58 第3章第18話 タマ子のお手本?
“9回表、ピッチャーは引き続き北白山です。イニング跨ぎですね。大丈夫でしょうか?”
“な~に、8回だって、4球しか投げてないやんか? きっと、この回は、もっと少ない数で終わるんやないかな……”
解説の岩木が言ったように、9回表の珠子は、多澤の指示のもと、全球ストライクのど真ん中に投げた。
東京もんじゃシャイアンツは、下位打線からの攻撃ということもあり、すべて1球でアウトになっていた。もちろん、バットをへし折ってのセカンドフライだった。
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「お疲れ様、タマちゃん! 今日も良かったね~……収穫もあったんじゃない?」
「はい! 新城監督。あたし、『三球三振』の意味が分かりました! 今度、三振とっても大丈夫ですよ!」
試合終了後、選手たちの控室で、徹子と多澤が珠子のケアをしていたところへ、新城監督がやって来た。
「あはははは……タマ子ちゃん、監督にそんなこと言ってもダメだよ」
「ええ~あたしには、すっごい収穫だったんですよ~?」
新城監督は、珠子の勘違いについて知らなかったので、なんのことか分からず、『まあ三振がとれるならいいか』ぐらいに思って、笑顔でいた。
「ところで、監督。明日の試合は、タマ子はどうしましょう?」
「ああ、明日は、ここで、埼玉くれよんスワリーズとの試合だね。……でも、タマちゃんは投げないでお休みにするけど、ベンチには入って欲しいんだよね。もちろん、テッちゃんと親分にもね」
「分かりました。明日は、肩の回復に努めます」
徹子は、試合後のマッサージを珠子に施しながら、明日のスケジュールを確認した。
「スワリーズの試合か……久しぶりだな。現役を退いてから交流戦にも行かなくなったからな。あいつ、今でも頑張ってるらしいじゃないか……」
キャッチャーの多澤は、独り言のようにつぶやいたが、徹子はちょっと気になることがあった。
「多澤さん、あいつって、誰ですか? ひょっとして、キャッチャーのあの人ですか?」
「ああ、新田だよ。あいつな、新人の時に、俺と一緒に自主トレがしたいって、毎年春には顔を合わせていたんだ。そのうちに、やつのキャッチングは芸術ものに進化していきやがったよ。それにな、バッティングも良かったなあ~」
「知ってます……去年の打率が4割に近かった人ですよね。ホームランこそ少なかったですけど、必ずヒットを打っていたようなイメージがあります」
「そうだな……やつは、ピッチャーの投げるボールをキャッチャー目線で分析し、コースを予測するんだよ。それに、とっても集中力があるんだ。……怖いやつさ」
すると、珠子は、目をキラキラさせながら、話に加わってきた。
「そんな凄い人なら、あたしも投げてみたいなあ~。明日は、出番がないみたいだけど、近いうちに対戦できるかな?」
すると、新城監督が、笑顔で気になることを言い出した。
「うん……まあ、タマちゃんとの対決は交流戦まで待っていてくれるかな。……それよりも、彼のバッティングを見ておいて欲しいんだ。できれば、真似ができるようにね……。だってさ、うちの選手たちは、初めからあきらめてるんだよ。絶対、あんなバッティングはできないってさ……僕は、あのバッティングを真似できれば、うちも最強になれると思うんだけどなあ~。ね、親分!」
「あははは、真似ですか…………」
多澤は、頭を掻きながら、もう一度、新人の頃の新田敦也を思い出していたのだった。
(つづく)




