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暗黒の魔女  作者: kuma383
32/50

~暗黒の魔女~ 二章・オットー様の覚悟 「31.オットー様の覚悟」

シャロンとの対決は明日の夜です。オリバーたちは『隠れ家』で最後の作戦会議を開くことになりました。

夜、オリバーと仲間たちは宿に(もど)らず、『(かく)()』にやってきました。シャロンと直接対決(ちょくせつたいけつ)するにあたって最後の作戦会議(さくせんかいぎ)を開くためです。オットー様はオリバーたちを心待(こころま)ちにしていらっしゃいました。



「よくぞ来た、ローゼンハイン殿。早速(さっそく)作戦会議(さくせんかいぎ)を開くこととしよう。」



「わかりました、オットー様。…まず義勇兵(ぎゆうへい)訓練状況(くんれんじょうきょう)ですが、どのように進行(しんこう)しているのでしょうか?」



「皆、街を守るために真剣(しんけん)なため、訓練(くんれん)も楽に進んだ。今は()の代わりにヴォルフが訓練(くんれん)を続けているはずだ。」



「わかりました。それならば安心です。では簡単(かんたん)合図(あいず)確認(かくにん)です。戦闘時(せんとうじ)に万が一のことが起こった場合は、イザベルが黄色い火柱(ひばしら)を立てます。それが退却(たいきゃく)合図(あいず)です。(ぎゃく)に、一気(いっき)攻勢(こうせい)仕掛(しか)けていただきたいときには緑の火柱(ひばしら)が立ちあがります。」



「黄色が退却(たいきゃく)、緑が猛攻(もうこう)だな。よくわかった。」



オットー様は(うなず)きました。



「そこだけを守っていただければ、残りの行動はオットー様にお(まか)せいたします。」



「わかった。あなた方の邪魔(じゃま)にならぬようにだけは気をつけるとしよう。」



オットー様は笑っておっしゃいました。



「後は俺たちの組みわけだな。アリスはローズをカトリーヌに()せて戦ってくれ。エミリーとパトリックは単独(たんどく)で戦ってくれ。」



「今回は君たちとのタッグはないわけだね。少し調子(ちょうし)(くる)うかもしれないなぁ。」



パトリックが苦笑いして言いました。



「すまんな。だが今回のモニカの新しい魔術(まじゅつ)を使うには、俺とイザベルが近くにいた方がいいらしいことが分かったからな。アリスもパートナーが変わって少し調子(ちょうし)(くる)うかもしれないが、しっかりとローズと連携(れんけい)して頑張ってくれ。」



「うむ…。お前と組めぬのは非常(ひじょう)に残念で仕方がないが…、それが勝利につながるのであれば仕方があるまい。ローズ、よろしく(たの)む。」



ローズはじっとアリスを見ていましたが、(あわ)てて(うなず)きました。



「そして…、ヨウフェイはここに残るんだ。ヴォルフと一緒に『(かく)()』を守ってくれ。」



「ううー…、つまらないヨ…。でもクララを守るためならヨウフェイも頑張るネ!」



ヨウフェイが元気いっぱいに答えました。



「ハンスとペーター、ラルフは宿を守るんだ。入口の外に待機(たいき)していてくれ。」



すると、チュンフェイが静かに歩みよってきました。そして、紙を取り出すと何やら文字(もじ)を書きました。



『ペター、戦う、(わたし)一緒(いっしょ)



オリバーはその紙を見て少し考え込みましたが、やがてその意味を(さと)り、笑いました。



「はは、わかったよ。チュンフェイ、お前はペーターたちと一緒に宿の入り口を固めるんだ。ハンスもいいな?」



「わかりました。」



ハンスも笑って答えました。



「チュンフェイ、俺たちで宿を守り通してやろうぜ!」



ペーターはチュンフェイに手を差しだしましたが、チュンフェイはプイッとそっぽを向いてしまいました。



「さて…。パトリックたちはその時の状況(じょうきょう)(おう)じて俺たちに加勢(かせい)したり、オットー様たちに加勢(かせい)したりしてくれ。基本的(きほんてき)にはオットー様たちの方に加勢(かせい)した方がいいかとは思うが…。」



「わかりました、ではそのようにしましょう。」



エミリーが答えました。ローズとアリスはまた少し残念そうな表情をしました。



「…お姉さま、ローズさん、後でお話が…。」



エミリーが(こわ)い顔をしてローズとアリスを(にら)んだので、二人はおびえたような表情をしました。



「残りはみんなでシャロンと直接対決(ちょくせつたいけつ)だ。やつが何を()り出してくるかはわからないが…。」



「敵の実態(じったい)が読めないことなんて、これまでに何度もあったでしょ?大丈夫だよ、師匠(ししょう)。」



ビアンカが(はげ)ますように言いました。



「ああ…確かにそうだな。ありがとう、ビアンカ。」



「えへへー、こちらこそ。」



オリバーは笑顔を見せた後、仲間たちに向き直りました。



「ともかく、これはとても重要(じゅうよう)な戦いだ。ここでシャロンを倒すか、あるいは勢力(せいりょく)を弱めれば、リバー王国に(かぎ)らず、今後他の国をシャロンが(おそ)うことはなくなるだろう。逆に俺たちが負ければ、世界が暗黒(あんこく)に包まれる可能性がある。シャロンに別の呼び名をつけるとしたら、それはまさしく『暗黒(あんこく)魔女(まじょ)』だ。」



暗黒(あんこく)の、魔女(まじょ)…。ああ、まさしくそうだ。」



レオンは身震(みぶる)いしました。



「何だよ、レオン。ビビっちまったのか?」



マチルドが()やかすように言いました。



「そうじゃねぇ…。ただ…、武者震(むしゃぶる)いじゃねぇことも確かだな…。いや、やっぱり心の中ではビビっちまっているのかもしれねぇ…。」



「おいおい、マチルド、その辺にしておけ。俺だって恐怖心(きょうふしん)はある。他にも恐怖心(きょうふしん)を持っている仲間もいるだろう。だが…、戦いのときはその恐怖心(きょうふしん)()てなければシャロンには勝てない。とにかく今日は平常心(へいじょうしん)(たも)つように心がけてゆっくり休むんだ。…とにかく、作戦会議(さくせんかいぎ)は以上だ。何か質問(しつもん)は?」



誰も手をあげる仲間はいませんでした。



「よし、じゃあ作戦会議(さくせんかいぎ)は終わりだ。宿に帰ってゆっくり休むんだ。チュンフェイとヨウフェイは残ってクララ様の授業(じゅぎょう)を受けるんだ。ペーターも残れよ?」



「はいっ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーはチュンフェイとヨウフェイがペーターやクララ様から文字(もじ)を習っている様子を(なが)めていました。



「そう…。そう。そうよ。とても上手になったわ、ヨウフェイ。」



「ありがとネ、クララ!」



「おいおい、まったく…。」



オリバーは苦笑いしました。チュンフェイもペーターの(かたわ)らで手を真っ黒にして文字(もじ)を書いています。



「チュンフェイもかなり文字(もじ)を覚えたんだな。」



「ええ、(こま)かい文法(ぶんぽう)はまだ覚えられないみたいですけど、それでも知っている単語(たんご)(なら)べて簡単(かんたん)筆談(ひつだん)くらいならできるようになりましたよ。」



「ああ、さっきもそうだったもんな。お前は正しく名前を覚えられていないようだったがな、ペター。」



オリバーがおかしそうに言うと、ペーターもチュンフェイもまったく同じように(ふく)れっ(つら)をしました。



「はは、冗談(じょうだん)だよ、冗談(じょうだん)。そんなに気を悪くしないでくれよ。」



オリバーが笑いました。すると、そこへオットー様が顔をのぞかせました。真剣(しんけん)な表情をなさっています。



「ローゼンハイン殿、あなたと少し話がしたいのだが…。」



「オットー様…。かしこまりました。」



「では…外に出よう。夜の空気を()いたい気分だ。」



「はい。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーとオットー様は夜中のオーベルクの街をゆっくりと歩きました。オットー様は右足を引きずっていらっしゃるので、時々オリバーがその体を(ささ)えます。



「すまないな、ローゼンハイン殿。」



「いえ、これしきのことは…。しかし、イザベルの魔術(まじゅつ)でも(なお)すことができないというのは非常(ひじょう)に残念な(かぎ)りです。」



「はは、心配することはない。()にとってはたいした問題ではない。皆に迷惑(めいわく)をかけてしまうことは無念(むねん)でならないが…。」



オットー様はそこで一呼吸置くと、またオリバーに話しかけられました。



「ローゼンハイン殿、今まで本当に世話(せわ)になった。」



オリバーはびっくりしてオットー様の顔を見ました。



「オットー様、それではまるで…、」



オットー様はオリバーに笑いかけようとされましたが、その前に(はげ)しく()きこまれ、思わず地面にうずくまってしまわれました。



「オットー様…。」



オットー様がようやく顔をあげると、その場所には真っ黒い血がたまっていました。



「…見ての通りだ。()はもう長くはないのだ。」



オリバーはハッとしました。



「では最近、調子(ちょうし)(くず)されていたのも、環境(かんきょう)が変わったのが原因(げんいん)ではなく…。」



「そうだ…。予兆(よちょう)はかなり前からあったのだ。あなたと初めて会った時、そう、()がリバー王国の救国(きゅうこく)依頼(いらい)のために()(かく)場所(ばしょ)()()せたときに病床(びょうしょう)()せていたのも、その頃から(やまい)(わずら)っていたためだ。だが救国(きゅうこく)の戦いの時にはその使命感(しめいかん)からか、一度は()の体から病魔(びょうま)はなりを(ひそ)めた。



だが、平和な世の中になった途端(とたん)、再び()の体の中で病魔(びょうま)(あば)れ始めたのだ。」



「イザベルは…何と?」



「イザベル嬢も、パカロンでの()主治医(しゅじい)も、()に気を(つか)ってか、何も言いはしない。だが()にはわかる。()の命はまもなく燃え尽きる…。」



オリバーは(だま)ってオットー様のお話を聞いています。



「…このまま()して死を待つのも一つの手段(しゅだん)だ。だが()は、シャロンに一矢(いっし)(むく)いるまでは死んでも死にきれんのだ。平和を(みだ)し、()(たみ)たちを苦しめたシャロンが、()はどうしても(ゆる)せん。()文字通(もじどお)り、死力(しりょく)を尽くしてこの戦いに(のぞ)むつもりだ。



戦って死ねるなら本望(ほんもう)、生きながらえたとしてもシャロンを倒すことができるならそれはそれで満足(まんぞく)して死を待つことができる。…もう一度言う。()死力(しりょく)を尽くして戦うつもりだ。」



オリバーはじっとオットー様の顔を見つめました。そして、しばらく()ってから口を開きました。



「…オットー様のお覚悟(かくご)、しかとお受けいたしました。ですが…オットー様、(かぎ)られたものとはいえ、どうかご自身(じしん)のお命を無駄(むだ)にだけはなさらぬように…。」



オットー様は笑っておっしゃいました。



「わかっている。()とて犬死(いぬじに)するつもりはない。死ぬならばアルフォンソ三姉妹のごとく、気高(けだか)く戦って死ぬ、そう心に(ちか)っただけだ。()()びた(あかつき)には国を建て直すまで何としても生き続けるつもりだ。」



オリバーは一年半前、武人(ぶじん)として華々(はなばな)しく最期(さいご)()げたユーラン(とりで)のアルフォンソ三姉妹のことを思い出しました。



「ぜひ、そうしていただきたいと(ぞん)じます。復興(ふっこう)にはオットー様の存在(そんざい)必要不可欠(ひつようふかけつ)なのですから。」



「そう言っていただけると、(うれ)しいものだな。…()が話したいことはこれですべてだ。さあ、ローゼンハイン殿も宿に戻り、体力を(たくわ)えるのだ。()も『(かく)()』に帰って休むこととする。…リリーとイザベル嬢にこの出歩(である)きをとがめられそうで気が進まぬのだがな。」



オットー様は笑っておっしゃいました。オリバーもかすかに笑いました。



「そうですね。では『(かく)()』までお送りしましょう。」



「そうしていただけるとありがたい。」



オリバーはオットー様を(ささ)え、『(かく)()』へと戻って行きました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



少し(はな)れた建物の物陰(ものかげ)に、人影(ひとかげ)が二つ見えました。



「フランツ殿…。まさかそのようなお体とは…。」



「泣かないで…ヘルガ…。大丈夫だから…。」



ローズは(すわ)り込んでしまったヘルガを何とか(はげ)まそうとしました。



幼少(ようしょう)のころからフランツ殿は(わたし)によくしてくださったの…。一年半前にアズナヴール殿が()くなり、その上フランツ殿もいなくなっては、(わたし)(わたし)…。」



「アンドレアス…。何とかできないの…?」



ローズは(うった)えかけるようにアンドレアスに話しかけました。



(わたし)とてこの運命(うんめい)を変えることは不可能だ。それにあの者は死を受け入れている。ならばその意志(いし)尊重(そんちょう)することが本人にとっても一番よい選択(せんたく)だ。」



「あなたは(つめ)たい…。ヘルガを(はげ)ましてあげることもできない…。」



ローズが不満(ふまん)そうに言ったので、アンドレアスは少し申し訳なさそうにしました。



「正直に言ったのだが…、(わたし)退散(たいさん)したほうがよさそうだな。迷惑(めいわく)をかけた。」



そう言ってアンドレアスの(かげ)姿(すがた)を消しました。ローズはすすり泣くヘルガの(かた)()き、言いました。



「大丈夫…。(わたし)はヘルガのそばからいなくなることはない…。(わたし)たちは昔も今も未来も友だち…。だから力を落としてはいけない…。」



ヘルガは()れた(ひとみ)のままローズを見つめていましたが、やがて立ち上がりました。



「…そうね…。明日は大事な戦いだというのに、こんなことではだめね。ローズ、ありがとう。(はげ)ましてくれて。



それと…(うれ)しかったわ。そう、(わたし)たちはずっと友だち。これからもずっと…。」



ヘルガの言葉に、ローズはしっかりと(うなず)きました。



「宿に戻る…。みんなが心配するから…。」



「ええ、そうね。さあ、戻りましょう。」



二人は静かにその場を(はな)れました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーはオットー様を『(かく)()』にお送りした後、ヴォルフの宿に戻ってきました。入口にはレオンが斧槍(おのやり)(かたわ)らに置いて一人で座っていました。落ち着かない目をしています。



「お?レオンか。どうしたんだ?」



「ん?ああ、いや、どうも寝られる気がしねぇんだ…。」



「そうか…。明日は大事な戦いだもんな。」



「ローズとヘルガも散歩(さんぽ)しに行って、ついさっき帰ってきたぜ。あの二人は()()れたのか、清々(すがすが)しい顔で帰ってきたがな。…なあ、少し話でもしねぇか?」



「ああ、いいよ。」



オリバーとレオンは宿の入り口でしばらく話していました。オリバーは誰にも言わないという条件(じょうけん)を付けたうえで、レオンにオットー様のことを話しました。



「そうか、オットー様が…。確かに何となく最近、(はげ)しく()きこんだりされていたし、顔色(かおいろ)もよろしくないように見えたが…。」



「オットー様はご自分の死を受け入れる覚悟(かくご)ができている。普通の人間にはできないことだな。」



「ああ、そうだ、まさしくそうだ…。なあ、オリバー。俺は、オットー様と真逆(まぎゃく)の気持ちでいるんだ。」



真逆(まぎゃく)の?」



「そう、真逆(まぎゃく)の気持ちだ。俺は絶対にこの戦いで()()びてぇ。まだ死にたくねぇ。そう考えているんだ。



…正直、今オットー様の話を聞く、その瞬間(しゅんかん)までは生き延びるためだったら戦いの途中に全部投げ捨てて逃げ出してもいい、そう思っていた。お(めぇ)らとの(きずな)もすべて、な。



だが…、本来俺たちみたいに戦うべきじゃねぇオットー様でさえ覚悟(かくご)を決めて戦おうとしているんだ。俺がそんな気持ちでいてはみんなのためにも、自分のためにもならねぇ、今はそう思っている。…もちろん、俺は臆病者(おくびょうもの)だと自覚(じかく)してる。」



「いや、そんなことはないよ。人間として当然(とうぜん)感情(かんじょう)さ。」



「はは、やっぱりお(めぇ)はいいやつだよ。…だが、俺はさっき言ったことを曲げるつもりはねぇ。俺は絶対に生き延びる。だがそれは戦いから逃げて生き延びるんじゃねぇ。正面から敵にぶつかって、戦って戦いぬいて、敵をぶち破って生き残ってやるんだ。」



レオンの目は今はらんらんと(かがや)いています。そんなレオンを見て、オリバーは安心しました。



「ああ、そうだな。みんなで戦いぬいて生き残るんだ。」



「おう!…そう思うと、血がたぎってきたぜ!(ぎゃく)の意味で寝れねぇかもな。ようし、このありあまる気力(きりょく)無駄(むだ)にするわけにはいかねぇ。ちょっと(うら)相棒(あいぼう)を振りまわしてくるぜ。」



レオンはそう言って斧槍(おのやり)(かつ)ぎ、夜の(やみ)に消えて行きました。



「…これだからあいつは単細胞(たんさいぼう)でいけないぜ。」



オリバーは後ろから聞こえてきた声に振り向きました。



「マチルド…。起きてたのか?」



「お前らの話し声で目が覚めちまったんだよ。あ、心配すんなよ。他のやつらは全員寝てるから、オットー様のことは聞いてねぇよ。」



「おいおい、それはお前が聞いてたってことを白状(はくじょう)しているようなもんじゃないか。」



「あ、いっけね。」



オリバーとマチルドは顔を見合わせて笑いました。それがおさまると、マチルドは少しだけ()ずかしそうに言いました。



「あたい、いっつもレオンや他のやつらをからかってるけどよぅ…、本当はあたいだって(こわ)いんだ。何とか自分の気を(まぎ)らわすために強がってるだけなんだよぅ…。」



オリバーは苦笑いしました。



「おいおい、わざわざそんなこと言わなくたってよかったのに。お前はいつでも強気(つよき)でいると思っていたのに、知りたくないことを知ってしまったなぁ。」



マチルドはオリバーを(おどろ)きを(ふく)んだ目で見ました。



「ええっ?お前ならとっくにお見通(みとお)しだと思ったのに…。」



「何を言ってるんだよ、そんなことできるわけがないじゃないか。俺の仲間のことなんて、知らないことだらけだよ。」



(ああ、そう言えば、考えてみればこいつは(すく)いようもない朴念仁(ぼくねんじん)だった…)



マチルドはがっかりしたような表情を見せました。



「何だよぅ…、言って(そん)したぜ…。でもまぁ、レオンがあんなやる気出してるのに、からかってたあたいがふがいないようじゃ(しめ)しがつかないもんな。ようし、あたいも本気出すぜ!」



「はは、そうしてもらえると助かるよ。お前もレオンのところに行ってくるか?」



「まさか!戦いの前の夜にバカをうつされちゃかなわないからな。あたいはもう寝るぜー。お前は?」



「ああ、俺も寝るかな。じゃあ、また明日の朝にな。」



「あいよっ。じゃあな。」



オリバーは部屋に入ると、ベッドになだれ込み、すぐに眠ってしまいました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



奮起(ふんき)してヘルガがパワーアップしました。…本格的(ほんかくてき)実戦経験(じっせんけいけん)はまだないのですが。

決戦前夜に、オリバーはオットー様の覚悟と、オットー様自身の命が間もなく燃え尽きようとしていることを知りました。その事実は、他の仲間たちにも影響を与えることになったようです。



次話ではいよいよシャロンとの対決が始まります。相談の結果、オリバーたちは街の北側で、オットー様たちは東側で敵を待ち構えることにするようです。どうぞお楽しみに!



ちなみに、オットー様が病気を患っていたのは、具体的には二年前からです。それでも救国の戦いのときには病気がなりを潜めたということは、それだけオットー様の気が張り、同時に精神力も強かった、ということなのでしょうか。



では次話をお楽しみに!

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