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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 三章・宴の終わり 「38.復興の途上」

パカロンで今後の王国の方針などを決めたオリバーたちは、シャロンとの戦いで傷ついたオーベルクに帰ってきました。街の様子はいったいどうなっているのでしょうか?

オリバーと仲間たちはパカロンからオーベルクに帰ってきました。ヴォルフも一緒です。



「俺はここからシーガルンを経由してフラレシア王国に向かう。この国書を届けなければならないからな。俺が留守の間も、あの宿はこれまで通り使っていいからな。」



馬の上でヴォルフが笑いながら言いました。ヴォルフはヘルガがしたためた国書をフラレシア王国に届けに行くのです。



「気をつけて行けよ。」



オリバーが声をかけました。



「ああ、心配するな。それじゃあ、行ってくる。」



ヴォルフは仲間たちに手を振ると、西に向けて馬を走らせていきました。オリバーたちはその姿が見えなくなるまで見送っていました。



「…さあ、ともかく『隠れ家』に行こうか。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちは『隠れ家』に到着しました。入口はところどころ壊れていますが、中は特に荒らされていないようです。もちろん地下室は完全に無事です。オリバーたちはとりあえず一番大きな部屋に腰をおろしました。



「ともかく、この『隠れ家』の修理もしないとな。イザベル、どうしようか?」



イザベルはすぐに答えました。



「壊れているところはほんのわずかなようなので、そんなに人手は必要ありませんよ。私とビアンカさんと、あとは男の方が二人もいれば十分でしょう。」



「うん、そうだね。あたしもそれでいいと思うよ。」



すると、今度はロジェが言いました。



「僕は街の様子を見てきたいです。これだけ破壊されたわけですから…。」



「ああ、それは俺も思っていた。ラルフ、ここの修理に残るか?」



オリバーはラルフに聞きましたが、ラルフは首を振りました。



「いえ、あれくらいの被害ならわざわざ僕が手をかけるまでもありませんよ。誰でも直せると思います。」



「よし、わかった。じゃあハンスとペーターが残ってくれ。後のみんなは、とりあえずヴォルフの宿に移動しよう。あっちの被害も確認したいからな。馬たちも休めないとならないしな。」



オリバーの言葉に、仲間たちは頷きました。レオンはペーターに声をかけました。



「ペーター、グスタフは俺が連れて行っておいてやるよ。」



「ありがとうございます、レオンさん。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーはエドゥアルトにまたがりました。彼自身、シャロンから受けた傷が完全に癒えたわけではないのです。



「大丈夫かい、オリバー。まだ傷が痛むのかい?」



パトリックが心配そうにオリバーの横にやってきました。オリバーは苦笑いしました。



「これは傷というより、一種の呪いだ。そう簡単にはよくはならないさ。まあ、時間が経ってだいぶましになってきたけどな。」



エドゥアルトの足元から、ローズも心配そうにオリバーを見上げています。オリバーに対して何かを言おうと口を開きましたが、オリバーはそれを笑って制しました。



「俺が傷を受けたことを謝る、って言うんなら、もうその必要はないって何度も言っただろう?むしろ、この傷を受けたおかげでシャロンを撃退することができたんだから。」



ローズは面喰ったような表情をしましたが、たった一言だけ言いました。



「今の言葉をイザベルが聞いていたら先生はただではすまない…。」



「ははは、確かにな。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがて、オリバーたちはヴォルフの宿の前にやってきました。正面に立った瞬間、ラルフが悲鳴をあげました。



「うひゃあ…。これはひどいなぁ…。」



ヴォルフの宿の入り口はめちゃくちゃに壊れています。レオンは窓から中を覗き込みました。



「中はそれほど壊れちゃいねぇみたいだぜ。特にひどいのは外壁だけだ。」



それでもラルフは腕組みをして難しい顔をしています。



「うーん…それにしてもこの壊れ方はひどいなぁ。オリバーさん、僕はここの修理に残ります。それと、人手もある程度必要です。」



「じゃあ、私が残ろう。ラルフを手伝うよ。モニカもそれでいいかな?」



「は、はい!私にできることなら何でも!」



パトリックとモニカが名乗りを上げました。



「じゃあ、俺も残るぜ。力仕事なら俺に任せてくれ!」



レオンも白い歯を見せて言いました。



「じゃあ、あたいも残るよ。ちょっとしたものを運ぶくらいなら手伝ってやれるし。」



「それなら私も残るわ。大工仕事というものを、一度やってみたかったの。」



マチルドとヘルガも言いました。



「もっと人手が必要か?なんだったら俺も残るが…。」



オリバーがラルフに言いましたが、ラルフは首を振りました。



「いえ、これだけ人がそろえば大丈夫です。それにオリバーさんはまだ体が万全ではないんですから、大変な作業をさせるわけにはいかないですよ。」



「はは、そんなに気を遣わなくてもいいよ。傷が痛むだけで、体力も魔力も十分にあり余っているんだから。



…それじゃあ残ったやつは俺と一緒に街を見て回ろう。馬たちも疲れただろうから、ここで休めて歩いて行こう。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちはそれぞれの馬を宿の裏の馬小屋につなぎました。オリバーがエドゥアルトをつないだ後、ふと後ろを振り返ると、アリスがオットー様から受け継いだ馬、ホルストの鼻すじをなでていました。



「すばらしい馬だな、アリス。」



アリスはオリバーの言葉に、どこか淋しそうな表情を浮かべました。



「うむ、お前のエドゥアルトに負けずとも劣らない名馬だ。だが…、やはりこれまで苦楽を共にしてきたカトリーヌを失ったことがつらいのだ…。」



肩を落としたアリスの肩に、エミリーがそっと手を乗せました。



「どうか悲しまないでください、お姉さま。お姉さまがそのような悲しい表情をなさっていては、カトリーヌも悲しむでしょう。…そう、それはホルストも同じです。」



アリスはエミリーの言葉に、ホルストを見ました。ホルストは黙ってアリスを見つめ、それから顔をアリスに擦りよせました。アリスはフッと息をつくと、ようやく笑顔を見せました。



「お前も吾れをなぐさめてくれるのか…。お前も立派な、そして大切なご主人さまを失ったのだものな…。



ようし、この騒動が一段落したら狩りに連れて行ってやろう。都会育ちのお前が森の中でどのような動きを見せるか見ものだな。ははは…。」



アリスは笑いながらホルストの体を抱きしめ、涙を流しました。エミリーはオリバーに意味ありげに一つ頷きました。オリバーはそれに頷き、アリスに言いました。



「アリス、とりあえず俺たちは先に行っているよ。気が向いたら後から追いかけてきてくれ。」



アリスは顔をあげ、涙に濡れた目でオリバーを見つめていましたが、やがて笑って言いました。



「気づかい、感謝する。…お前は本当に良き仲間だ、オリバー。」



オリバーは黙ってうなずくと、馬小屋を後にしました。他の仲間たちも静かにその場を後にしました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ロジェを先頭に、オリバーたちは街中の方に向かって歩きました。オリバーはエミリーに話しかけます。



「少しはあれで元気を取り戻してくれるといいが…、やっぱりアリスはショックを受けただろうな。」



エミリーは大きく息をついて言いました。



「ええ…。カトリーヌは生まれたばかりの頃からお姉さまがずっと面倒を見続けてきましたから…。とはいえ、わたくしもアンヌを失えば間違いなしに平常心ではいられなくなるでしょう。お姉さまやカトリーヌには悪いのですが、あの時シャロンの手にかかったのがカトリーヌではなくアンヌだったら…想像しただけでも震えが止まらなくなります。」



「そうか…。そうだよな。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがてオリバーたちは街の中心広場にやってきました。周りの建物はことごとく壊れています。しかし、街は不思議と活気づいています。なぜなら、多くの人々が協力して建物の修理にいそしんでいたからです。中心となっているのはオリバーたちとともに戦った義勇兵たちのようです。そのうちの一人がオリバーたちに気づいたようです。



「おおーっ!オリバーさんじゃないですか!」



男の声に、周りの住民たちも一斉にオリバーを見ました。



「オリバーさん!」



「オーベルクを救ってくれてありがとうございます!」



オリバーは少し照れくさそうにしていましたが、市民に語りかけました。



「復興の作業は進んでいますか?」



「ええ、避難していた住民も帰ってきて、一緒に力を合わせて作業をしています。」



「元通りにするにはまだまだ時間がかかりますが、少しずつでも手を動かさないとなりませんからね。」



オリバーは感心したように頷き、他の仲間にききました。



「日が暮れるまでの間、俺たちも作業を手伝わないか?」



「賛成です!僕たちも役に立たないと!」



ロジェが嬉しそうに言いました。



「ヨウフェイたちもやるヨ!」



ヨウフェイが飛び跳ねながら言いました。



「おお、ありがとうございます。みんな!オリバーさんたちも手伝ってくれるそうだ!」



その言葉に、街の人々は喜びの声をあげました。ロジェは早速屋根に上り、建物の修理を始めました。



「ヨウフェイと姉さんはがれきを運ぶネ!」



チュンフェイとヨウフェイは山積みになっているがれきを乗せた荷車を押すのを手伝うようです。



「わたくしは建物の中の作業を手伝ってきます。…オリバーさんはどうするのですか?傷を悪化させるわけにはいかないと思うのですが…。」



エミリーが心配そうにオリバーに言いましたが、オリバーは笑って答えました。



「ハハッ、確かに激しい動きはまだ無理だが、何しろ今の俺には魔力があふれかえっている。これを使わない手はないだろう?」



オリバーはそう言って何かを小声で呟きました。すると、無造作に置かれていた木材がきれいに積み上げられました。



「俺だってイザベルほどではないが、実用魔術は使えるんだ。」



オリバーは驚くエミリーを見て、少し得意げに言いました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがて夕方になりました。始めは楽しんで作業を手伝っていたロジェやヨウフェイも、もうへとへとなようです。



「ああ…、疲れた…。」



「ヨウフェイももう動けないネ…。」



オリバーはそんな二人を見て笑いました。



「まったく、こんなことでへばっているなんて情けないぞ。なあ、エミリー。…エミリー?」



オリバーはエミリーの方を見ましたが、エミリーももうふらふらになっています。



「街に住む人々は…人使いが荒いのですね…。」



「何だよ何だよ、みんなだらしがないぞ?」



オリバーは苦笑いしました。すると、誰かがオリバーの肩をポンと叩きました。オリバーが振り向くと、チュンフェイがどこか得意げな顔をしてオリバーを見ていました。



「ああ、チュンフェイは疲れていないのか。まったく、こんなことでへばるなんて、困ったもんだよな。」



オリバーの言葉に、チュンフェイは大きく頷きました。ロジェたちは大きくため息をつきました。



「…と、からかうのはこの辺までにしておいて…。もう宿に戻ろうか。ハンスが戻ってきていたら、うまい夕食もできているはずだしな。」



オリバーが言った瞬間、ロジェは元気に立ち上がりました。



「やった!腹が減って倒れそうでしたよ。」



「お前はそうなる前に倒れていただろう…。まあでも、俺も腹は減ったしな。さあみんな、戻ろう。」



オリバーの言葉に、仲間たちは立ち上がって宿を目指して歩き出しました。

オリバーたちとシャロンとの戦いで大きな被害を受けたオーベルクの街も、少しずつながらも復興の兆しが見えてきているようです。



次話ではオリバーたちが街の後片付け作業を手伝いますが、その途中で街の空に大きな異変が起こるようです。オリバーはその異変が意味することを瞬時に悟るようですが…?どうぞお楽しみに!



ちなみに戦いの時、避難していた人々はみんな街の外に広がる森に身を潜めていました。イザベルが防御の魔力線をその森に張っていたとはいえ、シャロンはそのことに気づき、オリバーたちを葬った後その森を焼き尽くすつもりでしたが、シャロンは敗れたため事なきを得たのです。



では次話をお楽しみに!

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