15 第2章第2話 チームプレイ?
「……ハア~……ハア~……ハア~……右中間って、この辺ですか~、テツ子さん~~!」
珠子は、外野のセンターからライト寄りのところに走って行き、マウンドのところにいる徹子に両手を振って叫んでいた。
「そうよ。外野はね、広いの。守備としては、ライト、センター、レフトの3人で守らなきゃならないけど、ちょっとライト寄りの右中間とか、レフト寄りの左中間と呼ばれる場所もあるわ」
「つまり~……右中間って、『ライト』と『センター』のちょうど間ってことなんですか?」
「そうよ……いい、分かった? 分かったら、ここ、ピッチャープレートのところに戻って来て!」
「ハア、ハア、ハア…………テ、テツ子さん……ハア、ハア……名前を覚えるだけでこんなに走るなんて思わなかった……です。これなら、運動靴に履き替えればよかった……です」
「まあ、今日はこのくらいにしておきましょう。ちょうどお昼も回ったので、これでおしまいにしましょう。後は、明日からの練習ということで……。それに、明日になればユニフォームとスパイクも届いているはずだから……」
「え? ユニフォームがもらえるんですか?」
「何言ってんの? 当たり前じゃない。背番号は……まあ、明日のお楽しみってことで」
「それじゃあ、あたしはもう帰ってもいいんですか?」
「何言ってんの? あなた、今日からはここで寝泊まりするのよ。あなたはルーキーなの。これからプロ野球のことを覚えなきゃならないの。さあ、もう荷物も届いているはずだから、受け取りに行くわよ!」
「荷物? え? えええ?」
訳も分からないまま珠子が後をついて行くと、事務所の入り口に大きな布団袋が置いてあった。布団袋の上には手紙が置いてあり、送り主は珠子のお母さんだった。
珠子は、急いでその手紙を開けた。
…………
今日から、そっちの合宿所でお世話になるそうだね。気をつけて、頑張ってね。とりあえず布団や日常生活に必要なものは、球団さんが用意してくれるということだったので、おまえが普段使っている毛布と枕、それに部屋にあったこまごまとした物や着替えなんかをまとめてみました。もし必要なものがあったら、いつでも言ってね。すぐに届けるからね。
母さんより
…………
「もう、お母ちゃんったら。家までは、車で1時間もかからないんだから、必要なものはすぐに取りにいくのに~」
「さあ、タマ子、荷物を部屋に運ぶわよ。その大きな荷物、誰かに手伝ってもらおうか?」
「嫌ですよ~、テツ子さん。これくらいの小さな荷物、片手で運べますから」
「?」
珠子はそう言うなり、1メートル四方のパンパンに物が入った布団袋を片手で軽々と持ち上げると、肩に担いで何事もないように歩き出した
事務所を出て、歩いて5分ほどの2階建ての別棟に着き、玄関横の101号室の扉を開けた。
中は、8畳間ぐらいのフローリングの部屋で、窓にはピンクのカーテンがかかっていた。部屋の左右の壁際には、それぞれベッドと簡単な勉強机、洋服ダンスが同じように置かれていた。
「あれ? テツ子さん、この部屋には、あたしの他に誰かいるんですか?」
「ふふふ、よろしくね、タマ子!」
「え? ええ?」
今日から珠子と徹子は、グラウンドだけでなく、日常生活でもチームを組むことになったのである。
(つづく)




