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暗黒の魔女  作者: kuma383
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~暗黒の魔女~ 一章・王国の危機 「9.留守中の襲撃」

オリバーたちはパカロンでの女王様たちとの謁見を済ませ、オーベルクに帰る途中です。しかし、オーベルクでは事件が起こっているようです。

オリバーたちは馬を走らせ、夕方頃にオーベルクの近くまでやってきました。



「ここまで来ればもうすぐですね!」



ペーターがオリバーに声をかけました。



「ああ。ダナラスフォルスへは明日の朝出発するとしよう。お前たちには強行軍(きょうこうぐん)になってしまってすまないが…。」



オリバーは申し訳なさそうに言いました。



「それは先生も一緒…。」



「ローズのいうとおりですよ。先生、全然休む(ひま)がないじゃないですか。たまには他の人にも任せてゆっくり休んでくださいよ。」



「はは、今のところは俺が動かなければならないことばかり起こっているからな。少し落ち着いたらそうさせてもらうさ。」



その時です、前の方から走ってくる多くの人たちが見えました。まるで逃げているようです。



「おや?あの先頭を走っているのは、確か(いち)で見た…、」



その青年(せいねん)に、オリバーは見覚(みおぼ)えがありました。



「ああっ、ローゼンハイン様!た、助けてください!」



先頭を走っていた青年がオリバーに助けを求めました。



「確かロジェと言ったな!どうしたんだ!」



「何だかわからないけど、武装(ぶそう)した動く死体がオーベルクを(おそ)ってきたんです!」



「何だって!?動死体(どうしたい)軍団(ぐんだん)がついにオーベルクにも!?」



ペーターはびっくりしました。オリバーはロジェに言いました。



「ロジェ、あの馬の後ろに乗って案内してくれ。大丈夫、俺が命の保障(ほしょう)はする。」



「は、はい!」



オリバーはロジェがグスタフに乗ったことを確認すると、ペーターに声をかけました。



「行くぞ、ペーター!」



「はい!」



二頭の馬はオーベルクに向けて走り出しました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



一方、オリバーの仲間たちはイザベルの薬屋(くすりや)の地下にある『(かく)()』に集合(しゅうごう)していました。パトリックがみんなに指示を出しています。



動死体(どうしたい)との戦い方は覚えているね?じゃあみんな、行こう!」



イザベルはマチルドの腕に魔術(まじゅつ)をかけました。



「うっ…。これは何回やっても()れないや。よし、(おく)れをとるわけにはいかないからな、イザベル、行こうぜ!」



「はい。ラルフさん、ヨウフェイさん、後をよろしく(たの)みます。」



「わっかりました!」



「心配無用(むよう)ネ!」



イザベルは二人に笑いかけると、マチルドとともに外へ出て行きました。



「…でも、チュンフェイちゃんは戦いに参加して大丈夫なのかな?」



ラルフは少し心配そうに言いましたが、チュンフェイは笑って言いました。



「それも心配無用(むよう)ネ。姉さんとってもとっても強いヨ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



レオンが斧槍(おのやり)を振り回して動死体(どうしたい)()()きました。



「うおおおおっ!…くそっ、倒しても倒しても()いてきやがる!」



その時、フランソワの上からパトリックが叫びました。



「レオン!後ろに気をつけるんだ!」



「ん?うわっ!」



動死体(どうしたい)(けん)を振りかざしてレオンに(おそ)()かりました。しかし、レオンが身構(みがま)えた瞬間(しゅんかん)動死体(どうしたい)の体が真っ二つに()かれました。



「チュンフェイ!」



チュンフェイが大太刀(おおたち)動死体(どうしたい)()()いたのです。



(おどろ)いたな、そんな大きな(けん)(あつか)えるなんて!」



チュンフェイはレオンのことなど気にも()めず、すぐに別の動死体(どうしたい)()りかかって行きました。あまりのことにあっけにとられているレオンに、ビアンカが声をかけました。



「レオン!休んでる(ひま)なんてないんだよっ!」



「お、おう!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



モニカがパトリックの後ろで精神(せいしん)集中(しゅうちゅう)させています。



冷静(れいせい)(たの)むよ、モニカ。」



「今日のイザベルさんの特訓(とっくん)で、何かをつかんだ気がするんです。…行きます、ファイアーストーム!」



モニカが大声で(とな)えました。ものすごく大きな火柱(ひばしら)が立ち上り、動死体(どうしたい)の体を()()くしました。



アリスは顔をしかめています。



「うむ…(くさ)った死体が焼けるにおい、というものはやはり強烈(きょうれつ)だ…。エミリー、()れらも(おく)れをとるわけにはゆかぬぞ!」



「はいっ、お姉さま!」



アリスとエミリーはそれぞれの愛馬(あいば)をたくみに(あやつ)り、動死体(どうしたい)(ほのお)()()ち込んでいきます。



「さっさとやられて神様のところに行っちまいな!」



マチルドもこてで動死体(どうしたい)の頭を打ち(くだ)いてゆきます。



「ビアンカ、次は左へ!パトリックさんたちはそのまま突っ込んでください!」



ハンスは自分も戦いながら、的確(てきかく)に仲間たちに指示を与えます。



「イザベルさん!五体ほど向かいました!」



「わかりました。ファイアーストーム!」



防御網(ぼうぎょもう)(もぐ)()けてきた動死体(どうしたい)は後ろの方で()(かま)えているイザベルが焼き尽くします。彼らは連携(れんけい)して果敢(かかん)動死体(どうしたい)に向かって行きます。しかし、数の差により少しずつ苦しくなってきました。



「あーあ、もうけん(くさ)った肉がくっついて切れなくなっちゃった…。悪いけど一旦(いったん)退却(たいきゃく)させて!」



ビアンカが顔をしかめながら戻ってきました。



「くそっ、五回()まれちまった!あたいも退()く!」



マチルドも(くや)しそうに帰ってきました。



()れの()も残り少なくなってきた…。エミリー、残りの()(わた)す。()れは『(かく)()』に戻って()補充(ほじゅう)する!」



「はいっ、お姉さま!」



アリスはカトリーヌを(あやつ)って戻ってくると、ビアンカとマチルドに声をかけました。



「ビアンカ!マチルド!乗るのだ!『(かく)()』まで乗せて行ってやろう!お前たちなら軽いから二人とも乗せられる!」



三人はカトリーヌに乗り、『(かく)()』へ戻りました。



「イザベルさん、そろそろ(きび)しくなってきました。一旦(いったん)市街地(しがいち)まで退()いて体勢(たいせい)を立て直しましょうか?」



ハンスがイザベルに提案(ていあん)しましたが、イザベルは首を横に振りました。



「いえ、市街地(しがいち)動死体(どうしたい)を入れるのは危険です。…(わたし)が前に出ます。」



「それは危険すぎます。イザベルさんは後ろで援護(えんご)していてもらわないと…。」



「しかし、人が少なすぎます。今、動死体(どうしたい)の真ん中で戦っているのはパトリックさん、モニカさん、レオンさん、チュンフェイさんだけです。」



「…じゃあ俺が突撃(とつげき)します。イザベルさん、指示をお願いします。」



ハンスはそう言って(やり)(かま)えると、動死体(どうしたい)の中へ突撃(とつげき)していきました。



「…あなたが突撃(とつげき)する、ということは、(わたし)は後ろで指示(しじ)をするしかない、ということですね。仕方ありません。パトリックさん、右です!チュンフェイさんは左へ!…ファイアーストーム!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



アリスたちは『(かく)()』までカトリーヌを走らせました。



「アリスさん!ビアンカさん!」



ラルフが中から飛び出してきました。



「ラルフ!大至急(だいしきゅう)(けん)()(あじ)を戻して!それと(ほのお)()補充(ほじゅう)を!」



「わっかりました!ヨウフェイちゃん、()準備(じゅんび)を!」



「わかったヨ!…オマエ、腕大丈夫ネ?」



ヨウフェイはマチルドの腕を見て言いました。



「きれいな水で(あら)って、あとは安静(あんせい)にしておけば大丈夫だ。あたいにもそのうち(どく)耐性(たいせい)がついちまうんじゃないかな?」



ラルフはヨウフェイの手伝いもあってあっという間にビアンカの(けん)の手入れを終え、(ほのお)()も用意しました。



「出来ましたよ、ビアンカさん!」



「ありがとう!仕事が早いね!アリスも準備できた?」



「うむ、大丈夫だ。行くとしよう。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



市街地(しがいち)の外では、動死体(どうしたい)との戦闘(せんとう)が続いていました。



「くそっ、俺の斧槍(おのやり)も切れなくなっちまった!」



レオンに続いて、チュンフェイも退却(たいきゃく)してきました。



「エミリーさん!(わたし)を後ろに乗せてください!」



イザベルがエミリーに(たの)みましたが、エミリーは了承(りょうしょう)しませんでした。



「ダメです!イザベルさんはそこで指示をしていただかないと!」



「もうすぐアリスたちが帰ってくるはずだよ!もう少しだけ()えるんだ!」



パトリックも言いました。イザベルは自分自身を()がゆく思いました。



(皆さんは武器を持って戦えるのに、(わたし)魔術(まじゅつ)でのサポートしかできない…)



「自分のことを(なげ)いているのか?でもイザベルにはイザベルにしか出来ないことがたくさんあるだろう?」



突然イザベルの背後(はいご)で声がしました。ハンスが(うれ)しそうに言いました。



「あっ!先生!」



「帰ってきたんだね!」



パトリックも喜んでいます。



「ロジェ!エドゥアルトとグスタフを安全な所まで連れて行ってくれ!ペーター、行くぞ!」



「はいっ!」



オリバーとペーターは(けん)を手に動死体(どうしたい)に向かってゆきました。



「イザベル…。魔術(まじゅつ)…。」



ローズがイザベルの前に自分の腕を出しました。



「あ、はい!」



「っ…!これは、イザベルにしか、出来ないこと…。」



ローズはそう言うと手にこてをはめ、動死体(どうしたい)に向かってゆきました。それとほぼ同時に、(ちが)う声も聞こえてきました。



「今戻ったよっ!」



「エミリー!()補充(ほじゅう)を持ってきた!」



「ありがとうございます、お姉さま!」



ビアンカとアリスも戻ってきたのです。これでハンスたちも(いきお)いを取り戻しました。



「ようし、あと少しだ!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



オリバーたちは動死体(どうしたい)との戦闘(せんとう)を続けました。レオンとチュンフェイもすぐに武器の手入れを終えて戻ってきました。そしてようやく全ての動死体(どうしたい)を倒すことが出来ました。



「ふあっ、やっと終わった…。」



ハンスは疲れからか、思わず地面に座り込んでしまいました。モニカも魔術(まじゅつ)を使い続けたせいか、フランソワの上でぐったりしています。



「あのお二人は特によく頑張ってくれました…。」



「よくやったな、二人とも。」



オリバーは満足そうに言いました。そこへ、ロジェが二頭の馬を()いてきました。パトリックとアリス、エミリーは月明かりに()らされたエドゥアルトを見て目を見張(みは)りました。



「なんていい馬だろう…。いったいどこで手に入れたんだい?」



パトリックがたずねると、オリバーが答えました。



「ヘルガ女王様とオットー様からの(おく)(もの)だ。名前はエドゥアルト。ローズが名づけたんだ。」



アリスとエミリーも感動しています。



毛並(けな)みも素晴らしく、体つきもしっかりとしている…。まさしく名馬(めいば)だな。」



(うらや)ましいです…。」



三人の羨望(せんぼう)眼差(まなざ)しに、オリバーは苦笑いしました。



「とにかく『(かく)()』に戻ろう。ハンス、お前は疲れただろうからエドゥアルトに乗れ。」



「ありがとうございます…。」



ハンスがフラフラしながらエドゥアルトの背に乗りました。



「ローズも疲れただろう?お前も乗っていいぞ。」



しかしローズは首を横に振りました。



「大丈夫なのか。…よし、戻ろう。ロジェもありがとう。俺たちのところで休んでいくか?」



「いえ、僕は(いち)の様子を見に行きます。みんな混乱(こんらん)していただろうから、メチャクチャになっていると思うので…。」



「そうか、わかった。君にも感謝しているよ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



(かく)()』にはラルフとヨウフェイ、そして先に退却(たいきゃく)していたマチルドが待っていました。



「ラルフ、みんなの武器の手入れをしてくれたみたいだな。ヨウフェイもラルフをしっかり手伝ってくれたようだし。マチルドもよく戦ってくれた。…みんな、本当にご苦労さん。」



「先生がいなくても、みんなで力をあわせて戦えましたよ。」



ハンスが胸を張りました。



「とは言っても、師匠(ししょう)がいないとやっぱり心細(こころぼそ)かったけどね。」



ビアンカの言葉にみんなが笑いました。



「さて…、疲れているところ申し訳ないんだが、俺は明日、ナンジューマのダナラスフォルスへ向かおうと思う。どうやらはぐれ動死体(どうしたい)がまだたくさんいるらしい。それを排除(はいじょ)しに行かなければならないからな。(おそ)らく今日の連中(れんちゅう)も、動死体軍団(どうしたいぐんだん)の本隊ではなく、はぐれ動死体(どうしたい)集合体(しゅうごうたい)だろう。オーベルクを破壊(はかい)しつくすには少し少ないようだったからな。



とは言え、今日のこの戦闘(せんとう)予想外(よそうがい)だった。みんな疲れただろう。明日一緒に行くのは体力が十分残っているやつだけでいい。疲れてるやつはその疲れが()えてから俺を追いかけてきてくれ。」



(わたし)は大丈夫ですよ。」



まっ先にイザベルが笑顔のまま言いました。



「あたしも大丈夫だよ。…むしろ、一晩寝たらみんな大丈夫だよね?」



ビアンカの言葉にみんなが(うなず)きました。



「みんな…。ありがとう。じゃあ明日、朝食(ちょうしょく)を食べたらみんなで出発するとしよう。今日は本当にみんな疲れただろうから、ゆっくり休んでくれ。」



オリバーの言葉に、仲間たちは地上への階段を上り、それぞれヴォルフの宿に戻って行きました。オリバーが階段に足をかけると、ビアンカが声をかけました。



「じゃあ、あたしたちも旅の準備をするよ。じゃあ師匠(ししょう)、また明日の朝にね。」



「ああ、そうだな。」



続いてイザベルも声をかけました。



「お休みなさい。…オリバーさん、先ほどはありがとうございました。」



「…あまり気負(きお)いするなよ。」



イザベルは笑顔を返しました。オリバーはヴォルフの宿の自分の部屋に戻り、すでに大いびきをかいているハンスとペーターの横で眠りにつきました。

オリバーが不在の中でも、仲間たちは力を合わせて動死体の一群に立ち向かいました。オリバーはとても心強く感じているようです。



次話ではオリバーたちがナンジューマ地方に向けて旅立ちます。途中、はぐれ動死体に遭遇しますが、その動死体たちはこれまでオリバーが見たこともないような奇行に走っているようです。どうぞお楽しみに!



ちなみに動死体は街の中に侵入する前に侵攻を食い止められましたが、街の人々がパニックを起こしてしまったせいで街中はめちゃめちゃになってしまってしまいました。ロジェはその片づけを手伝うために早めに帰ったのです。



では次話をお楽しみに!

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