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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 一章・王国の危機 「11.神殿の騒動」

はぐれ動死体の駆除のためにナンジューマ地方への旅を続けていたオリバーたちはようやく神殿都市ダナラスフォルスに到着しました。オリバーたちはいったん近くの森の中に身をひそめることにしました。

オリバー一行(いっこう)はナンジューマ地方の中心都市、ダナラスフォルスに到着しました。丘の上の神殿(しんでん)を中心に発展(はってん)した街でしたが、街は完全に破壊(はかい)されています。ハンスが悲しげに言いました。



「まるでシーガルンのハングリアみたいだ…。」



「そうか…、ハングリアもこんな感じになっちまってるのか…。」



ハンスの言葉にレオンも悲しそうな表情をしました。



「でもよう、動死体(どうしたい)の姿はどこにも見えないぜ?それどころか(ひと)()一人見えないなぁ。」



マチルドの言葉に、オリバーも(うなず)きました。



「ああ…、静か過ぎる。何だか(いや)予感(よかん)がするな。それに…街がこれほどまでに破壊(はかい)されているのに、あの神殿(しんでん)だけがまったく無傷(むきず)なのも不思議だ。」



オリバーは丘の上の神殿(しんでん)を見て言いました。



「…以前、()れらが王国兵(おうこくへい)と戦ったところだな。」



アリスが少し不安げに神殿(しんでん)を見上げて言いました。



「ああ。まずはあそこに行ってみようか。」



「じゃあ、あたいらがいつもみたいに(さぐ)ってきてやるよ。ハンス、行こうぜー。」



「あ、うん。」



「ヨウフェイも行くネ!」



「よし、わかった。三人とも気をつけろよ。よし、俺たちは森の中に身を(かく)すとしよう。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



三人が偵察(ていさつ)に行っている間、オリバーたちは森の中で待機(たいき)していました。ラルフがみんなの武器の手入れをしています。



「ビアンカさん、終わりましたよ。」



「おっ、ありがとー。」



「えっと、これは、チュンフェイちゃんのか。うおっ!?重い!チュンフェイちゃん、こんな重いものを持って戦ってるの?」



思わずチュンフェイの大きな(けん)を取り落としてしまったラルフを見て、レオンが笑いながら言いました。



「びっくりするよなぁ。俺だって初めて見た時は(おどろ)いたぜ。」



「すごいなぁ。尊敬(そんけい)しちゃうよ。」



ラルフがあまりに()めるのでチュンフェイは()れくさそうにしていました。が、みんなからの視線(しせん)(あわ)ててしかめっ(つら)をしました。



()れてる…。」



ローズがつぶやきました。すると、ビアンカがニヤニヤしながら言いました。



「なんだかさ、チュンフェイを見てると昔のローズを思い出すなぁ。師匠(ししょう)以外には全然素直(すなお)じゃなかったもんね。特にあたしには。」



「うるさい…。」



ローズは顔を真っ赤にするとスプーンを()りかざしてビアンカに()()りました。ビアンカはそれをヒラリとかわしました。



「あんたもまだまだだね。ちょっと頭に血が(のぼ)ると攻撃(こうげき)がワンパターンになるんだから。…それにしても、まだそのスプーンを使っているとはね。微笑(ほほえ)ましいですねぇー。」



「うるさい…。」



ローズは逃げるビアンカを追いかけます。ビアンカはアリスの後ろに隠れました。アリスは少しだけ顔をしかめて言いました。



「まったく、今から体力を使ってどうするのだ、お前たち。」



「あははっ、ごめんごめん。だってからかわれた時のローズがあまりにも可愛(かわい)くってさ。」



「ふむ、それはわかる気がするな…。…ところでオリバー、エドゥアルトに(えさ)(あた)えておいたぞ。」



「おお、ありがとう。助かるよ。」



(れい)には(およ)ばぬ。()れもお前に喜ばれると(うれ)しい。」



アリスが(うれ)しそうにすると、ローズは少しだけ(ほほ)(ふく)らませました。それを見て苦笑いしながらエミリーがオリバーに言いました。



「やっぱりエドゥアルトは素直(すなお)でしたよ。ただわたくしたちとは遊びたいだけなのですね。」



「じゃあ、グスタフにも(えさ)をやってくれた?」



ペーターがエミリーにたずねましたが、エミリーはハッとしたように言いました。



「あ…、(わす)れてた…。今、(えさ)をあげるよ、グスタフ。」



「グスタフ…。」



やっぱりグスタフは(さび)しそうな顔をしていました。



「あ、そうだ、イザベル。…イザベル?」



オリバーはイザベルに声をかけました。



「…え、あ、はい、何ですか、オリバーさん。」



「いや、大したことじゃないんだ。もしあの神殿(しんでん)で戦いが起こったら、いつものようにエミリーにアンヌに乗せてもらって戦ってくれ、ということを伝えたかったんだ。



…それより、何か思いつめているようだな。」



イザベルは真剣(しんけん)な表情でオリバーに言いました。



「ええ、少し考えたのですが…。(わたし)はちょっと魔術(まじゅつ)が使えるだけでいい気になって、ローズさんやモニカさんに(えら)そうに魔術(まじゅつ)を教えていました。」



「おいおい、そんなに自分を見下(みさ)げることはないよ。」



「そうですよ。イザベルさんは立派(りっぱ)魔術師(まじゅつし)です。」



オリバーとモニカの言葉にもイザベルは首を横に振りました。



「いえ、少なくとも(わたし)目標(もくひょう)にしている曾祖母(そうそぼ)には到底(とうてい)(およ)びません。」



曾祖母(そうそぼ)伝説(でんせつ)魔女(まじょ)、イザベル・ローランか…。」



「ええ。ですから(わたし)は、オリバーさんに魔術(まじょ)を教えてもらいたいのです。いえ、オリバーさんだけではない、モニカさんにもです。」



「え、ええっ?でも、(わたし)はそんな、教えられるような技術(ぎじゅつ)は持っていませんし、そんな、」



モニカはあたふたしていますが、オリバーはイザベルの言いたいことを理解(りかい)したようです。



「…(ちが)う、モニカ。つまり、こういうことだな?イザベルが俺やモニカから魔術(まじゅつ)を習う、同時に俺も二人から魔術(まじゅつ)を習う、そういうことだな?」



「なるほど、(のろ)いの魔術(まじゅつ)はオリバーしか使えないし、(こおり)魔術(まじゅつ)はモニカしか使えない。(どく)はイザベルの専門(せんもん)だしな。」



レオンが横から口を出してきました。



「ええ、そういうことになります。この前のことで、(わたし)はつくづく自分自身の無力(むりょく)さを知りました。ですから、自分に(あた)えられたチャンスは最大限(さいだいげん)()かそう、と…。」



「お(たが)いの能力(のうりょく)を高めあうということだな。うん、俺は賛成(さんせい)だ。モニカもいいか?」



「ええ、もちろんです。(わたし)もいろいろな魔術(まじゅつ)を身につけたいですから。」



すると、横で話を聞いていたビアンカがレオンに言いました。



「じゃあさ、師匠(ししょう)たちみたいに魔術(まじゅつ)を使わない人同士でもやらない?お互いに教えあったり、試合(しあい)をしたりするんだよ。それを見て的確(てきかく)な意見を出すのはレオンが得意でしょ?」



「うん、悪くねぇ考えだな。」



レオンは(うなず)きました。すると、エミリーも言いました。



(わたくし)は…短剣(たんけん)の使い方を覚えたいです。万が一アンヌと行動できなかったり、この前の時のように弓矢(ゆみや)がつかえなかったりした時にはわたくしは無力(むりょく)ですから。」



「うむ…そうだ。ローズはヨウフェイに短剣(たんけん)の使い方を教えるのだろう?もし手が()くようならば()れらにも伝授(でんじゅ)してはくれぬか?」



ローズはピクッと体をこわばらせました。そして少し困った表情でオリバーを見ました。オリバーは少し考え込みましたが、やがて口を開きました。



「イザベルの特訓(とっくん)でお前は最低限(さいていげん)魔術(まじゅつ)は身につけてくれた。この上、(さら)にレベルの高い(のろ)いや(こおり)(どく)魔術(まじゅつ)を覚えるのはかなりの負担(ふたん)になる。…そうだな、ローズ。魔術(まじゅつ)特訓(とっくん)は一旦休みにしよう。その代わりにヨウフェイ以外にも希望者(きぼうしゃ)短剣(たんけん)の使い方を教えてやってくれないか?」



ローズはコクンと(うなず)きました。



「でも、(のろ)いの魔術(まじゅつ)は続け…、」



「ん?何?」



「何でもない…。」



「僕も何か武器を習おうかな?」



今度はラルフが言い出しました。レオンが怪訝(けげん)そうな顔で言いました。



「でもお前は戦闘中(せんとうちゅう)でも武器の手入れや荷物の確保(かくほ)といった仕事があるだろ?」



「いえ、最低限(さいていげん)護身(ごしん)としてですよ。今までは僕には護衛(ごえい)がついていましたが、僕自身が武器を(あつか)えるようになったらその分多くの人を敵との戦いに回せるわけですよ。」



「うん、そうなるとこちらも助かるかな。いいと思うぞ。」



オリバーも賛成(さんせい)しました。



「でも、僕は素早(すばや)さがないから短剣(たんけん)(あつか)えないかなぁ…。」



「見たところ重たい(やり)を振り回せるような体格(たいかく)でもないしね。と、なるとやっぱり(けん)だね…。」



パトリックが言うと、ペーターが張り切って声を大きくしました。



「ようし!じゃあ俺が教えて、うぐっ!?」



しかし、そんなペーターの口を(ふさ)ぎ、ビアンカが名乗(なの)りを上げました。



「じゃああたしと一緒に訓練(くんれん)しようか、ラルフ。」



「よろしくお願いします、ビアンカさん。」



ラルフが頭を下げました。



「え、ええっ!?」



「それだけ信用度(しんようど)(ちが)う、って証拠(しょうこ)だね。」



ビアンカが得意げに言いました。



「そんな…。」



ペーターはガックリと(かた)を落としました。イザベルはそれを笑いながら見ていましたが、何かを見つけて言いました。



「あ、偵察(ていさつ)に行っていたみなさんが帰ってきたようですよ。」



ハンスたち三人が偵察(ていさつ)から帰ってきました。



「どうだった、三人とも。」



オリバーが問いかけましたが、ハンスが(きつね)につままれたような顔をして言いました。



「それが…おかしいんです。神殿内(しんでんない)には王国兵(おうこくへい)小隊(しょうたい)がいました。それも、リバー王国ではなく、シーガルン王国の。」



ハンスの言葉にレオンはびっくりしました。



「な、何だって?だがシーガルンの王国軍は動死体軍団(どうしたいぐんだん)の前に全滅(ぜんめつ)したはず…。見間違(みまちが)いじゃねぇのか?」



「いや、間違いない。あの紋章(もんしょう)はシーガルン王国軍のものだったね。あたいらが何度も(とうげ)(おそ)っていたから間違いないぜ。」



マチルドも不思議そうな表情をしています。



「バカが山賊(さんぞく)出身だったなんて知らなかったネ。」



「だから!お前はバカ、バカって!」



ヨウフェイがちゃちゃを入れるとマチルドが顔を真っ赤にしましたが、周りの空気を察知(さっち)してすぐに静かになりました。レオンは目を閉じて考え込んでいます。



「だがセザール陛下(へいか)もパカロンに亡命(ぼうめい)されているのに、ここに、こんなところにいるなんて不自然だ。」



「そう思って接触(せっしょく)せずに戻ってきたんです。どう思います、先生?」



「うん、お前たちはいい判断(はんだん)をしたな。ここは全員で行くとしよう。本当のシーガルン兵かどうかはレオンが確認してくれ。」



「ああ、わかった。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちはレオンを先頭にして丘の上の神殿(しんでん)を目指しました。入り口の重厚(じゅうこう)な門は開きっぱなしになっています。



「…行こう、レオン。」



「ああ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



中に入ると、オリバーたちは呼び止められました。



「止まれ!何者だ!」



オリバーが答える前に、レオンが声を張りました。



「パカロン城から来た!俺はハングリアの市民兵訓練場師範しみんへいくんれんじょうしはん、レオン・ブーランジェだ!」



「レオン先生!?お久しぶりです!」



「お前はヨハン!」



レオンはびっくりしたような表情で言いました。



「知っているのか?」



「ああ、俺の訓練場(くんれんじょう)生徒(せいと)だ。優秀(ゆうしゅう)だったから正規軍(せいきぐん)推薦(すいせん)してやった…。無事だったのか?」



「たまたま国境(こっきょう)警備(けいび)に出ていたので、(かろ)うじてこうしてここに来ることが出来ました。」



「そうか、よかったな!」



レオンは心から(うれ)しそうにしました。



「あの方がいなければ我々(われわれ)はシーガルンを脱出(だっしゅつ)することはできなかったでしょう…。」



「あの方…?誰だ?」



レオンが不思議そうな表情をした瞬間(しゅんかん)、シーガルン兵はニヤリと笑いました。



「さあ、誰でもいいじゃないですか。…それよりもね、その方が我々にこう言ったんです。



『ナンジューマの神殿(しんでん)に行け。そこに魔術師(まじゅつし)一団(いちだん)が来るはずだ。…お前たちはその者たちを殺せ』と!」



「レオン!危ない!」



突然レオンと話していた兵士が(けん)を振りかざしました。それを合図(あいず)に、オリバーたちの周りを兵士たちが取り囲みました。



「くそっ、(わな)か!(ゆる)せねぇ!」



レオンは斧槍(おのやり)(かま)えました。そして兵士たちに突進(とっしん)していきました。



「みんな、レオンに続け!この兵隊たちは洗脳(せんのう)されている!」



オリバーは仲間たちに指示を出すと、叫びました。



「カースアタック!」



オリバーの指先からでた黒い光はそこにいた兵士に当たりました。兵士は声もなく倒れました。



(瞬殺(しゅんさつ)…?人間相手なら普通少しは苦しむはずだが…)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ローズもいつもとは違う事態(じたい)に気づきました。いつも使っているオリバーの魔力(まりょく)が込められた(のろ)いの短剣(たんけん)威力(いりょく)はものすごいものですが、今日はいつも以上にその効果(こうか)が現れるのです。



「何か…変…。」



「ローズ、何やってるんだよ!早くこっちも手伝ってくれよ!」



マチルドの声を聞いてローズは急いでそちらへ走っていきました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一方でイザベルは別の違和感(いわかん)(いだ)いていました。エミリーがイザベルにたずねました。



「どうしたのですか、イザベルさん。」



「兵士によって…特性(とくせい)が違うようなんです。」



「どういうことですか?」



(どく)魔術(まじゅつ)異常(いじょう)なまでに()く者もあれば、まったく()かない者もある。(ほのお)魔術(まじゅつ)も一緒です。」



「そうなのですか?(わたくし)にはよくわからないのですが…。」



()の場合は体に刺さるので一緒なのかもしれませんね。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



やがて兵士たちは全滅(ぜんめつ)しました。レオンが複雑(ふくざつ)心境(しんきょう)をオリバーに語りました。



「いくら洗脳(せんのう)されて武器を向けてくるとは言え、自分が手塩(てしお)にかけて育てたやつらを殺すというのはやりきれねぇな…。」



「…運が悪かったとしか言えないのかな、あんたも彼らも。」



オリバーがいたわるようにレオンの肩を叩いた時、突然大声が聞こえました。



「お、おい!お前ら、一体何をしたんだ!」



声のした方を振り返ると、神殿(しんでん)の門のところにヴォルフがいました。数百人の王国兵を(ひき)いているようです。



「これは…友好国(ゆうこうこく)であるシーガルン王国の正規兵(せいきへい)じゃないか!お前ら、まさか…、」



ヴォルフの後ろの兵士たちもざわついています。オリバーは声を張り上げました。



「聞け!後ろの兵士たちもだ!…この兵士たちは洗脳(せんのう)されていたんだ。それで俺たちを(おそ)ってきたんだ。」



「そんな理由なんていくらでも後付(あとづ)けできる。」



ヴォルフは厳しい表情のままです。オリバーは不審(ふしん)そうにヴォルフを見てたずねました。



「それより、ヴォルフはどうしてここに来たんだ?あんた自身のダナラスフォルスの調査(ちょうさ)はもうとっくに終わったはずだろう?」



「ナンジューマに残っている動死体(どうしたい)討伐(とうばつ)だ。パカロン城から許可(きょか)も下りている。」



そう言ってヴォルフは何かが書かれている紙を高くかざしました。



「何だって!?俺たちだけじゃ不足(ふそく)だって言うんですか!?」



ペーターが思わず声をあげました。



「あるいはそういうことかもしれないな。とにかくここの動死体(どうしたい)討伐(とうばつ)は俺たちの仕事だ。お前たちの用事はここにはない。」



「何だとっ!?俺は、俺は!手塩(てしお)にかけた弟子(でし)が!」



ヴォルフの言葉にレオンは顔を真っ赤にしました。



「レオン!待て!」



オリバーが引き止めましたが、レオンは我慢(がまん)ならないようです。



「これが待てるか!あいつの言ってやがることはメチャクチャだ!お(めぇ)想像(そうぞう)してみろよ!ハンスやペーターが洗脳(せんのう)されてお前に武器をふるってくるんだぞ!?それをやつは、」



「レオン!」



オリバーの真剣(しんけん)な目に、レオンは口をつぐまずにはいられなくなりました。



「…どういう情勢(じょうせい)変化(へんか)かはわからないが、俺たちはもうここに用はないようだ。(さいわ)いにも兵士の数も多いようだ。動死体討伐(どうしたいとうばつ)は今のところヴォルフに任せて大丈夫だろう。…みんな、行こう。」



「待ってくださいオリバーさん!あなたも屈辱(くつじょく)を感じていないわけはないでしょう!それでいて尻尾(しっぽ)()いてどこへ行くというのですか!?」



エミリーが(いか)りをあらわにしてオリバーに問いかけました。しかし、それを聞いて振り向いたオリバーの顔色もまた真っ赤でした。



「…パカロン城だ!ヘルガ女王様に直接(ちょくせつ)お話を(うかが)いに行く!それでいいだろう!」



オリバーはそう言い(はな)つとクルッと向きを変え、門から外へ出て行きました。ローズがポツリと言いました。



「一番(おこ)っているのは…先生…。」



「そのようだね。エドゥアルトも連れて行くのを(わす)れているね。ローズ、()いていってあげるんだ。」



パトリックの言葉にローズはコクンと(うなず)きました。そしてエドゥアルトを()いて門から出て行きました。他の仲間たちもそれに続いて出て行きました。

神殿で洗脳されたシーガルン王国兵の攻撃を受けたオリバーたちですが、それ以上に彼らに衝撃を与えたのはヴォルフの登場とその発言でした。オリバーは激怒しながらも一度パカロンへ戻ることを決めます。



次話ではオリバーたちがパカロンに到着し、女王様たちと謁見します。しかし女王様もオットー様も、ヴォルフが兵を率いて出発したことなど知りませんでした。はたして事の真相とは…?どうぞお楽しみに!



ちなみにレオンは自分の訓練場で特に優秀な生徒は正規軍に推薦していました。今回レオンに襲いかかってきたヨハンは、レオンが三番目に正規軍に推薦した生徒で、正規軍の中でもめまぐるしく才能を発揮し、一年あまりで分隊長に出世するほどの実力の持ち主でした。そのためレオンが受けた衝撃はとても大きかったのです。



では次話をお楽しみに!

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