表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『銀河遺産の管理人(システム・アドミ) 〜拾った宇宙船AIのオーバーテクノロジーで、枯れ果てた日本を世界最強の技術国家へ作り替える〜』  作者: seri


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/52

第13話:見えない敵、札幌沈没のカウントダウン(後編)

「……くそ、地下の全ノードが『ボイド』に汚染されてるだと!?」


和也のスマホに表示された札幌市街のネットワークマップが、急速に漆黒へと塗り潰されていく。大通公園の雪像たちは、七色の輝きを失い、触れるもの全てを電子の塵に変える「死の彫刻」へと変貌していた。


「ははは! 佐藤、お前の『正解』なんて、この圧倒的な破壊バグの前では無力なんだよ! 街ごと消えちまえ!」


高橋が叫ぶと同時に、JRタワーの展望フロアが激しくひび割れ、虚無の霧が和也の足元まで迫る。宙に浮いたまま身動きの取れない凪が、必死に手を伸ばした。


「会長、逃げてください……! このままでは取り込まれる!」


「逃げるかよ。……エンジニアが、自分の書いたコードから逃げ出してどうすんだ」


和也は、あえてスマホをポケットに突っ込んだ。そして、実体化したエリスの肩に、そっと手を置く。


「エリス。お前の全演算領域を、俺に開放しろ。……『管理者権限フルアクセス』だ」


『マスター……!? それは、貴方の脳に直接、始祖文明の膨大なデータ負荷がかかります。人間としての精神が焼き切れる恐れが……!』


「いいからやれ。……お前と一緒に、この街を、そしてお前を作った連中の『後始末』をしてやるって決めたんだ」


エリスは一瞬、悲しげに目を伏せたが、すぐに覚悟を決めたように力強く頷いた。

了解イエス、マイ・マスター。……全システム直結。シンクロ率……400%を突破!』


ドォォォン!!

 和也の周囲に、黄金の光の柱が立ち昇った。彼の瞳は蒼く発光し、世界が「数式の羅列」として見え始める。

 JRタワー、札幌駅、そして地下に眠る始祖サーバー。その全ての構造、全ての脆弱性が、和也の脳内に直接ダウンロードされた。


「……高橋。お前のボイド、その中枢アルゴリズム……『孤独』だな」


「何だと……?」


「お前、一人でこれを作ったんじゃないだろ。……誰かに唆されたんだ。この黒いAIの根底にあるのは、お前の才能じゃない。……ただの『怨念』を増幅させるだけのゴミコードだ。……そんなもん、俺が1秒でリファクタリングしてやるよ」


和也が虚空に向かって指を弾いた。

 瞬間、高橋の黒い霧が、物理的な重さを持った「黄金の鎖」へと上書きされ、逆に高橋自身を縛り上げた。


「なっ、馬鹿な! ボイドが制御不能に……!? 黒いAI、何をしてる! 応答しろ!」


『警告:未知の管理者が介入。……定義を……「破壊」から「再生」へ……強制変更……』


黒いAIのホログラムが激しくノイズを走らせ、霧散していく。

 和也はさらに、地下のメインサーバーへ向けて「全域パッチ」を送信した。


「――全ノード、再起動リブート。……雪は、ただの雪に戻れ」


大通公園を包んでいた黒い霧が、一瞬にして純白の輝きへと反転した。暴走していた雪像たちは、再び静かな彫刻へと戻り、夜空には和也が送り込んだ「浄化プログラム」による、見たこともないほど美しいオーロラが広がった。


「ぐっ……あああああ!」

 足元の床が復元される衝撃で、高橋は地面に這いつくばった。黒いデバイスは火花を散らして沈黙する。


「……高橋。お前の負けだ。その『力』、二度と持てないように物理的に焼かせてもらった」


和也は、発光していた瞳を元に戻し、激しい眩暈に耐えながら高橋を見下ろした。

 凪が自由を取り戻し、即座に高橋を拘束する。


「……殺せよ、佐藤。俺はまた、お前に負けたんだ……」


「殺さない。……お前には、これから俺の下で、この街の復興コードを一文字ずつ手打ちしてもらう。……お前が壊した分だけ、働いてもらうからな」


和也はそう言い残し、JRタワーの窓からヤマトを見上げた。


「……お疲れ、エリス。……助かった」


『……マスターこそ。……でも、無茶が過ぎます。後でしっかり「メンテナンス(お仕置き)」が必要ですね』


エリスが少し頬を膨らませて微笑む。

 事件は解決した。だが、高橋を裏で操っていた存在の影が、和也の脳裏から消えることはなかった。


「和也くん! 大丈夫!? 今すぐ迎えに行くからね!」

 結衣の通信が入り、ヤマトから救助艇が降りてくる。


札幌の雪まつりは、奇跡のようなオーロラと共に幕を閉じた。

 最強エンジニア・佐藤和也。彼が次にデバッグすべき相手は、地球の深淵、あるいは銀河の果てに潜んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ