアリスを見ました。



「抜け駆け…。」



「そんなことを言っている場合ではない。先ほどの会議中ずっと、オリバーは心ここにあらずという感じがしたのだ。」



「それは嫌味にしか聞こえない…。女の人に抱きつかれてたら、男の人はだいたいそうなる…。当たり前…。」



ローズは明らかに嫌悪感をあらわにしていますが、アリスは首を振ります。



「違うのだ、そうではない。むしろ、吾れのことすらも認識していないのではないか、という雰囲気だったのだ。特に…アンドレアスの声が聞こえたあたりでは妙に心拍数が高くなっていたように思うのだ。」



アリスのこの言葉で、ようやくローズは考えこむような表情を見せました。



「同じくオリバーを想う者として、思わず抜け駆けをしてしまったことは謝る。しかし、このオリバーの様子は気にはならぬか?」



ローズはアリスの顔を見ると、はっきりと頷きました。



「先生は気を失っている間、悪夢を見ていたみたい…。きっとそれに何かがある…。このままではいけない…。アリス、しばらく私はカトリーヌに乗せてもらう…。」



アリスは笑って頷きました。



「うむ、わかった。…だが、カトリーヌではない、ホルストだぞ。」



「あっ…ごめん。」



「まあよい、気にするな。…ビアンカ、すまぬがしばらくは吾れの後ろには乗せてやれぬ。ローズと話があるのでな。」



アリスはビアンカに声をかけました。



「へ?二人で話しなんて、意外と珍しいね。まあいいや、じゃああたしは師匠に乗せてもらっちゃおうかな。」



ビアンカの言葉に、ローズとアリスは同時に焦ったような表情を見せました。



「あはは、二人ともおもしろいなぁ。まあ、冗談だよ。ヘルガー!ちょっと乗せてー!」



ビアンカはヘルガの方に歩いて行きました。そして辺りに人がいなくなった頃を見計らい、ローズは自分の肩を三度叩きました。途端に、もやもやしたアンドレアスが姿を現しました。



「…どうした。まだ私に説教をし足りないのか?」



アンドレアスが言いましたが、ローズは首を振りました。



「それは、もういい…。それより、先生の様子が少し変…。気を失っている間に何かよくない夢を見ていたのかもしれない…。少し探ってほしい…。」



「それは私がやるより、そなたがやった方が良いのではないか?そなたもローゼンハインとの接触が増えるだろう。」



アンドレアスの言葉に、ローズは顔を真っ赤にして言いました。



「余計なことはいわない…。いいから早く行って…。」



「ふむ…?まあ、よい。確かに私も先ほど、ローゼンハインの心の変化をうすうす感じ取っていた。私も興味がある。では行ってこよう。」



アンドレアスはそう言うと、スッと姿を消しました。ローズとアリスは少し不安げな表情で顔を見合わせていました。

オリバーは『夢』の中で正体不明の声に怯えていました。一方で、オリバーの異変を感じ取ったローズとアリスはアンドレアスにオリバーの様子を確かめさせることにしました。



次話ではオリバー一行がシーガルン経由で再び禁じられた洞窟に向かうことを決めます。ハングリアでは、以前会ったブレーズ将軍と再会するようです。どうぞお楽しみに!



ちなみにオリバーは時々闇の魔術師時代の悪夢を見てうなされることがあるので、ハンスとペーターは比較的そのことに慣れていましたが、今回はそんな二人でもびっくりするくらいのうなされようだったのです。



では次話をお楽しみに!

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