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第1章:新たなる仲間と試練



1節 新たな町への旅立ち


「大地、準備はできた?」


ティリアの澄んだ声が耳に響く。俺は冒険者ギルドで受け取った報酬を確認しながら、頷いて答えた。


「もちろんだ。……にしても、このタイミングで次の町に向かうなんて、俺たちも随分タフになったよな。」


王都ラグスフィアを出発して、次の目的地は北東に位置する交易都市リベルナ。王都での魔物の大群討伐から数日が経ち、俺たちは次の冒険へ向けて動き出していた。


理由はシンプルだ。ティリアがギルドを通じて受け取ったある「手紙」がそのきっかけだった。


「“リベルナで奇妙な事件が発生。冒険者の力が必要。”……って、本当にそれだけ?」


手紙を読み返しながら俺が疑問を口にすると、ティリアは少し困った顔をしながら答えた。


「細かい内容は書かれていないわ。でも、この手紙を送ってきたのは私の知り合いよ。彼がこんな曖昧な情報を送るなんて、よほどのことが起きているはず。」


「知り合いって、どんな人?」


「リベルナのギルドマスターをしている人よ。少し変わり者だけど、信頼できる人。」


そう言われると、無視するわけにはいかない。俺たちはリベルナへの旅を決意し、準備を整えていたのだ。


王都を出て数時間、俺たちは北東の街道を歩いていた。この辺りは平原が広がり、風が気持ちいい。ただ、その穏やかさの中に微かな不安が混じっているのを感じた。


「大地、周囲に気を配りなさい。」


「え、何かいるのか?」


「いいえ。ただ、何もないことが不気味なのよ。この辺りの街道は盗賊や野生のモンスターが出やすい場所として有名だから。」


「うわ、それ早く言ってくれよ……!」


俺が慌てて周りをキョロキョロし始めると、ティリアがクスリと笑った。


「そんなに慌てなくても、私がいるから大丈夫よ。」


その言葉に少しホッとしながらも、俺は気を引き締め直した。魔物の大群を何とか乗り越えたけど、この異世界ではまだまだ危険が山積みだ。


しばらく歩き続けていると、遠くから馬車の音が聞こえてきた。ゆっくりと近づいてくるその馬車には、商人らしき男と、護衛と思われる剣士が乗っていた。


「おや、あなたたちもリベルナへ向かう冒険者ですかな?」


馬車に乗った商人が気さくに声をかけてくる。その笑顔に警戒心が薄れ、俺は素直に答えた。


「ええ、そうです。リベルナで依頼があって。」


「そうですか。実は私たちもリベルナへ向かっている途中です。よろしければ、一緒にどうですかな?街道は物騒ですからな。」


商人の提案に、俺は少し迷った。確かに一緒に行けば安全性が増すかもしれない。でも、知らない人と行動を共にするリスクもある。


「大地、どうする?」


ティリアが俺に判断を任せてきた。俺は彼女の視線を感じながら少し考え――そして答えた。


「一緒に行きましょう。警戒は怠らないけど、協力できる相手がいるのは助かるから。」


「ふむ、賢明な判断ですな!」


商人は満足げに頷き、俺たちは馬車と共にリベルナへの旅を続けることになった。


しかし、その旅路は穏やかではなかった。


馬車が街道を進んでからしばらくした頃、不意に周囲の空気が変わった。木々がざわめき、どこからか低い唸り声が聞こえてくる。


「大地……来るわ。」


ティリアが素早く弓を構え、ナヴィが肩から跳び下りて警戒態勢に入る。俺も剣を握りしめ、音のする方向を睨んだ。


「何だ……何が来るんだ?」


その瞬間――


――ガサガサッ!!


茂みの中から飛び出してきたのは、巨大な狼型のモンスターだった。普通の狼とは明らかに違う、真っ黒な毛並みと赤く光る目。その数は3体。俺たちを囲むようにじりじりと近づいてくる。


「シャドウウルフ……!」


商人が怯えた声を上げる。どうやらこいつらはこの地域で有名なモンスターらしい。


「大地、1体ずつ確実に仕留めるわよ!」


ティリアが矢を放ち、1体のシャドウウルフに命中する。しかし、狼たちはまるで怯む様子もなく、逆に牙を剥いて飛びかかってきた!


「うわっ!」


俺は剣を振り回しながら必死で応戦する。けれど、敵の動きは素早く、1体倒すのも一苦労だ。


「くそっ、どうすりゃいいんだよ……!」


焦る俺の頭に、あの声が響く――【創造魔法】が発動します。


「よし、これだ!」


俺は頭の中で「強力な防御壁」をイメージした。すると、俺たちを囲むように光のバリアが出現し、シャドウウルフの動きを一瞬だけ封じ込めた。


「ティリア、今だ!」


「わかった!」


ティリアが次々に矢を放ち、俺も剣で追撃する。コンビネーションが上手く決まり、ようやく全てのシャドウウルフを仕留めることができた。


「……ふぅ、何とかなったな。」


息を切らしながら俺が呟くと、ティリアが小さく微笑んだ。


「よくやったわ、大地。私たち、少しずつだけどいいコンビになってきたわね。」


その言葉に、俺は少しだけ誇らしい気持ちになった。


こうして、俺たちは無事にリベルナへとたどり着いた。しかし、そこで待っていたのはさらなる謎と危機――交易都市を揺るがす陰謀だった。



2節 リベルナでの奇妙な事件


リベルナに到着した俺たちは、まず目に入った町の賑わいに圧倒された。王都ラグスフィアと違って、ここは交易都市。周囲の村や他国との貿易が盛んなため、道には行商人や旅人が行き交い、屋台や露店が所狭しと並んでいる。


「すげぇ……人が多いな。」


俺が感嘆の声を上げると、ティリアは周囲に目を配りながら冷静に言った。


「賑やかなのはいいけど、気を抜かないで。リベルナには怪しい連中も多いのよ。」


「怪しい連中って、どんな?」


「盗賊、詐欺師、密輸商人……あと、最近では“失踪事件”も起きているらしいわ。」


「失踪事件……?」


ティリアの言葉に俺は眉をひそめた。


「ええ、ここ数週間で冒険者や商人が突然姿を消す事件が相次いでいるの。しかも、普通の事件じゃ説明がつかないほど不自然な消え方をしているらしいわ。」


「不自然って……どういうことだよ?」


「消えた人たちの足跡や手掛かりが一切ないの。それに、目撃証言も全然ないみたい。」


「そ、それって……なんか怖いな。」


ティリアの話を聞きながら、俺は町を歩く人々を見渡した。にぎやかな雰囲気の裏に、何か不穏な空気が漂っているように感じた。


「とにかく、まずはギルドに向かいましょう。今回の依頼の詳細を聞く必要があるわ。」


ギルドの建物は、町の中心にある広場に面していた。王都のギルドとはまた違った趣で、豪華な装飾が施された外観はまるで貴族の館のようだ。


中に入ると、そこはさらに洗練された雰囲気で、ギルド職員が整然と仕事をしている姿が目に入った。冒険者たちも騒がしくはなく、どこか落ち着いた感じだ。


「……王都のギルドとは随分違うな。」


「リベルナは商人が多いから、ギルドもそれに合わせて洗練されているのよ。」


ティリアがそう説明する中、奥から一人の男性が俺たちに近づいてきた。中年の紳士といった雰囲気のその人物は、落ち着いた口調で言った。


「やあ、ティリア。待っていたよ。」


「久しぶりね、カイル。」


彼こそが、ティリアの知り合いであり、このリベルナのギルドマスターを務めるカイルだった。どこか柔らかい笑みを浮かべているけど、その目には鋭い光が宿っている。


「君がティリアに同行している冒険者かな?如月大地君、だったかな?」


「えっ、俺の名前知ってるんですか?」


驚く俺に、カイルは軽く笑った。


「ティリアから手紙で聞いていたよ。異世界から来た冒険者だとね。非常に興味深い話だ。」


「そ、そうなんですか……。」


異世界から来た話はまだ信じられない人もいるだろうと思っていたけど、カイルは俺を疑う素振りすら見せなかった。それどころか、俺をじっと観察するような目で見ている。


「さて、今回君たちを呼んだのは、リベルナで発生している“奇妙な事件”についてだ。」


カイルが深刻な表情に変わり、椅子に腰を下ろして本題を語り始める。


「この町では最近、冒険者や商人が失踪する事件が相次いでいる。しかも、それらの事件は単なる犯罪ではなく、何か“異質なもの”が関係している可能性が高い。」


「異質なもの……?」


ティリアが眉をひそめると、カイルはさらに続けた。


「失踪者が消えた現場を調査した冒険者の報告によると、魔法陣の痕跡が残っていたらしい。そして、その魔法陣からは強力な魔力が検出された。」


「魔法陣……それって、誰かが意図的に失踪を引き起こしているってことですか?」


俺の質問にカイルは頷く。


「その可能性が高い。だが、犯人の目的や正体については全く分かっていない。そして、昨日もまた新たな失踪事件が発生した。」


「……場所は?」


ティリアが尋ねると、カイルは手元の資料を確認しながら答えた。


「町の北側にある古い倉庫だ。今は使われていない廃墟だが、そこに最近まで人が出入りしていた形跡があったらしい。」


「わかったわ。まずはそこに向かいましょう。」


ティリアが即答すると、カイルは小さく頷いた。


「頼む。君たちの力を借りたい。」


こうして俺たちは、リベルナの奇妙な事件の謎を追うため、古い倉庫へと向かうことになった。


「ティリア……これ、絶対危険なヤツだよな。」


「ええ。でも、避けては通れないわ、大地。」


彼女の真剣な声に、俺も気持ちを切り替える。これはただの冒険じゃない。何か大きな陰謀がこの町で動いている――そんな予感がしてならなかった。



3節 古い倉庫の調査


リベルナの北側にある廃倉庫は、町の賑やかさとは正反対の不気味な空気に包まれていた。長い間放置されていたのだろう。木材の一部は腐り、壁にはツタが絡まっている。夕暮れ時の薄暗さも相まって、ホラー映画に出てきそうな雰囲気だ。


「……嫌な感じね。」


ティリアが弓を構えながら、周囲を警戒している。ナヴィもティリアの肩の上で、耳をピンと立てて周囲を見渡している様子だ。


「なあ、ティリア。やっぱりこういうの、夜にやるのはやめたほうがよかったんじゃないか?」


俺は剣を握りしめながら、心の中に広がる不安を隠せないでいた。暗いところで何が出てくるかなんて、わかるわけがない。


「夜だからこそ、動きがある可能性が高いのよ。失踪事件が起きたのはすべて夜だったわ。」


「そりゃそうだけどさ……怖ぇもんは怖ぇんだよ。」


俺がぼやくと、ティリアは小さく笑った。


「大地、怖がりすぎよ。でも……警戒はしておいたほうがいいわね。」


俺たちはお互いに頷き合いながら、倉庫の中へと足を踏み入れた。


倉庫の内部は外観以上に荒れていた。崩れた木箱や錆びた道具が散乱し、床には砂と埃が積もっている。それでも、ティリアがカイルから聞いた通り、最近人が出入りした形跡があるようだった。


「見て、大地。あそこ。」


ティリアが指さした先には、床に描かれた魔法陣があった。複雑な紋様が赤黒く光を放っていて、見ているだけで体がざわざわするような気味の悪さを感じる。


「これが……失踪事件の原因?」


俺は恐る恐る魔法陣に近づく。床には古い血痕のような染みもあり、異様な雰囲気を醸し出していた。


「触らないで、大地。これは普通の魔法陣じゃない。強力な呪術の跡だわ。」


「呪術……って、具体的には?」


「人を異空間に転移させるものか、あるいは……生け贄として何かに捧げるためのものかもしれない。」


ティリアの言葉に思わず背筋が凍る。


「おいおい、生け贄って……やばいだろそれ!」


「静かに。」


ティリアが素早く手を上げて俺を制止した。その鋭い視線が、倉庫の奥へと向けられる。


「……何か来るわ。」


俺も息を呑みながら剣を構える。暗闇の奥から、重い足音が響いてくる。そして――


「グルルル……」


姿を現したのは、真っ黒なローブをまとった人影だった。ただの人間ではない。全身から漂う邪悪な気配が、その正体が「人ならざるもの」であることを物語っている。


「……魔術師か?」


俺が呟くと、ティリアが弓を引き絞りながら答える。


「たぶん、呪術を扱う何者かね。大地、準備して。」


ローブの男は無言のまま、魔法陣の中央に手をかざした。その瞬間、魔法陣が強烈に輝き始め、異様な風が倉庫内を吹き抜ける。


「おいおい、何か始まるぞ!?」


「止めるわよ、大地!」


ティリアが矢を放つ。しかし、矢はローブの男の前で謎の障壁に弾かれ、全く届かない。


「くそっ、防御魔法か!」


「大地、正面は任せて!あなたは隙を見て攻撃して!」


ティリアの声に頷き、俺は剣を握り直してローブの男に近づく。が、突然、魔法陣からモンスターが次々と現れ始めた。


「うわっ、なんだこれ!?」


出てきたのは複数のシャドウウルフや、骸骨の兵士のようなアンデッドたち。俺たちを囲むように配置され、じりじりと迫ってくる。


「大地、こいつらを片付けるわよ!」


「わかった!」


俺は剣を振り下ろし、次々に襲いかかるモンスターを倒していく。けれど、数が多すぎてキリがない。


「くそっ……何か方法はないのか!?」


その時、頭の中にあの声が響いた。


【創造魔法】が発動します。想像したものを具現化します。


「そうだ、これしかない!」


俺は必死にイメージを描いた。周囲のモンスターを一掃し、魔法陣を止めるための強力な武器――そして、頭に浮かんだのは、巨大な爆発を起こせる魔力の矢だった。


「頼む……成功してくれ!」


俺の手に光が集まり、一本の輝く矢が現れる。それをすかさずティリアに渡した。


「ティリア、これを使え!」


彼女は矢を受け取り、すぐに弓につがえる。そして、魔法陣の中央に立つローブの男を狙い――


「……当たれ!」


ティリアが放った矢は、強烈な光を放ちながら魔法陣の中心に命中した。その瞬間――


――ドガァァァンッ!!


眩しい光と共に爆発が起こり、魔法陣とローブの男は跡形もなく消え去った。周囲のモンスターたちも同時に光の粒となって消滅していく。


「やった……!」


俺はその場にへたり込むと、大きく息をついた。ティリアも弓を下ろし、静かに俺の隣に腰を下ろした。


「……お疲れさま、大地。」


「いや、マジでキツかった……。でも、なんとかなったな。」


「ええ。でも、これで全て終わったわけじゃないわ。」


ティリアの言葉に、俺も改めて気を引き締める。この事件の黒幕や目的はまだわかっていない。これはただの始まりに過ぎない――そんな気がしてならなかった。


「……大地、次に備えて準備を整えましょう。」


「ああ、そうだな。」


こうして、俺たちはリベルナの奇妙な事件をひとまず解決した。しかし、さらなる謎と危険が、すぐそこまで迫っていることをまだ知らなかった。



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