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『銀河遺産の管理人(システム・アドミ) 〜拾った宇宙船AIのオーバーテクノロジーで、枯れ果てた日本を世界最強の技術国家へ作り替える〜』  作者: seri


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第11話:新銀河連邦の休日(中編)修正版

大通公園を抜け、札幌の活気ある中心街「すすきの」へと足を向けた一行は、昼下がりとは思えない賑わいの中にいた。ネオンサインが消え、太陽の光がアスファルトを照らす時間帯でも、この街が持つ独特の熱量は変わらない。


「見て、和也さん! あのビルの巨大なキング・オブ・ブレンダーズの看板……如月重工がスポンサーになって、AR(拡張現実)広告にアップデートしたのよ。スマホをかざすと、ウイスキーがグラスに注がれる音が聞こえるはずだわ」


怜奈が誇らしげに、自社技術を誇示する。彼女にとって、ビジネスの成果を見せることは、自分という人間の「有能さ」を和也に認めてほしいという、健気な自己アピールでもあった。


「……確かに、面白いな。でも、今日は仕事の話は抜きだ。怜奈、お前の『有能な経営者』としての顔は、もう十分知ってる。今は、ただの女の子として楽しめよ」


「なっ……! だから、私は最初からそうしているわよ! ほら、結衣、あっちのクレーンゲームに、あなたの好きそうな始祖文明風のぬいぐるみがあるじゃない! 行くわよ!」


怜奈は顔を林檎のように赤く染め、照れ隠しに結衣の手を引いてゲームセンターへと駆け込んだ。彼女の背中は、普段の「鉄の女」とは程遠い、弾むような軽やかさを見せている。


和也はその後ろ姿を眺めながら、不意に視線を横に落とした。そこには、人混みの中でも一歩下がった位置で、周囲に鋭い——それでいて静かな——視線を走らせる凪がいた。


「凪。お前もだぞ。……刀の柄に手をかけるのは、せめてモンスターが現れてからにしてくれ」


「……申し訳ありません、会長。……癖、といいますか。……この平和が、偽物のように思えてしまうのです。……貴方の隣にいる時ほど、その平穏を失うのが……怖い」


凪が、ふと漏らした本音。彼女にとって、和也は単なる主君ではない。戦うことしか知らなかった自分に、アイスクリームの甘さや、春の風の心地よさを教えてくれた「光」そのものだ。光が強ければ強いほど、その影にある漆黒の破滅を、彼女は本能的に警戒してしまう。


「大丈夫だ。もし何かが起きても、俺が全コードを書き換えてでも、お前の『日常』は守ってやる。……だから、今はその手を解け。……な?」


和也が、凪の握り締められた右手に、自分の手をそっと添えた。

 瞬間、凪の肩から力が抜ける。彼女の白い指先が、和也の手の熱を吸い込むように、ゆっくりと開かれた。


「……はい。……会長。……貴方の、仰る通りに」


凪の頬が、春の夕暮れを先取りしたように微かに色づく。それは、最強の護衛が、一人の「少女」へと立ち返った瞬間だった。


ゲームセンターの中は、喧騒と電子音の嵐だった。

 結衣が、最新のVR体感ゲームの筐体を見つめて、瞳をキラキラと輝かせている。


「わあ……! これ、始祖文明の宇宙戦ドッグファイトをシミュレートしてるんだ! 和也くん、見て見て! 私、これのソースコード、ちょっとだけ覗いたことあるけど、処理がすごく最適化されてるんだよ!」


「結衣、遊びに来てまでソースの話か? ……まあ、俺も気になるがな」


和也が苦笑して結衣の隣に立つ。結衣は、和也が自分の趣味——たとえそれが世間一般からは「オタク」と言われるような技術への執着であっても——を決して否定せず、むしろ同じ目線で楽しんでくれることに、深い幸福を感じていた。


「……えへへ。……和也くんと一緒にゲームできるなんて、夢みたい。……私、ずっと一人で、暗い部屋でモニターだけを見てたから。……世界って、こんなにうるさくて、あったかいんだね」


結衣が、和也の腕に顔を埋めるようにして呟く。彼女にとっての「バグのない完璧な世界」とは、演算の中にあるのではなく、今この瞬間、自分を優しく受け入れてくれる和也の「腕の中」にあるのだ。


四人が一頻り遊び終え、すすきのの路地裏にある、隠れ家のようなジンギスカン屋に腰を下ろした頃、外はゆっくりと黄昏に染まり始めていた。

 

 ジュージューと音を立てて焼ける肉の香りが、店内に立ち込める。

 和也は、キンキンに冷えたジョッキを手に取り、全員を見回した。


「……えー。……皆、今日は付き合ってくれてありがとう。……帝国との戦いが終わって、こうして飯が食えるのも、全部お前らのおかげだ。……乾杯」


「乾杯!!」


ジョッキとグラスが触れ合う、心地よい音。

 怜奈は贅沢な肉を頬張り、結衣は野菜を和也の皿に盛り、凪は黙々と、しかし幸せそうに肉を噛みしめる。

 そしてエリスは、ホログラムでありながら、和也の隣でその場の空気データを慈しむように微笑んでいた。


だが、宴が盛り上がる中、和也はふと気づいた。

 店内に流れる古いBGMに混じって、自分のスマホが、耳鳴りのような微かな「高周波」を発していることに。


(……気のせいか? ……いや、これは……)


和也がポケットに手を入れた瞬間、エリスのホログラムが、一瞬だけノイズを走らせて歪んだ。


『マスター。……「休日の終わり」を告げるパケットが、外宇宙から届いたようです』


エリスの声が、これまでの和やかなトーンから、瞬時に「戦闘OS」のものへと切り替わる。

 和也の視線の先、箸を止めた怜奈、凪、結衣の三人も、空気の変化を敏感に察知し、その瞳に「戦士」の輝きを取り戻していた。


休日は、終わろうとしていた。

 だが、それは絶望の始まりではない。

 この絆を守るための、新しい「デバッグ」の始まりだった。

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