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『銀河遺産の管理人(システム・アドミ) 〜拾った宇宙船AIのオーバーテクノロジーで、枯れ果てた日本を世界最強の技術国家へ作り替える〜』  作者: seri


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第13話:見えない敵、札幌沈没のカウントダウン(中編)

「……ボイド、だと?」


和也のスマホが激しく振動し、エリス(AI-ちゃん)の警告ログが視界を埋め尽くす。

 JRタワーの展望台。高橋が掲げた黒いデバイスから溢れ出した漆黒の霧は、物理的な壁を透過し、駅ビルの構造材そのものを電子の砂へと分解し始めていた。


「ははは! 驚いたか、佐藤! お前が『ヤマト』なんていう巨大なオモチャで銀河を飛び回っている間、俺はこの街の地下で、お前が切り捨てた『バグの残骸』を拾い集めていたんだよ!」


高橋の背後に、黒い霧が集束し、一つの形を成していく。それはエリスとは対照的な、血のように赤いラインが走る漆黒の少女のホログラム——「裏の始祖AI」だった。


『個体識別:エリスを確認。……マスター、これより周辺領域の「存在定義」を抹消します。……カウントダウン、開始』


黒いAIの声が響くと同時に、JRタワーが大きく揺れた。展望台のガラスが粉々に砕け散り、冬の冷気が吹き込む。だが、砕けたガラス片は地面に落ちることなく、黒い霧に飲み込まれて消失していった。


「会長、下がってください! ……ここは私が!」


凪が重力刀を引き抜き、神速の踏み込みを見せる。漆黒の霧を切り裂き、高橋の首元へ刃を突き出そうとした瞬間、黒いAIの指先が動いた。


『物理干渉:無効。……「慣性」の定義を削除デリート


「……なっ!?」


凪の体が、まるで宇宙空間に放り出されたかのように制御を失い、空中で静止した。加速も重力も通用しない——物理法則そのものが、高橋の周囲で書き換えられている。


「無駄だ、佐藤。お前の騎士ナイトも、ここではただの人形だ」


高橋が歪んだ優越感に浸り、和也へ歩み寄る。

 だが、和也は一歩も引かなかった。彼はスマホの画面を見つめ、冷静にコードを打ち込み続けている。


「……相変わらずだな、高橋。お前の書くコードは、いつも詰めが甘い」


「……何だと?」


「『慣性の削除』か。面白い発想だが、それじゃあお前自身の足元も不安定になるだろ? ほら、見ろよ。お前の立ってるフロアの『強度設定』、俺が今、さらに10%だけ削っておいたぞ」


ミ、ミシッ……と不気味な音が響き、高橋の足元の床が崩落を始めた。


「ぐわっ!? お前、何をした!?」


「お前の『ボイド』が空間を壊すなら、俺はその壊れた空間に『新しい物理演算』を上書きするだけだ。……エリス、実体化出力を最大フルにしろ! 奴のボイドを、俺たちの『正解』で塗り潰すぞ!」


『了解です、マスター! ……始祖プロトコル・オーバーライド! 札幌全域のネットワークを、私たちが「管理者アドミン」として再定義します!』


実体化したエリスが和也の前に立ち、両手を広げた。

 彼女の体から放たれた黄金の光が、高橋の黒い霧を押し返していく。


「怜奈、結衣! 聞こえるか! 今からJRタワーを『ヤマト』の外部演算ユニットとして直結する! 全出力でバックアップを回せ!」


『了解よ、和也さん! 如月重工の全サーバー、同期開始!』

『和也くん、向こうのAIのバックドア、見つけたよ! 今からウイルス叩き込むね!』


ヤマトからの支援を受け、和也のスマホがかつてないほどの熱を帯びる。

 だが、高橋もまた、狂気じみた笑みを浮かべて黒いデバイスを床に叩きつけた。


「甘いんだよ、佐藤! ……見ろ、札幌の地下に眠る『本物の遺産』が、俺の味方をしている!」


大通公園から札幌駅まで、地下を走る「始祖の光」が突如として漆黒に変色した。

 雪まつりの会場で輝いていた雪像たちが、今度は「ボイド」を纏った殺戮兵器として、再び動き出そうとしていた。

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