表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒の魔女  作者: kuma383
11/50

~暗黒の魔女~ 一章・王国の危機 「10.人喰い動死体」

突然の動死体によるオーベルク急襲を何とか切り抜けたオリバーたちは、翌日ナンジューマ地方への旅を開始しました。ナンジューマには凶暴なはぐれ動死体たちが残されています。

曇空(くもりぞら)の下、オリバー一行はリバー王国南部のナンジューマ地方を中心都市のダナラスフォルスに向けて歩いていました。パトリックやレオンたちもすっかり元気を取り戻しています。



「エミリーも大丈夫か?」



オリバーはエミリーにたずねました。エミリーは笑って言いました。



「ええ、心配には(およ)びません。とても気分がいいですよ。」



「なら安心だ。」



「ところでオリバー…。なぜエドゥアルトに乗らぬのだ?」



アリスが怪訝(けげん)そうにオリバーに言いました。オリバーはエドゥアルトを()いて歩いているのです。



「いや、今回はペーターのグスタフも(ふく)めて馬がたくさん増えただろ?本当はみんな馬に乗せていきたいところだけど、(あま)る仲間も出てくるからさ。そいつらに申し訳ないからとりあえず俺は本当に必要なとき以外は乗らないようにしよう、って思ったんだ。あ、別にアリスたちは前から乗っていたから気にしなくても大丈夫だぞ?」



「まったく、もったいない話だよ。だいたいエドゥアルトは君とローズ以外には全然なつかないじゃないか。」



パトリックは苦笑いしています。



「はは、いったいどういうわけなんだろうな。」



パトリックやアリスたちはオリバーに(たの)んでエドゥアルトに乗せてもらったのですが、オリバーとローズ以外の仲間が乗るとエドゥアルトは(あば)れ出すのです。一番動物の(あつか)いに()れているはずのエミリーでさえ苦戦(くせん)していました。ペーターに(いた)っては()()とされた挙句(あげく)()みつけられそうになりました。



「なついていないわけではないと思うのです。実際、(わたくし)たちが背中に乗るまではおとなしく乗せてくれます。」



「うむ…。このようなことを言うのは悪いが、オリバーはまだ馬の(あつか)いに()れているわけではない。だからエドゥアルトは気を(つか)っているのかもしれぬな。」



「なるほど。(ぎゃく)に馬の(あつか)いに()れている(わたし)たちとはむしろじゃれているようなつもりでいるのかもしれないね。」



パトリックたちは納得(なっとく)したようですが、ペーターは不満顔(ふまんがお)です。



「だとしても、俺にあそこまでする必要はないんじゃ…。」



「…貴様(きさま)はただ(たん)になめられているだけかもしれぬ。」



アリスの言葉に、ペーターはショックを受けたようです。



「そ、そんなぁ…。」



「とにかく、アンヌたちとも仲良くやっているようです。」



「そうか、それなら安心だ。」



エミリーの言葉にオリバーはホッとしたようですが、アリスが小さな声で付け足しました。



「…ペーターのグスタフは馬たちの中でも少々小バカにされているようだがな。」



「ええーっ!?そうなのか、グスタフ?」



背中の主人からの問いかけにグスタフは何も言いませんでしたが、その表情はどこか(さび)しげでした。ローズがそれを見てつぶやきました。



「…主人にそっくり…。」



「うっ、うるさい!なんだよ、だいたいローズはさぁ!…!」



ローズのそばで(わめ)()らすペーターを見て笑いながら、ビアンカがイザベルに言いました。



「それにしても、(おそ)いねー。」



「何がですか?」



「マチルドとハンスだよ。この先にある村の偵察(ていさつ)に行ってもう結構時間が()つよ?」



「そう言われてみれば…確かにそうですね。」



「あの二人に(かぎ)って、大丈夫だとは思うけど…。どう思う、師匠(ししょう)。」



ビアンカに問いかけられ、オリバーは少し心配そうな顔をしました。



「何とも言えないな…。実際、この辺りにはまだはぐれ動死体(どうしたい)がかなりいる可能性が高い。もしかしたらそいつらと遭遇(そうぐう)した可能性もあるな…。」



「ええっ?だとしたら、ハンスは動死体(どうしたい)には不利(ふり)(やり)だし、マチルドもイザベルに魔術(まじゅつ)をかけてもらってないからこてでも戦えない。マズい状況(じょうきょう)だね…。」



「心配ないヨ。バカが帰ってきたネ。」



先頭を歩いていたヨウフェイが指差(ゆびさ)した方を見ると、マチルドがこちらへ走ってくるのが見えました。ハンスの姿(すがた)は見えません。



「マチルド!どうしたんだ!」



マチルドは息を切らしながら言いました。



「はあ、はあ…。この先の村が動死体(どうしたい)(おそ)われてる。」



(いや)予感(よかん)ほど的中(てきちゅう)しちまうもんだな…。」



「ハンスが村の(そば)の森に潜伏(せんぷく)してる。あたいがお前らを呼びにきた、ってわけ。」



「わかった、ご苦労さん。みんな、急ぐぞ!」



オリバーたちは(あゆ)みを速めました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ハンスが息を殺して村の様子を(うかが)っていました。オリバーが後ろから声をかけました。



「ハンス、村の様子はどうだ?」



「あ、先生。…おぞましい光景(こうけい)です。動死体(どうしたい)たちは手持(ても)ちの武器で村人を殺した後、その死体をむさぼり()らっています。」



「何だって?死体を()動死体(どうしたい)なんて聞いたことないぞ?」



オリバーはびっくりしましたが、ヨウフェイは違うようです。



「ヨウフェイたちの国の動く死体は死人を食べてたヨ。」



「つまり、あの動死体(どうしたい)たちを(あやつ)ってるのはやっぱりシャロンだっていう可能性がより高くなったね。」



ビアンカが顔をしかめて言いました。



「なぜそうさせるのかはわからないが…まずは目の前の動死体(どうしたい)たちを倒すことが先決(せんけつ)だ。ハンス、動死体(どうしたい)の数は?」



「二十体前後といったところでしょうか?」



「大した数ではないな。ようし、わかった、とっとと片づけてしまおう。イザベル、ローズとマチルドにいつもの魔術(まじゅつ)をかけてやってくれ。ラルフとヨウフェイはここで待機(たいき)だ。あの手の動死体(どうしたい)相手は危険すぎるからな。」



「しょうがないネ。またよろしくヨ。」



ヨウフェイは残念そうな顔をした後ラルフに声をかけました。



「じゃあまた僕の手伝いを(たの)むよ。」



「それと、エドゥアルトとグスタフも(あず)かっていてくれ。…いつものようにパトリック、アリス、エミリーはそれぞれ馬で突撃(とつげき)だ。モニカはパトリックと一緒に行動する。他はいつものようにそれぞれの武器で戦う。いいな?」



仲間たちは一斉(いっせい)(うなず)きました。



「よし、(わたし)先陣(せんじん)をきろう。」



パトリックはそう言うと、すぐさまフランソワを走らせて村の中に突撃(とつげき)しました。



「ファイアーストーム!」



モニカが叫ぶと、火柱(ひばしら)が立ち上りました。それを見てアリスとエミリーも気持ちを高ぶらせたようです。



()れらも負けてはおれぬ!()くぞ、エミリー!」



「はいっ、お姉さま!」



アリスとエミリーも(ほのお)()(つが)え、村へ突入(とつにゅう)していきました。



「俺たちも(おく)れるわけにはいかねぇな!行くぞ!」



レオンとチュンフェイを先頭に、他の仲間たちも村へと走っていきました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ところが、異変(いへん)はすぐに起きました。フランソワの上でモニカが叫んでいます。



「イザベルさん!(ほのお)魔術(まじゅつ)()きません!」



「何を言っているんですか。集中力(しゅうちゅうりょく)が足りないのでしょう!ファイアーストーム!」



イザベルは動死体(どうしたい)に向けて(ほのお)魔術(まじゅつ)(とな)えました。しかし、いつもは効果(こうか)てき(めん)なはずの(ほのお)魔術(まじゅつ)がまったく()いていないのです。



「そ、そんな!」



イザベルは顔を真っ青にしています。



「だから言ったじゃないですか!(わたし)を信用してくださいよ!」



()れらの(ほのお)()()かぬ!」



「いったいどうして!?」



アリスとエミリーも戸惑(とまど)っています。オリバーがすぐさま指示をだしました。



混乱(こんらん)するな!イザベル!アリス!エミリー!安全な場所まで退却(たいきゃく)しろ!この数なら俺たちだけでも足りる!」



「しかし、オリバーさん、」



その時、ハンスが叫びました。



「イザベルさん!危ない!」



動死体(どうしたい)が投げた(やり)がイザベルの方に飛んできました。イザベルは放心状態(ほうしんじょうたい)で動くことが出来ません。



「エクスクルージョン!」



オリバーが叫ぶと、(やり)軌道(きどう)がそれました。



「イザベル、平常心(へいじょうしん)を失ってるじゃないか!ペーター、イザベルを安全な場所まで連れて行ってくれ!」



「わかりました!」



「アリスもエミリーも早く戻れ!」



「ううむ…無念(むねん)だ…。」



「残念です…。」



アリスとエミリーが退却(たいきゃく)したのと()()わりに、イザベルを連れて行ったペーターがグスタフに乗って飛び出してきました。



「ペーター!剣士(けんし)のお前が馬で戦うのは…、」



「大丈夫です!見てください、ラルフさんが急いでこしらえてくれたんです!」



ペーターは(けん)に長い(ぼう)を取り付けた急造(きゅうぞう)(やり)を持っていました。



「見ていてください、俺とグスタフの相性(あいしょう)を!」



ペーターはグスタフを(あやつ)動死体(どうしたい)の中に猛然(もうぜん)突進(とっしん)していきました。



((たの)もしくなったな…)



オリバーは思わず顔をほころばせました。その瞬間、レオンの大声が飛んできました。



「オリバー!ボーっとしてる場合じゃねぇぞ!」



「ああ、大丈夫だ。行くぞ!」



オリバーも(けん)を構えなおすと、動死体(どうしたい)に突っ込んでいきました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちの地道(じみち)攻撃(こうげき)により、動死体(どうしたい)はようやく全滅(ぜんめつ)しました。森の中で待機(たいき)していたラルフたちも出て来ました。



「どうしたのさ、イザベル。落ち込んじゃって。」



ビアンカが一番最後にうつむいて出てきたイザベルに声をかけました。



「いえ…。冷静(れいせい)でいなければならない局面(きょくめん)()(みだ)してしまった自分があまりにも(なさ)けなくて…。」



「しょうがないよ。(ほのお)魔術(まじゅつ)通用(つうよう)しない動死体(どうしたい)なんて初めてだもんね。ね、師匠(ししょう)。」



オリバーはビアンカからの問いかけには答えません。じっと倒した動死体(どうしたい)を見ています。



「…どうしたの、師匠(ししょう)。」



「いや…。」



オリバーはおもむろに(けん)()くと、動死体(どうしたい)肉塊(にくかい)の一部を切り取りました。マチルドは大げさに顔をしかめました。



「うえっ、気持ち悪い…。」



「何か気になることでもあるのか?」



レオンが心配そうに問いかけました。オリバーはまだじっと考えていましたが、やがて口を開きました。



「…こいつは動死体(どうしたい)じゃないな。」



予想外(よそうがい)のオリバーの声に、ハンスはびっくりしました。



「いったいどういうことですか?」



「普通、動死体(どうしたい)というものは死体に魔術(まじゅつ)をかけて動かすものだ。だがこいつはどうも違うようだ…。一年半前に何度か戦った合成魔獣(ごうせいまじゅう)(おぼ)えているか?」



ハンスとビアンカが(うなず)きました。



「えっと、北の樹海(じゅかい)調(しら)べている時に(やみ)魔術師(まじゅつし)のプレグーがけしかけてきた、たき()魔獣(まじゅう)がそうでしたよね?」



「確か、オーベルクの街も(おそ)ってきたよね。燃える馬みたいなやつ。キンフィールド城の魔獣兵(まじゅうへい)もそうでしょ?」



「そうだ。こいつはそれに近いものなのかもしれない。(ほのお)魔術(まじゅつ)通用(つうよう)しなかったのも、きっとこいつが本物の動死体(どうしたい)ではないからだ。」



「わざわざどうしてこんなものを作り出したんだ?ただ(おそ)わせるだけなら普通の動死体(どうしたい)でも問題はねぇと思うが…。」



レオンが首をかしげました。



「こいつらが死体を()っていた、という普通の動死体(どうしたい)からすると不可解(ふかかい)な行動に何らかの手がかりがあるのかもしれないが…現時点(げんじてん)ではよくわからないな。古代(こだい)文献(ぶんけん)にもこんなような記述はなかったしな。まあ、おいおいわかってくることかもしれない。まずはみんな、お疲れさん。」



オリバーは仲間たちを(ねぎら)いました。



「でも、ここから先はいつどこで敵と遭遇(そうぐう)するかわかりませんね。」



ラルフが少し緊張(きんちょう)した様子で言いました。



「ああ、ラルフの言うとおりだ。それに、相手が動死体(どうしたい)なのか、それともこの新しい個体(こたい)なのか。戦ってみなければわからない。ここからは本当に大変になる。覚悟(かくご)しておいてくれ。」

今回戦闘したものは、詳細は分からないとはいえ、動死体ではなく合成魔獣らしいことが判明しました。はたして誰がこの合成魔獣をつくりだし、あやつっているのでしょうか…?



次話ではオリバーたちがナンジューマ地方の中心都市、ダナラスフォルスに到着します。そしてそこにある大神殿で一騒動起こるようですが…?どうぞお楽しみに!



ちなみにペーターのグスタフは、前リバー王国衛兵隊長のマティアスからもらったものですが、マティアスは前の愛馬が死んでしまったため、グスタフに乗り始めたばかりでした。そのためグスタフはカトリーヌやアンヌよりもずっと若いため、どうも馬たちの間で軽視されているのです。



では次話をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ