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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 三章・宴の終わり 「39.黒い嵐」

オリバーたちはオーベルクに帰ってきてからずっと、街の復興作業を手伝っているようです。初めは終わりの見えない作業でしたが、徐々に復興の目途もたってきたようです。

ヴォルフの宿や『隠れ家』の修理も終わり、オリバーや仲間たちは綺麗に晴れた空の下でオーベルクの街の復興作業の手伝いを続けていました。



「ふいーっ…。おう、オリバー。北のはずれの方の地区はある程度作業が一段落したぜ。」



イザベルとロジェを連れたレオンが広場にいたオリバーのところに帰ってきました。



「あ、ああ…。お疲れさん…。」



オリバーはレオンの言葉があまり耳に入っていないようです。どうやら意識は上の方にあるようです。その側にいたローズとビアンカも上を見たまま口をポカンと開けています。



「おいおい、お前ら、口を開けてても空から食い物なんて降ってこねぇぜ?」



レオンは笑いながら、それでも彼らの視線の先に何があるのかが気になって上の方を見てみました。その瞬間、レオンの目は大きく見開かれました。



「なっ、何だぁ!?」



彼らの目線の先にある建物の屋根の上で、ラルフが目にもとまらぬ速さで木槌をふるい、屋根の修理をしているのです。彼の周りで修理をしている住民たちも思わず手を止めてその様子を見ているのですが、ラルフはそんなことなどお構いなしにどんどん作業を進めています。



「にっ、人間業じゃない…。」



ロジェが度肝を抜かれたように言いました。



「『隠れ家』の地下室をつくっていた時、あたしはサボってたからラルフが仕事してるところを見たことがなかったけど…確かに予想よりもずっと早く完成していたなぁ…。」



ビアンカもラルフの様子に圧倒されているようです。そこへ、チュンフェイとヨウフェイがやってきました。



「東のがれき運び終わったネ!…オマエら、どうしてそろいもそろってマヌケ面してるネ?…すごいネ!大工兄さんなかなかやるヨ!」



「あはは、この流れ、まだしばらく続きそうだね。」



ようやくラルフから視線を戻すことができたビアンカがオリバーに言いました。



「ああ、そうだな。」



オリバーも苦笑いして答えました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



お昼頃になって、多くの仲間たちが広場に集まりました。屋根の修理をしていたラルフもようやく降りてきました。



「ふぅーっ…。あ、みなさん。お疲れ様です。」



そんなラルフにレオンが声をかけました。



「すげぇもんだぜ、ラルフ。ここからずっとお前の作業を見させてもらったが、手際がいいなんてもんじゃねぇ。もう神の領域だぜ?」



ラルフは苦笑いしました。



「そんな、神の領域なんて恐れ多いですよ…。確かに久しぶりに本気は出してみましたけど…。ああなると周りのことなんて全然目に入らなくなっちゃうから、あまり僕としてもよくはないんですけどね…。」



遠慮がちなラルフですが、ロジェは感服し通しです。



「そうはいってもやっぱりすごいですよ!改めて見直しましたよ。」



「はは、まあ僕の本業はただの大工だからね…。武器の手入れなんて、ローレンツ親方に教えてもらわなかったらまったくできていないはずだしね。」



「ろ、ロー?それはいったい誰ネ?」



ヨウフェイが首をかしげました。



「ああ、俺たちと一緒に戦っていた気のいい鍛冶屋さ。ラルフがとても慕っていたんだ。戦いの後、東方世界に旅立って行ったんだ。」



オリバーが説明しました。



「ああ、ずっと前に大工兄さんが行ってた、火薬に興味を持った人ネ。思い出したヨ。」



「あの時は親方と二人三脚で武器の手入れをしていたけど…やっぱり僕一人だとなかなか不安ですね。ちゃんと手入れができているかどうか…。」



ラルフが苦笑いして言いました。ビアンカは大げさに目を見開いて言いました。



「そんなことないよ!今のラルフは、一人でローレンツの分も含めて二人分の仕事をできているもん。もちろん、負担にはなっているとは思うけどさ…。」



「本当ですか?それならよかったです。」



ラルフが嬉しそうに言った時、馬の足音が近づいてきました。



「みんな、お疲れさま。作業ははかどっているかい?」



馬に乗って街の中を見回っていたパトリックとモニカ、それにアリスとエミリーでした。オリバーが応えました。



「ああ、順調に進んでいるよ。街中に異変はなかったか?」



「心配ないよ。どこもかしこも、みんな総出で復興作業に従事しているようだね。私たちも昼からは君たちと一緒に作業を手伝うつもりだ。」



「そうか、それは助かる。」



今度はアリスとエミリー、それにモニカが仲間たちに言いました。



「みな、腹がすいただろう。朝からずっと体を動かしているのだからな。」



「お弁当を持ってきましたよ。今日はモニカもお弁当づくりを手伝ってくれたのです。」



「ちゃんとできたかどうかわかりませんが…、一生懸命作りました。」



仲間たちは喜びの声をあげました。そしてすぐに四人が持ってきたお弁当を食べ始めました。



「うおぅ!なかなかうまいぜ!モニカ、やるな!」



マチルドがびっくりしたように言いました。



「ええ、その通りだわ、マチルド。とっても上手だわ、モニカ。」



ヘルガもにっこり笑って言いました。



「ありがとうございます!あの、これも私が作ったんですけど、ちょっと食べてみてください。」



モニカは料理をみんなに褒められ、とても嬉しそうです。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



お弁当を食べながら、オリバーはハンスとペーターと話していました。



「それにしても…シャロンはもう一週間以上何の動きも見せませんね、先生。」



ハンスの言葉に、オリバーは頷くと、少し考え込むようにうつむきました。ペーターが答えます。



「俺たちにあんな痛手を負わされたんだし、もうもしかしたらこの国にはいないかもしれないッスよ。」



「そうかなぁ…。だとしたら、他の国に行っちゃったってことかぁ…。だとしたら、他の国を襲うかもしれないよなぁ…。」



「それならもう心配ないッスね。国力が回復したら、リバー王国もまた復活できるッス。」



「おいおい、ペーターはそれでいいかもしれないけど、俺や先生たちはその他の国から依頼が来たら、またシャロンと戦いに行かなきゃならないんだから。少なくとも、今リバー王国がこんなことになっているんだから、シャロンのことは他の国にも情報として伝わっているだろうし…。」



「あ、そう言えばそうッスね…。それにしても、正直この国がこんなことになっているのに、他国は全然攻め込んでこないッスよね…。まあ、フラレシア王国はここやシーガルン王国には友好的だから、心配はないと思うッスけど…。」



すると、ビアンカが横から割り込んできました。



「ああ、それはねー。ほら、ナンジューマに大神殿があるでしょ?あそこには国内外から巡礼者が集まってくるし、周りの国もそんなに手出しできないんだよね。けっこう信仰心の篤い国王も多いらしくてさ。まあ、普通に考えたらシャロンとの戦いに巻き込まれたくない、っていうのが大きいんだろうけどね。」



「ああ、なるほど…。大勢の軍隊も、結局はシャロンの一言で全部洗脳される可能性があるかもしれないしね…。」



ペーターが言いましたが、ハンスは別のことを考えたようです。



「でもさ、それはつまり、どんな結果になろうとリバー王国は見殺しにされる可能性が多いってことだよね。他国からの支援や援軍はなかなか望めない、ってわけだ。」



ハンスの言葉に、ビアンカは大げさに顔をしかめました。



「むー、まあ、そりゃあそうだけどさ、結局今までだって、あたしたちがどれだけ頑張っても、結局あたしたち自身で何とかしなきゃならなかったんだしさ。変わったことは何もないんじゃないの?」



「でも、そうは言ってもさ、これまではオットー様が俺たちを助けてくれていたんだ。この国の中で最も大きな後ろ盾を失ったのは、やっぱり大きいよ。ヘルガだって王国を一度解体して今は女王様じゃなく、仲間の一人なんだから。」



「むー、ずいぶん今日のハンスは厳しいこと言うなぁ…。実際にその通りなんだけどさ…。」



ビアンカは困ったような表情を浮かべました。



と、その時でした。突然強い風が辺りに吹き渡りました。馬たちも怯えています。考えごとをしていたオリバーも、とっさに叫びました。



「みんな!建物の中に避難するんだ!急げ!」



オリバーの声に、仲間たちも、街の人々も、一斉に建物の中に避難しました。外は強い風が吹き荒れ、空には真っ黒な雲が垂れこめています。しかし、雨は降っていないようです。



「オリバーさん、いったい何が起こったのでしょうか…。さっきまではこんな気配はなかったのに…。」



イザベルが珍しく戸惑ったように言いました。しかし、オリバーはそれに答えず、窓の外をじっと睨みつけています。



「うおぅ!?チュンフェイ!ヨウフェイ!大丈夫か!?」



後ろの方で聞こえたマチルドの声にイザベルが振り返ると、チュンフェイとヨウフェイが床に倒れて青い顔をしています。その瞬間、イザベルは直感しました。



「シャロンが…魔力を取り戻した…のですか?」



イザベルの言葉に、仲間たちはギョッとした表情を見せました。オリバーは厳しい表情を見せて頷きました。



「どうやらそのようだ。その上、シャロンは完全に俺たちを、いや、俺と戦うことを見据えているようだ。あの黒い雲の中心を見てみろ。」



オリバーに言われ、仲間たちは窓の外を見ました。黒い雲が渦巻くその中心に、苦しむ人の顔のような影が見えます。



「なっ、いったい何だよ、あれは…。」



レオンが思わず後ずさりしながら言いました。



「あれは、闇の魔術師が何か行動を起こす時の合図だ。恐らくシャロンが打ち上げたものだろう…。」



そう言ってオリバーは、窓から身を乗り出すと、今までに、呪いの魔術を使う時ですら見たこともないような冷酷な目をして何かをつぶやきました。その瞬間、彼の指から真っ黒な光が放たれました。その瞬間、同じような黒い雲がシャロンの雲を覆い隠しました。しかし、どうやら外で吹き荒れていた風はおさまったようです。オリバーは仲間たちの方を振り返りました。



「すまないな、たった今、俺自身も闇の魔術を使った。だが、ああしないとあの黒い雲がどんどん魔力を蓄え、この嵐もおさまらなかった。それに、少しでも闇の魔術をかじった魔術師は、あの印を見たらそれを自分の力で覆い隠さない限り命を落としてしまうんだ。」



そう言ってオリバーはつまらなさそうに指をパチンと鳴らしました。その瞬間、黒い雲は一瞬にして消え去り、元の青空が広がりました。



「ともかく、チュンフェイとヨウフェイを安全な場所まで運ぼう。みんなで『隠れ家』に行こうか。」



仲間たちは頷きました。そしてチュンフェイとヨウフェイを抱え上げ、『隠れ家』に向かって歩き始めました。



(こんなに短期間に、あの印を作り出せるだけの魔力を回復するとは信じられない…ん?)



オリバーが厳しい顔をしたまま顔をあげると、ロジェがフラフラしながら立っています。



「ロジェ?どうしたんだ?」



「え、ええ…。な、何だかめまいが…。」



オリバーは心配そうにロジェの顔を覗き込みました。ロジェの顔はまるでチュンフェイやヨウフェイのように真っ青でした。



「大丈夫か?お前もイザベルに診てもらった方がいい。さあ、『隠れ家』に行こう。」



「は、はい…。」



オリバーはロジェの体を支え、ゆっくりと『隠れ家』に向かって歩き始めました。

晴れわたっていたオーベルクの空を突然黒い雲が覆い、激しい風が吹き荒れました。オリバーはシャロンの復活をすぐさま感じ取ったようです。



次話ではオリバーたちがもう一度シャロンとの決着をつけるための戦いに出発することを決めます。どうぞお楽しみに!



ちなみにオリバーはシャロンがつくり上げた印を自分の印で覆い隠しましたが、こうすることで印自体を自分の支配下に置くことができるので、シャロンの印も自分の印と一緒に消すことができたのです。



では次話をお楽しみに!

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