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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 一章・王国の危機 「12.ヴォルフへの疑惑」

ダナラスフォルスの神殿でヴォルフとひと悶着あったオリバーたちは、ことの真相を確かめるべく、パカロンに戻り女王様たちに直接お話しを聞くことにしました。三日間かけてようやくオリバーたちはパカロンに到着しました。

オリバーたちは三日間旅を続け、パカロンへ到着しました。ハンスがオリバーに話しかけました。



「途中で一度も動死体(どうしたい)()わなかったのは(さいわ)いでしたね。」



「ああ。」



オリバーはダナラスフォルスでの一件以来、そっけない返答(へんとう)しかしません。ビアンカが(ふく)れてイザベルにこぼします。



「別に、依頼主(いらいぬし)はペーターなんだから、あんなバカヴォルフなんかの言うことなんか無視(むし)してナンジューマに残ってもよかったとは思うけどね。」



「とは言っても王家からの言葉ともあれば、(したが)わずにはいられないでしょう。」



「まあ、それはそうだけどさ…。」



その時、マチルドが背伸(せの)びをして言いました。



「あれ?城の門のところに人だかりが出来ているぜ?」



「というより、門に通じる大通(おおどおり)沿道(えんどう)に人がたくさん集まっていますね。」



ラルフも言いました。すると、愛馬(あいば)の上からアリスとエミリーが(おどろ)いたように言いました。



「む…?あれは…今、城に入って行くのはオットー様ではないか?」



「その後ろは…ヘルガ女王様です!」



ハンスとペーターも戸惑(とまど)いを(かく)せないようです。



「そんな…。じゃあ、オットー様たちはパカロン城にいなかったということ?」



「いったいどういうことなんでしょうか、先生?」



オリバーは(だま)っていましたが、そのまま歩き出しました。オリバーはつかつかとお城の門番(もんばん)のもとに歩み寄り、名乗りました。



「オリバー・ローゼンハインだ。ヘルガ女王様に謁見(えっけん)をお願いしたい。」



「え?ローゼンハイン様?どうして…。」



門番(もんばん)は不思議そうな顔をしましたが、オリバーたちを中に案内(あんない)してくれました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



大広間(おおひろま)にヘルガ女王様、オットー様、そしてシーガルン国王のセザール様がいらっしゃいました。オットー様はオリバーたちを見て(うれ)しそうになさいました。



「ローゼンハイン殿たちか。ちょうど良かった。今トリポートの視察(しさつ)から帰ったところだ。トリポートもようやく以前の活気(かっき)を取り戻しつつあるようだ…。」



「それにしても、お早いのですわね。もうナンジューマでの問題をご解決(かいけつ)なさったのですか?」



女王様は笑顔でおっしゃいました。



(やはり女王様たちは知らないのか…)



ややしばらくの沈黙(ちんもく)の後、オリバーが口を開きました。



「どうかご無礼(ぶれい)をお(ゆる)しください。…本日ここへ全員で参上(さんじょう)したのはお聞きしたいことがあったためです、女王様。」



「まあ、どうしたのですか?」



オリバーはダナラスフォルスでヴォルフに言われたことを話しました。ヘルガ女王様とオットー様は大変(おどろ)かれたようです。



「…(わたし)たちはその指示(しじ)を出してはおりません。何しろたった今七日間の視察(しさつ)から帰ってきたところですからね。」



「シャルパンティエ殿、あなたは何かご存知(ぞんじ)か?」



オットー様がセザール様にたずねられました。するとセザール様は少しバツの悪そうな顔をされました。



「まさかこんな(さわ)ぎになるとは…。ローゼンハイン殿、すまない。彼にナンジューマ地方へ行く許可(きょか)を出したのはこの(わたし)だ。」



「何ですって?」



「彼が(わたし)に言ってきたのだ。ローゼンハイン殿たちの手助けをしたい、と。城に残っていたのは(わたし)一人。あなたの力になるのなら問題はない、と思い、許可(きょか)を出したのだが…。」



「困りますな、シャルパンティエ殿。ヴォルフ・ザックスは()直属(ちょくぞく)家来(けらい)だ。」



オットー様は不満顔(ふまんがお)です。



「すまない、フランツ殿。」



「ですが、その主人の許可(きょか)もなく勝手に出て行ったヴォルフにも問題はありますわね。」



女王様も少し気分を(がい)されたような表情でおっしゃいました。セザール様は申し訳なさそうにしながらも首をかしげられました。



「しかし…疑問(ぎもん)が一つだけある…。ローゼンハイン殿、彼は数百人もの王国兵を連れていた、とおっしゃったな?」



「はい。」



「だがこの城を出てゆくとき、彼は兵など連れ出してはいないのだ。ここに残った王国兵の数もまったく変わっていない・・・。フランツ殿、彼には直属(ちょくぞく)の兵がいるのか?」



「いや、そのようなものはいない。第一、この度のことで王国兵は二割程度しか生き残らなかったのだ。百人単位での出撃(しゅつげき)など、すぐにわかってしまう。」



その瞬間、オリバーは顔面蒼白(がんめんそうはく)になりました。



「しまった、そういうことだったのか…。」



「どうしたのだ、ローゼンハイン殿。」



(わたし)たちがダナラスフォルスで遭遇(そうぐう)したシーガルン王国軍のように、ヴォルフも洗脳(せんのう)されている可能性があります。道理(どうり)で最近、ヴォルフの言動(げんどう)がおかしかったはずだ…。(おそ)らくは何度もあちこちの調査(ちょうさ)に向かった時に(おそ)われた可能性も…。」



「そんな…。(おそ)ろしい…。」



女王様は思わず両手で口元(くちもと)(おお)いました。



「大変失礼をいたしました。(わたし)たちはすぐにナンジューマに戻り、ヴォルフを止めてまいります!」



「すまない、ローゼンハイン殿。()の方からもお願いしたい。ヴォルフは()の大切な家臣(かしん)だ。」



「はっ、ではこれにて失礼いたします。」



オリバーたちは急いで大広間(おおひろま)を後にしました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



彼らが中庭(なかにわ)に出たとき、誰かが飛び出してきました。



「オリバー!うちの人が大変なんだって!?」



「リリーじゃないか。」



リリーが走ってお城の中から出てきたのです。



(わたし)もどうも最近変だと思ってたんだよ…。オリバー、(わたし)も連れて行ってくれないかい?」



「だが危険だぞ?ナンジューマには動死体(どうしたい)がうようよしている。」



「そんなことは承知(しょうち)の上さ!早く行ってあのバカ亭主(ていしゅ)を止めないと!」



「…よし、わかった。じゃあエドゥアルトに乗るんだ。」



「ありがとう。あんたは優しいね。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちはもときた道を引き返しました。



「ヴォルフさんを洗脳(せんのう)するなんて、シャロンって言うやつは随分(ずいぶん)と頭がいいんだな…。」



ハンスが困ったようにヨウフェイに言いました。



「そうヨ。あいつはヨウフェイたちを追いつめるために周りの人からどんどん殺していって精神的(せいしんてき)にヨウフェイたちを追いつめたヨ。」



「そもそも、どうしてヨウフェイたちはシャロンに(ねら)われたんだ?」



「兄さんがシャロンの仲間と戦って殺したことが原因(げんいん)ネ。兄さん、有名な戦士(せんし)だったヨ。それで街を燃やしつくそうとしたシャロンの仲間を倒したネ。それでシャロンに(うら)まれたヨ。」



逆恨(さかうら)み、ってやつか…。」



横からペーターも話に入ってきました。



「でも、もしヴォルフさんを洗脳(せんのう)したことが俺たちを追いつめるためだというんなら…、シャロンは俺たちを標的(ひょうてき)にした、ってことだよな。」



「…ヨウフェイたちが()き込んでしまったネ?」



ヨウフェイは少し申し訳なさそうに肩をすくめました。しかし、マチルドが元気に(はげ)ましました。



「何言ってるんだよ。どっちにしろあたいたちだってシャロンを倒さなきゃならないんだ。まとめてやっつけちまえばいいって。」



「…バカにしてはいいこというネ。」



「あーっ、こいつ!せっかく人が(はげ)ましてやったっていうのに!」



そんなやり取りをエドゥアルトの上から見ていたリリーが笑ってオリバーに言いました。



「面白い仲間が増えたんだね。」



「ああ。だが姉の方がちょっとした問題を抱えていてな…。何もしゃべれなくなる魔術(まじゅつ)をかけられているらしい。まだ俺たちのことを信用しきれていないみたいだし…。」



「そんなの問題にならないよ。時間をかけてお(たが)理解(りかい)できればいいんじゃないかい?」



「そう…そうだな。」



リリーの言葉に、少しオリバーの気持ちも楽になったようです。すると、ペーターが話しかけてきました。



「でも先生、洗脳(せんのう)されているとは言え、ヴォルフさんに武器を向けることは…。」



洗脳(せんのう)度合(どあ)いによるが…、もしかしたら尋問(じんもん)魔術(まじゅつ)をかければ何とかなるかもしれない。本人には相当な苦痛(くつう)(あた)えることにはなるが…。」



オリバーは心配そうにリリーに言いましたが、リリーは笑っています。



「そんなこと気にしないでいいよ。あんたたちに散々迷惑(さんざんめいわく)をかけてるんだからね、そのくらいの(ばつ)は受けてもらわないと。」



「そ、そうか…。」



サラリと言ってのけるリリーを見て、オリバーは引きつった笑いを浮かべました。すると、アリスが遠くに何かを見つけたようです。



「む…?オリバー、あれを見るのだ。(けむり)が立っているな。」



「…本当だ。アリスはよく目が()くな。」



「森の中で育ったから近くにしか目が(とど)かないとでも思っていたか?残念だな、()れらはよく木に登り遠くを(なが)めていたからな。」



アリスはオリバーに()められ、(ほこ)らしげな表情を()かべました。



「…それより、偵察(ていさつ)をする必要があるのではないですか?」



エミリーが提案(ていあん)しました。



「ああ、そうだな。ハンス、マチルド、また(たの)んでいいか?」



合点(がってん)だ!その()わり、何か美味(うま)いもの食わせろよ!」



「ヨウフェイも行くネ!今度から偵察(ていさつ)にはヨウフェイも連れて行くネ!」



「ああ、わかった。用心しろよ。」



「では行ってきます。」



ヨウフェイを(ふく)めた三人は(けむり)の立っている方向へ走っていきました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



すぐにヨウフェイが帰ってきました。



「大変だヨ!兵隊(へいたい)が村を(おそ)っているヨ!」



「何だって!?」



「今二人が兵隊と話してるネ。でもあの二人じゃ心もとないネ。オマエも行くヨ。」



「わかった。パトリック、みんなをまとめて連れてきてくれ。俺は先に行ってハンスたちと合流(ごうりゅう)する。」



「わかったよ。」



(わたし)も一緒に行くよ。兵隊のことなら、王宮勤(おうきゅうづと)めの(わたし)なら少しわかるかもしれないからね。」



リリーが言いました。



「わかった。エドゥアルト!行くぞ!」



オリバーはエドゥアルトにまたがると、全速力(ぜんそくりょく)で走らせました。エドゥアルトはオリバーとリリーを乗せ、風のように走りました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーが村に到着すると、ハンスとマチルドが兵隊と口論(こうろん)をしていました。



「この村の背後(はいご)の山に動死体(どうしたい)(ひそ)んでいるという情報が入ったのだ。火を(はな)つのが一番よい方法だ。」



「じゃあ残っていた村人を殺したのはなぜだ!」



ハンスが語気(ごき)(あら)くしています。



(けむり)にまかれて苦しむのも(こく)な話だ。どうせ助からないのなら、我々(われわれ)が手を下してやった方が早いだろう?」



兵士の言葉に、マチルドは(あき)れかえったようです。



見下(みさ)()てたやつらだな。」



「マチルドの言うとおりだな。」



「先生!リリーさんも!」



「あんたたち、これは誰に命令(めいれい)されたんだい?」



リリーが(けわ)しい表情で兵士たちに言いました。



「これは侍女長(じじょちょう)、リリー・ザックス様。命令を(くだ)したのはあなた様のご主人、ヴォルフ・ザックス隊長(たいちょう)殿であります。」



「あの人がこんなふざけた命令をね…ん?ちょっと待って…?」



「どうしたんだ、リリー?」



次の瞬間、リリーの顔が真っ青になりました。



「あんたは確かキンフィールド警備隊長(けいびたいちょう)のシュタインじゃないか!」



「キンフィールド警備隊長(けいびたいちょう)?どうしてそんなやつがこんなところにいるんだ?」



「問題はそこじゃないよ!シュタインはキンフィールドが襲撃(しゅうげき)された時に死んだはずなんだよ!それなのに…、どういうことなんだい?」



「それはこういうことですよ!」



兵士は突然マチルドに切りかかりました。



「うわっ!」



マチルドは素早(すばや)反応(はんのう)して()けましたが、腕を少し切られたようです。



「くそっ、戦うぞ!」



ハンスが(やり)を手に猛然(もうぜん)突撃(とつげき)していきます。マチルドも(うで)をかばいながらも短剣(たんけん)(かま)えて敵に向かっていきます。



「カースアタック!」



オリバーも魔術(まじゅつ)で二人を援護(えんご)します。



「今、加勢(かせい)するよ!」



()けつけたパトリックたちも応戦(おうせん)します。



(なさ)けないけど、こうなったら(わたし)は見ていることしかできないね。…あれ、あんたも戦わないのかい?」



リリーが横にいたヨウフェイに聞きました。



「まだ戦えないネ。でももう少しで戦えるようになるヨ。ヨウフェイも早く姉さんみたいに立派(りっぱ)に戦いたいネ。」



「姉さん…ああ、あれかい。」



チュンフェイが大太刀(おおたち)を振るって敵兵と戦っています。



「ところでオリバーが言っていたけど、あんたの姉さんオリバーたちのことを信用しきれていないんだって?そこのところ、妹の立場(たちば)から見てどうなんだい?」



ヨウフェイは笑って言いました。



「アイツが心配しているほどのことでもないネ。姉さんは()()ネ。確かにまだ(うたが)っているところはあるみたいだけど、最初に比べたらずっと心を(ゆる)しているヨ。まず、アイツらを見る目が変わってきているネ。」



「そうかい、じゃあ安心だね。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがて戦いは終わりました。イザベルが(きず)ついた仲間の手当てをしています。



「相手はある(しゅ)動死体(どうしたい)です。(きず)ついたまま戦うのは危険ですよ、マチルドさん。」



「そんなこと言ったってよぅ…。」



「まったく、動死体(どうしたい)だと思ったやつが動死体(どうしたい)じゃなくて、人間だと思ったやつが動死体(どうしたい)なんて…、わけがわからねぇぜ…。」



レオンが弱ったように言いました。



「でもさ、相手が動死体(どうしたい)だったってことはさ…。」



ビアンカが(しず)んだ表情で言うと、オリバーも続けました。



「…ああ、そうだ…。



リリー、冷静(れいせい)に聞いてほしいんだ。あの兵士がキンフィールドが(おそ)われたときに死んだ兵士だ、ということは、これまでの一連の動きは背後(はいご)にいる魔術師(まじゅつし)が兵士を洗脳(せんのう)して(あやつ)っているのではなく、死者(ししゃ)そのものに何らかの手を(くわ)えて(あやつ)っている可能性も出てくる。つまり…、」



「うちの亭主(ていしゅ)も死んでいる可能性がある、ってことだね。」



「残念だが…。もちろん、まだ確証(かくしょう)があるわけじゃないがな。」



「…こんなことになった時点である程度の(あきら)めはついてるよ。まずは本物(ほんもの)偽物(にせもの)かわからないうちの亭主(ていしゅ)を探すしかないよ。」



「ああ、そうだな。」

パカロンに戻ったオリバーたちは、ヴォルフがとても危険な状態になっていることを悟りました。動死体との戦いを終え、彼らの焦りはより一層なものとなってしまっています。



次話ではダナラスフォルスに戻ったオリバーたちに、ヴォルフが立ちはだかります。しかし、リリーはヴォルフに何か違和感を感じているようですが…?そして、ついに今回のお話の黒幕が登場します。どうぞお楽しみに!



ちなみにリリーは今回戦いに参加はしていませんが、オットー様やクララ様を護るために一通りの武術は身につけています。得意な武器は先に刀のような刃がついた槍です。なぎなたのようなものを想像していただけるといいかと思います。



では次話をお楽しみに!

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