表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/51

44 第3章第4話 飛んできて欲しいもの

「エイエス、さっきあなたが折ったバットをすべてもらえないかしら?」


 徹子(てつこ)は、対決が終わったエイエス選手に声をかけた。


「OKよ。……でも、What? 何に使うのですか? あ! まさか、プレミア付きでどこかに売って儲けるですか? テツ子ちゃん? ふぁふぁふぁ」


 ちょっと笑いながら、エイエスは徹子を揶揄(から)った。しかも、珠子(たまこ)に続き、徹子まで、ちゃん付けで呼びながら、エイエスは嬉しそうだった。


「バカ言わないでよ。あなたが負けてへし折られたバットなんかに、プレミアが付くわけないじゃない。……まあ、ホームランでも打ったバットなら、私がもらってあげてもいいけどね。ふふっ」


 負けずに徹子も、エイエスに言い返し、メガネをちょっと持ち上げながら笑顔を返していたのだった。







 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「タマ子、多澤(おおさわ)さん、ちょっと手伝って……」

「ん? テツ子、なんだい? そりゃ。」


 徹子は、折れたバットの先端部分を山ほど抱えて、珠子と多澤のところに来た。


「エイエスからもらったの。さっき折ったバットよ」

「そりゃ、見れば分かるんだけど……いったい、何をする気なんだい?」


「タマ子、これからあなたは、これを避ける練習をするのよ!」

「え? 折れたバットを避ける練習ですか?」

「そう。試合の本番では、このピッチャーを守るネットはないの! 上手く避けないと、あなたは折れたバットに当たって大怪我をするわ」


「ええ~! いやだなあ~。あたし、痛いのは嫌なんです~!」

「だったら、真面目に練習するのよ! それに、飛んでくるのは、バットだけじゃないでしょ!」


「…………えっと、あんパンやクリームパンなんかも飛んできたら、嬉しいなあ~……。シュークリームでもいいんだけど……」

「タマ子? 何言ってるの?」


「あはははは……タマ子ちゃん、お腹空いたんだろ? 今朝はマラソンでここまで来たし、エイエスとの勝負もやったからな」

「えへへへへ  ―― グウウウ ――  はははは……」


 珠子のお腹からは、地響きにも聞こえる激しい緊急ブザーが鳴り響いた。


「ま、試合中でも、ピッチャーは栄養を補給することがあるからな」

「多澤さん……そんなこと言って、タマ子を甘やかさないでくださいよ!」

「いいじゃないか。別に、俺たちには決まった練習なんてないんだ。要は、このチームを優勝させるために、俺たちは頑張ればいいだけなんだ。何をしたって、自己責任だよ」


「仕方ありませんね。……じゃあ、休憩にします。 ―― ゴソゴソゴソ ――」


 徹子は、腰につけている小さなポシェットから3人分のスポーツドリンクと丸い物を取り出した。


「じゃあ、ベンチに行きますよ!」


 すべての選手はグラウンドに出て練習を始めたので、ベンチには誰もいなかった。コーチたちはあちこちの選手の様子を見に行っていたし、監督はもうどこにも姿は見えなかった。


「はい、……これを飲んでください」

「お! テツ子ちゃん、気が利くね~……」


「今日だけですよ! ……それに、タマ子には……はい、これもあげるわ」

「え? あ! やった~! アンパンだ! わあ~ありがとうございます、テツ子さあん!」


 珠子は、大きなアンパンを頬張り、また嬉しそうに笑っていたのだった。




(つづく)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ