24 第2章第11話 タマ子のファンクラブ?
「おいおい、テツ子よ、これはいったいどういうことなんだ?」
「ひょっとして、テツ子さんは、僕が内野フライを打つって分かっていたんですか?」
「まあね。……おっと、この続きはお昼を食べながら話すことにしましょう」
「そ、そうだな。ゆっくり、タマ子ちゃんのボールの秘密を聞くとしようか」
多澤と横先は、まるで狐につままれたような顔をしていた。それでも、なんとなく珠子をピッチャーとして、魅力のようなものを感じつつあった。
「あの~テツ子さん。どこに食べに行くんですか?」
「そうね~。球場の食堂はまだシーズンじゃないからやってないし、私たちの寮も昼の用意まではないものね。売店で、何か買いましょうか?」
「え~売店ですか~? えっと、……この球場を出てちょっと通りの角まで歩くと美味しいラーメン屋があるんですよ。定食なんかもあるので、みんなで行きましょうよ~」
「あ~千秋ラーメンね。いいわね、でも、タマ子は、知ってるの?」
「えへっ、ちょうどあたしが通学で使っていたバスの停留所が目の前にあるんですよ。学校帰りによく食べに行ってたんです。ね、いいでしょ?」
「多澤さんも横先さんも行くわよね!」
「もちろん行くさ。行かなきゃ、タマ子ちゃんの秘密を教えてくれないんだろ?」
「その通りよ! ……あ、でも、30分時間をちょうだい」
「お? テツ子、何か準備でもあるのか? まさか、化粧とかしようって言うんじゃないだろうな~」
「あ~親分、私が厚化粧だって言うの? ……あのね、タマ子の投球後のケアよ」
「テツ子さん? 投球後のケアって何ですか? あたし、どこも怪我とかしてないですよ」
「あのね、タマ子。プロ野球のピッチャーは、どんな人でも本気でボールを投げると肩や肘に疲労がたまるの。そのまま放っておくと筋肉や腱に炎症が起きたり、無理を続ければ骨や靱帯まで痛めたりすることもあるの。だから、ちゃんとケアしないとダメなのよ」
「え! でも、あたし、そんなのやったことがないんですよ。どうすればいいか分かりません!」
「あはははは、タマ子ちゃん、大丈夫だよ。テツ子は、そういうところもベテランさ。任せておけば心配いらないって!」
「そうなんですか? テツ子さん?」
「ええ、軽くマッサージをしてから、肩と肘の熱を取るための冷却シートを貼るの。そのための時間が30分ぐらいなのよ」
「じゃあ、俺たちはグラウンドを片付けてから店に向かうから……」
「あ、多澤さん、横先さん、少なくともユニフォームは脱いでくださいね。一応、秘密会議ですからね」
「あ、はいはい……。確かにな、タマ子ちゃんのことは、まだ知られちゃまずいってことなんだろ?」
「まあ、まずくはないんですけど、どうも新城監督が、紅白戦で初お披露目したいらしくて、球団の上層部以外には誰にも知らせていないらしいんですよ」
「そっか、じゃあ、僕も知らない顔をしてた方がいいんだね」
「そうだな、そのうちに監督に会ったら、お前も専属コーチの仲間に入れるように頼んでおくけど、何せお前は1軍のバッティングコーチだからな……」
「大丈夫ですよ、多澤さん。そこは、僕が上手くやりますから。……だって、こんな楽しそうなこと、手伝えないなんてつまらないじゃないですか。ね、タマ子ちゃん!」
「おや? タマ子、また、あなたのファンクラブ員が増えたみたいね」
「えへへへ……」
自分の周りには、野球を楽しむ仲間が、少しずつ増えてきている。珠子は、そんな幸せを感じていたのだった。
(つづく)




