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99 第5章第18話 影の努力

 “いや~今日の試合は、北海道ミルクファイアースの圧倒的な勝利で終わりましたね。8対0で、ファイアースの勝利。勝ち投手は、北白山(きたしらやま)です。9回まで投げ切りました。なんと球数は、32球でした。ほとんどのバッターを1球で打ち取ったことになります。北白山だけじゃなく、ホームランも飛び出すなど他の選手も気合が入っていることがよく分かりました。開幕戦を勝利で飾れたファイアースは、今年こそ優勝を狙っているんでしょうね”


 “間違いないな! あの北白山とゆう選手を開幕投手にしたってことで、もうそれははっきり示しているみたいなもんや。これは、他のチームにもやけど、何よりファイアース内の選手に対しての、監督の意思表示みたいなもんやと思うわ”


 “それはどういうことでしょう? 岩木さん”

 “今までのような常識で計れる野球じゃないということや。新城(しんじょう)監督は、きっと今年に賭けてるんやと思うわ。これは推測やけど、ピッチャーだけやなく、打つ方でもあの北白山を使うつもりじゃないかな”


 “え? また、ファイアースは二刀流(にとうりゅう)で行くんですか? たしか、もう10年ぐらい前でしたよね。ピッチャーでもバッターでも凄い選手がいたのは……”

 “ああ、彼はな……凄かったよ。誰も、真似はできんかったなあ~”


 “じゃあ、あの時と同じように、北白山も二刀流で行くつもりなんでしょうか?”

 “それは、よう分からんけど、オープン戦で1度バッターとしてゲームに出てるやろ? 確か、あの時は、5打席全部ホームランやったな……”


 “そうですね、まあ、相手もオープン戦ということで、半分肩慣らしもあったとは思うんですけど”

 “そやけど、オープン戦では、短いイニングしか投げてなかった北白山が、今日は完封したやろ? おまけに、変化球まで投げよったわ”


 “そうですね……なんだか、まだまだいろんなことができそうな選手じゃないですか? でも、いったいこんな選手、どこにいたんでしょうかね?”

 “そうやな。高校野球で活躍してた訳でもないし、かといって他のスポーツで活躍してた訳でもないようやしな……まったく、これから何をやらかすか、えらい楽しみやないか!”



 “……ここで、情報が入りました。普通、登板日以外の先発投手はベンチに入らないんですけど、北白山投手は明日もベンチに入るようです。こりゃ、バッターとしても出場するつもりなんでしょうかね”

 “確かにな、今日は32球しか投げとらんから、連投ということも可能かもしれんが……まったく新城監督は何を考えとるか分からんわ!”


 “それでは、明日も北海道ミルクファイアース 対 九州おくらフォーグスの試合をお楽しみください。それでは、今日はこの辺で、また、明日、お会いしましょう”







「タマ子ちゃん、今日は疲れただろう?」

「はい、だって、今日は32球も投げたんですよ! あたし、試合でこんなに投げたことないんですよ」


「あはははは、でもさ、いっつも練習では、テツ子に言われて、200球近く投げてるだろ?」

「はい、多澤(おおさわ)さん、テツ子さんは厳しいんですよ! す~ぐ、投げ方とか文句をつけて、何度もやり直しをさせるんですもんね」


「あら、タマ子ったらそんなことを言ってもいいの? 今日は、300球に増やそうかしら?」

「え? 今日もこの後、練習するのかい?」


「何言ってんですか? 早く、あの投げ方をマスターしてもらわないと困るでしょう? 多澤さんだって、キャッチャーお願いしますよ!」

「あははは……そうだった、俺も練習に付き合わされるんだったわ……はははは」



 そう言って、試合後にも関わらず、珠子、徹子、多澤は、ここ九州クマモンパークの室内練習場を借り切り、いつもの極秘練習を始めたのだった。




(つづく)


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