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77 第4章第6話 勝負の結末?

「……あ!」


 ボールを投げる瞬間、珠子(たまこ)の頭には、とんでもないことが走馬灯(そうまとう)のように駆け巡ったのだ。それは、いつものように、自分が投げたボールをバッターが打ったらどうなるかだ。間違いなく、バットが折れ、弾き飛ばされるだろう。ここは、グラウンドじゃない、体育館だ。それも、たくさんの人たちが、すぐそばにいる。ボールやバットが、お客さんにぶち当たったら、大怪我をしてしまうんじゃないか?


 ところが、その後で、珠子は、もっとまずいことに気がついた。ボールの握り方が、いつもと違っていたのである。今回、ポケットの中で徹子に言われた握り方を繰り返していたので、いざボールを投げたときには、その握りをしたまま手を振ってしまったのである。


 まったく、手加減をせず全力でボールを投げてしまった珠子は、ほんの零点何秒かのあいだに、それらのことを思い出し青くなってしまった。


★舞台の上から思いっきりボールを投げる珠子

挿絵(By みてみん)




 ボールは、真っすぐに進んだ。ストライクコースど真ん中だ。バッターの達也(たつなり)は、狙いを定めてバットを思い切り振った。達也には、ある意味計算があった。この狭い体育館で珠子のボールを打てば、必ずバットが折れる。そして、折れたバットとボールは前に飛ぶはずだ。でも、体育館なので、前面には緞帳がある。実は、あらかじめ舞台の緞帳は、右半分が少し閉められていたのである。

 そう、達也と和也(かずなり)は、先日の姉の投球を中継で何度も見たのである。そして、打球がセカンド方面に飛ぶことを理解して、この計画を思い付いた。だから、万が一達也のバットが振り遅れたとしても舞台の右側に飛ぶことは予想できていたのである。




 ところが……



 ―― ブン! ――

 ―― ゴン ドン ――



 達也のバットが空を切ると同時に、ボールは体育館の床にぶつかる音がして、和也がなんとか胸に当てて止めたのだ。


「ちぇっ、空振りしちまったぜ! おい、和也、なんでボールをキャッチできないんだよ。そんなに速いボールじゃなかったろ?」

「あ、ああ……で、でも、落ちたんだぜ! 姉ちゃん、フォークを投げやがったよ……」



 バッターの空振りを受けて、校長先生がマイクで『ストライーク!』と、大声で叫んだ後、舞台上にいる珠子にエールを送った。


「やっぱり、すごいね~。これが、プロのピッチャーですね。北白山君、ぜひ、ファイアースを優勝に導いてくださいね。あなたの活躍を本校一丸となって応援していきます。今日は、どうもありがとうございます」


 その後、体育館は割れんばかりの大拍手と歓声に包まれた。珠子は、とにかく誰もケガ人が出なくてほっとして、一礼をしてから舞台から降りた。



「タマ! すごいね! やっぱり、一流のピッチャーよね。わたしも、これから旭山ドーム球場では、近くで応援するからね!」

「え? ああ~お願いね。……(ん~でも、どうして達也は、空振りしたのかしら? あいつも、ここで打ったら大変なことになるって分かってたのかな?)」


 その後、すぐに教頭先生の合図で、会場は元に戻され、無事卒業式は終了した。珠子たちは、教室に戻り、担任から卒業証書を受け取ると、クラス全員で記念写真を撮るなど最後の別れを惜しんでいたのだった。




(つづく)


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― 新着の感想 ―
フォークボール⁉️ 練習していたの⁉️ (´⊙ω⊙`)! でも、ま、死傷者がでなくて良かった良かった。 (*´ω`*) 安定してフォークを投げれるのなら、凄い強みになりますね〜。 (・∀・)
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