37 第2章第24話 腕試しの紅白戦②
「今日の紅白戦は、午後一で始める。それから、紅白戦には全員が出てもらう。1軍も2軍もないぞ。もちろん、ドラフトでとった新人も同じだ。例え、1回のバッターボックスでも、1回の守備機会でも、チャンスは自分で掴んで欲しい! 僕は、その姿を見て、1軍スタートの選手を決めることにする! 午前中は、各自、体を温めておいてくれ。……その間に、僕たちは今年の戦術でも練ることにするよ。各コーチのみんなは、特別会議室集合ね。……あ、テツ子ちゃんは、タマちゃんについててね」
それだけを言うと、新城監督は奥へ下がって行ってしまった。
「なあ、紅白戦で全員出場させるって、大丈夫なのか? 今年は、支配下選手だけで66名もいるんだぜ!」
「そうだな、ピッチャーだけでも35名だ。……1回にピッチャーが1人ずつ投げるとしたら、1試合で9人しか投げられないよな。まあ、相手チームも同じことをするとしたら、18人は投げられるか……」
「いやいや、1回に2人とか3人に投げさせるかもしれないぜ! 何せ、あの新城監督だから、何をするか分からんからな!」
「そうそう……って、いっけね、ピッチャーもう1人増えたじゃないかよ」
「そうか、タマ子ちゃんか? ピッチャーは36人だな!」
「おい、待てよ。監督の紹介じゃ、ピッチャーだとは言ってないんじゃないか?」
「でもよ、キャッチャーの多澤親分がいたんだぜ。キャッチャーの相手っていったら、やっぱりピッチャーだろ……」
「「う~ん…………?」」
何やら特別な紅白戦になる雰囲気を感じた選手たちは、口々にお喋りをしながら、それぞれのウォーミングアップを始めた。
「さあ、あたしたちも練習しましょうか?」
「まあ、待てよ。タマ子ちゃん。試合は、1時からだよ。まだ、3時間もあるんだぜ。どうせ、お前さんなら、今すぐにでも投球できるだろ?」
「もちろんですよ! いくらでも、バットをへし折ってや……いえ、差し上げますよ!」
「もう、タマ子ったら。そんなに張り切らないで! あんまりはしゃぐと失敗するわよ!」
たった、2週間の練習期間ではあったが、徹子と多澤は十分に珠子の気持ちを掴んでいるようだった。
「お前ら、俺と一緒に来い! 美味しいもの食わしてやるよ!」
「え? 多澤さん、もうお昼ご飯を食べるんですか?」
「午後からの試合っていうのは、早めに食事は済ませておくものなんだ! 試合の時に消化が終わってるくらいがちょうどいいんだよ! それにな、今日は、お客さんも入れるようだぜ」
「そうね……さっきから、内野席にちらほら人が入って来てる」
「わあ~ホントだ! あれ? あそこに、テレビカメラもあるわよ!」
「まあ、ネット中継だとは思うがな……それなりに取材人も来てるみたいだな」
「ほ~ら、これだけ人が入ると、フードコートも営業するんだよ。……さあ、満席になる前に食ってしまうぞ!」
珠子と徹子は、多澤の案内で、旭山ドーム球場の中のフードコートを何軒かはじごしていた。多澤曰く、『これは、体力の温存だ!』と、いうことらしい。
(つづく)




