↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
96/118

96 第5章第15話 理論に感心

「おいおい、タマちゃん? 変化球も投げられるようになったのかい?」


 ベンチに戻ると新城(しんじょう)監督は、嬉しそうに聞いてきた。


「はい! 監督。あたし、魔球を投げられるんですよ! 今のは、ツッパリボールです!」

「魔球? ツッパリボール?」


 新城監督の目が点になりかけたとき、横にいた徹子(てつこ)が慌てて説明を始めた。


「えっと……タマ子は、変化球のことを『魔球』って呼ぶんですよ。今投げたのは、フォークボールです」

「あ、ああ~、そうなんだ。……でも、あんまり落ちなかったよね。失敗だったの?」


 新城監督は、ちょっと不安そうに尋ねた。すると、今度は多澤(おおさわ)が、笑いながら言った。


「あははは、まあ、失敗かもしれませんな。でも、監督、よく考えてくださいよ。ぎりぎりまでストレートに見えるボールが、直前でちょっと軌道を変えてご覧なさい。一流のバッターだったらどうなると思いますか?」

「う~ん、そうだな~。ボールの軌道を計算して狙ってバットを振ってくるはずだから、直前でボールが少し落ちたら、打ち損じになるんじゃないかな」


「そうですよ。ボールの上っ面をひっぱたくことになるんです。すると……さっきみたいなボテボテのゴロになるんですよ」

「え? じゃあ、始めからボテボテのゴロを打たせる計算の上で、あのボールを投げたのかい?」


「はい、その通りですよ」


 多澤は、まるで自分の手柄のように嬉しそうに話した。


「なるほど~……そうなんですね。う~ん、すごいボールじゃないですか!」


 横で聞いていた珠子(たまこ)が、腕を組みながら感心して大きく頷いていた。


 ―― パカッーン ――


「イッターー!」

「何言ってんのよ、タマ子! あんたが、感心してどうするの! あんたが投げたボールじゃない!」


 まるで他人ごとのように感心する珠子の頭を軽く叩いてから、徹子は笑いをこらえながらツッコミを入れていた。


「えっと……タマちゃんとテッちゃんは、漫才をやってるみたいだね。……とっても面白いよ!」


 2人の会話が面白いのか、珠子の投げるボールが面白いのかは言わずに、新城監督は笑顔で元の席に戻っていった。








 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 “2回の表が終わりました。7番のレフト今河にホームランが出て、ファイアースに1点が加わり、2対0となりましたね”

 “フォーグスのピッチャー下沢も調子は悪くないんやけど、甘い球を今河は見逃さんちゅうことやったわ”


 “そうですね。ファイアースのピッチャー北白山は、1回裏を4球で乗り切りましたから、こっちも調子がいいんじゃないでしょうか?”

 “まあ、新人ピッチャーやから、どこまでもつかは分からんけど、たま~にいるんだよね。棚からぼた餅みたいにノーヒットノーランを決めるのがね。でも、最初にそんなことしてみいや、その後マウンドに上がる時のプレッシャーちゅうたら、半端やないで! 余計な緊張をせなあかんようになるんや。少ない球数でいくのはとってもええことや。でもな、ほどほどがええねん! 北白山、ちょっと心配やな……”



 “さあ、2回裏、フォーグスの攻撃です。ファイアースのピッチャーは、北白山。第1球投げました……”



 ―― カッキーン ヒューー ――


 “1、2塁間を抜けた……ライト前ヒットです! 打たれましたね、岩木さん”

 “なんや……あっさり、打たれたなあ~……。(俺の心配し過ぎだったかな?) ん? なんや? 北白山、笑っとるで? 打たれたちゅうのに、なんか余裕やな~……”




(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。