交戦開始。「ホーム往復バグ」とメタルスライム狩り
俺たちは約束通り朝九時前にバトルギルドの前に集まっていた。
「ケヴィンさん私死にそうになったらリタイアしてもいいですか?まあ、コロシアムでは死んでも生き返るけど、、、」
なるほど原作と同じでリタイアという機能があるのか、、、ついでにコロシアムでは死んでも生き返るという重要な情報まで提供してくれた。意外にこの娘優秀なのでは?
「うん、全然オーケイ。」
「陰気なお兄さん。私は立っているだけでいいんだよね。」
ウメコはバトルギルドの雰囲気を見て少し委縮しながら言った。
「もちろん」
「ほお、マジコロかあー懐かしいのう。ワシ昔はめっちゃ強かったんじゃよ、、、」
ローウェン爺さんは髭に手をやりながら能天気に言った。まあこの人が昔どんなだったかは知っている。というか、、、
「よお、逃げなかったみたいだな。クソ雑魚陰気魔術師。」
その声の主は紅桜だ。
紅桜は赤髪の坊主の女性と体長4mはある人型の怪物。そして気の弱そうなピクシーハットに僕と同じ魔道服を着た少女を連れてきていた。確か坊主の名前はマングロ。人型の怪物の名前は獣魔王オークキング。魔法使いがアカシアだった気がする。ちなみに紅桜以外のパーティーメンバーの目は死んでいる。例のセリフの通りパーティーメンバーとの関係は最悪のようだ。
紅桜はウメコを一瞥すると目を見張らせる。
「てめえ、、、マジ殺すぞ。クソ悪魔が、、、」
怒りの声をあげながら紅桜は言った。俺は勝つためなら悪魔にでも原作との解釈不一致にも魂を売る。戦うのなら勝ちに行くそれが絶対だろ。
「どうぞご勝手に、、、まさか火炎王ともあろうものが少女を見て逃げだすなんて言わないよね?」
煽るように俺は言った。その場にいる他の六人はその会話を見て困惑している。
「ぜってえてめえは一発殴る。」
「ふッ」
俺は少し笑った。やっぱり紅桜は身内には意外に優しいな。最速ティア1チャートで俺が最初に戦う相手を彼にした一番の理由は彼の身内への優しさが所以だ。
「どこかで会ったことありますか?」
ウメコはゆったりと紅桜に聞く。しかしそれには答えない。
「じゃあ戦いを始めようか、、、てかどうやったら始まんの?」
「ああ!お前そんなことも覚えてねえのか?やっぱ頭がわりい見てえだな。代表者が拳と拳を合わせて、【マジック&コロシアムに戦いの焔を灯す】って言えばいいだけだろうが」
おお!以外に親切な奴だ。というか、戦いの焔を灯すってマジコロのキャッチコピーじゃん。ここも原作再現か、、、いいね。
「冗談だよゴリラ・ゴリラ・ゴリラ君」
「学名死ね」
やはり突っ込んでくれるらしい。
俺たちはゆったりと近づきあい拳を合わせて言った。
【「マジック&コロシアムに戦いの焔をともす」】
すると拳が赤く煌めきギルドの中に書いてあったルールが赤い色の文字とともに現れる。そしてその最後に、、、
Q、代表者紅桜のパーティー【赤桐の木】と交戦状態に入ります。よろしいですか?
1はい
2いいえ
と書かれた解答ボタンが設置される。
へえ、赤桐の木か。いい名前だな、、、言葉遊びのあるネーミングセンスに少し感動しつつ、俺は迷わずはいを押す。紅桜もボタンを押した。
【チームケヴィンと赤桐の木の交戦が開始されました!クエストを四回遂行しコロシアムでの戦闘を開始してください。】
脳内に原作ではおなじみの機械音声のような声が鳴り響く。
このゲームは戦闘が開始された初期の状態では全員のレベルが1で所持金が0、装備は無しで固定された状態から始まるため、この四回のクエストでそれらを整えていくところから始まる。
その声を聞き届けた、赤桐の木のメンバーはゆったりとギルドの中に入っていく。おそらくクエストを受けに行くのだろう。
俺たちもゆったりとギルドの中に入る。
◇◇◇
すると俺たちに豊満な胸を揺らしながら話しかけてくる一人の人物がいた。
「おいおい!なんでじいちゃんがここにいんだよ。てかなんでケヴィンと一緒に?」
おなじみ勇者アルスだ。
「僕のパーティーメンバーに入ったからだよ、、、」
「は!?」
アルスは顎を外す勢いで驚く。
「何言ってんだお前、じいちゃん80だぞ今年で、、、」
「っていうか、あの人アルスさんのおじいちゃんだったんですか?じゃあやっぱり意外と強いのかな?」
悟りは目を輝かせながら言った。
「いやあの人は只のぼけ老人だ。あたしが保証する。」
「ガックシ」
「あれ?なんで孫が二人おるんじゃ?ワシの孫って二人だっけ?」
「ああ今さっき性転換してから細胞分裂したんだよ、、、」
「何言ってんだてめえ!そんな事するわけねえだろ」
アルスはそうローウェンに聞こえないくらいの小さい声でそう言いながら俺の頭をはたく。
「うーん」
ローウェンさんは考え込む。
「ま、そういうこともあるかあ」
「ずこっ」
アルスはズッコケる。
「じゃあ僕たちはいくから、、、」
「頼むからじいちゃんを外してくれ、、、」
「うーん、まあ見ててよ」
「おまえさあ、思ったよりいかれてたんだな。それに頑固だ。幼馴染なのに知らない一面ばっかりでお姉さん困っちゃう。はあ頼むから丁重に扱ってくれよ。」
アルスはため息をつきながら言った。
「意外とあっさりしてるね。」
「まあルールは破ってねえからな、、てかなんかお前人が変わったみたいだな。」
ギクッ、図星だ。そういったアルスはそれ以上追及することは無く酒の席に戻っていった。やはり意外に淡白だな。こういう所がケヴィンが彼女に惚れた一因なのかもしれない。でも悪いな、アルス今回の紅桜最速攻略チャートにローウェンは必須だ。
クエストの張ってある掲示板へと俺たちは向かう。そこに紅桜たちはいなかった。赤桐の木のメンバーはもうクエストに向かったようだ。そこには、【ここの依頼用紙をはがすと自動的にクエストが始まるぞ!】という丁寧な説明文が書かれていた。
そこには色々なクエストが貼ってある例えば、、、
【竜人王バイゼルの討伐。難易度S 報酬4000Gと竜王の兜】だったり、
【スライム狩り 難易度E 報酬100G】など難易度から報酬まで様々だ。貼ってあるクエストはどうやら原作準拠らしい。
「どのクエストにします?やっぱりスライム狩りとかですかね。私達最弱だし」
悟りは不安そうな声で言った。
「否、今ここにあるクエストは受けない。僕の教義に反するけど背に腹は代えられないアレを使おう。」
「ええ!?あれって?」
「まあ僕についてきてみてよ。面白いからさ。」
そういった俺はローウェンとウメコの手を引っ張りながら、酒場を出る。
「おおわしの孫は強引じゃのう。(笑)」
ローウェンさん世代でも(笑)って使うんだ、、、
「お兄さん大胆」
「どこ行くんですか?」
悟りちゃんも付いてくる。
酒場を出た俺達はそのまま俺の家へと引き返す。そしてドアを開けて家の中に入り、原作では俺のホーム画面だった黒のゴシック調の部屋へと引き返す。
そしてまた酒場に戻る。そしてクエスト掲示板を覗く。すると先ほどと貼られているクエストが違う。なんでだろうね()
「あれさっきと違うような、、、」
悟りは首をかしげる。
「ああまだないな。でもやっぱり往復バグは健在なんだな」
「往復バグ?」
「ああなんでもない。」
往復バグとは原作で相手と交戦中に準備フェイズのクエスト選択画面で回線を一瞬切りホーム画面に戻るとクエストの内容が変わっているというtipsである。結局サ終しても原作で直されることは無かったバグでホームとクエスト掲示板を欲しいクエストが来るまで往復する様からそう言われていた。
しかし現実のゲームのほうでは制限時間があるため精々できて一往復程度でしかもそのまま回線が落ちて復活できなかったら即負けなので、そこまでゲーム性を破綻させる程のものではなかった。しかし異世界転生をした今ならば生身の肉体が疲れない限り何度でもできる。さすがは生マジコロ、生ケヴィン最高だ。バグまで再現してくれてあざす。
◇◇◇
この家と掲示板の往復を三回ほど繰り返すと、お目当てのクエストが出て来た。それは、、、
【メタルスライム狩り 難易度??? 報酬300G】
「よし!」
「え!?もしかしてこれ受けるんですか?これってメタルスライムがすぐ逃げるのにめちゃくちゃ軽減倍率が高いからクリアした人ほとんどいない割に報酬もたった300G のいわゆるクソクエストじゃないですか?」
悟りがこのクエストの概要を丁寧に説明してくれた。いい子だ。確かに普通のパーティーにとってはクソクエだが、、、ケヴィンと悟りにとっては、、、
俺はゆったりとその依頼用紙をはがす。




