40 第2章第27話 腕試しの紅白戦⑤
“いや~いい試合でしたね~。ファイアース、今年最初の試合となる紅白戦でしたが、すべての選手が参加できたようです。まあ、得点は『1対0』で、白組が勝ちましたけど、どうでしたか、解説の鈴木さん?”
“そうですね~。派手な試合じゃありませんでしたが、それなりにヒットを打つ選手もいたし、
盗塁もありました。ピッチャーもいろんな変化球を見せたり、剛速球を投げたりする選手もいました。きっと新城監督は、時々はしゃぐように喜んでいましたから、成果があったんじゃないでしょうかね”
“成果ですか?……それは、いったいどんな内容なんでしょうか?”
“試合前に監督は、この試合の様子で1軍と2軍を振り分けると言っていたでしょ?”
“そうですね”
“きっと、今までの慣例なんか無視して、ここで改めて振り分けるつもりなんじゃないでしょうか?”
“じゃあ、まったくの新人が1軍に入るということもあり得るんですか?”
“……多分、ありますよ。私は、思うんです。あの最後に投げたピッチャーなんか、まさにそういう選手なんじゃないかとね……”
“えっと、それじゃあ、ここで今日の試合を振り返ってみます。今日の試合は、落ち着いた内容でした。初回から8回までは、点が入りませんでした。ただ、ヒットもよく出ています。両チーム合わせてヒット数は20となっています。それに、盗塁が20、バントも10本決まっていますね”
“これだけ、攻撃があって、無得点だったのにも驚きました”
“というのも、守備にも光るものがありました。2塁での盗塁牽制アウトが6つありました。あわや外野の頭を超えるかというヒット性のあたりをキャッチするファインプレーも8つもありましたね”
“そうですね、あれだけ選手が入れ替わり、交代を繰り返しているのに、守備で輝いていた選手もたくさんいたような気がします”
“それから、何と言ってもピッチャーですね。特に、味方が9回の表に1点を取ったにも関わらず、9回裏でランナーを溜めてしまい満塁になった時に出てきた北白山選手ですね~。久しぶりの女性選手でした”
“ええ、どうも新城監督の特別枠採用だったみたいです。まさしく新人ですね”
“その場面は、VTRでご覧いただきましょう。……(※画面の前の皆様は、プロローグをご覧ください)”
“現在、まだ高校生らしいんです。卒業式を来月に控えているということでした”
“いや~それでも、この場面、緊張しますよね。満塁なんですよ。2アウトとはいえ、1点でも入れば、逆転負けなんです”
“最初は、3球続けてボールでしたね”
“きっと、緊張したんでしょうね”
“ただ、この時点で、キャッチャーや内野がピッチャーのところに集まっていますが、みんな笑顔なんですよ”
“そうですね……ピッチャーの北白山も笑ってますよ”
“そして、タイムが解けた後の、この1球です。確か、スピードは130キロです”
“プロのピッチャーとしては、そんなに速くないですね。どちらかというと打ちごろなんじゃないでしょうか?”
“バッターは、去年、ファイアースの4番を打つことが多かったエイエス選手です。彼は、ホームランも打てる選手ですからね。バットを思いっきり振りました”
“ボールもストレートで、打ちやすかったとは思うんですよ”
“それでも、バットが折れて、セカンドフライに終わってしまいましたね”
“1球で勝負がついてしまいましたね。……ただですね、ピッチャーもキャッチャーも結果が分かっていたみたいに落ち着いているんですよ。不思議ですね~。私、この北白山ピッチャーが、とっても気になります。早く、次の試合で投げるところを見たいですね”
“ということで、今年のファイアースの試合が益々気になるところですが、今日は、この辺でお別れです。解説は鈴木さん、実況は田中でお送りいたしました。次は、オープン戦でお会いしましょう”
中継も終わり、選手たちはそれぞれ後片付けをしながら、この日は解散となった。明日には、1軍と2軍の発表があり、それぞれの場所でオープン戦に向けての準備が始まる。
ただ、最後のバッターになったエイエス選手は、両手を見つめ、閉じたり開いたりを繰り返して呟いていた。
「……What? あのボール? まだ、痛みが消えない……いったい、何だったんだ?」
(第2章 完 ・ 物語はつづく)




