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第3章:大きな試練


1節 王国の危機


「ねぇ、大地。これ、本当にまずい状況よ。」


ティリアのいつも冷静な声が、珍しく焦りを含んでいる。俺たちが王都ラグスフィアに戻った翌日、ギルドから緊急の呼び出しを受けた。そしてギルド本部に駆け込んだ俺たちは、ギルドマスターから信じられない話を聞かされることになる。


「この国の南部で魔物の大群が出現した。報告によると、すでに小さな村がいくつか壊滅したらしい。」


ギルドマスター――50代半ばくらいの渋いオヤジ――が深刻そうに話す。その場にいた冒険者たちは一様に騒然とし、ざわめきが広がった。


「魔物の大群……?」


俺も思わず呟く。ギルドで受けた依頼で、スライムや狼型のモンスターを相手にしてきたけど、それとは規模が違いすぎる。


「具体的にはどれくらいの数なんですか?」


ティリアが鋭く尋ねる。彼女の声に緊張が走る中、ギルドマスターは答えた。


「確認された魔物は少なくとも500体。しかも、その中心には“オーガロード”と呼ばれる大型の指揮官級モンスターがいるという報告だ。」


「500体……しかもオーガロードだと!?」


その言葉に、俺の隣にいたベテランっぽい冒険者が驚きの声を上げる。どうやらその「オーガロード」というモンスターは相当ヤバい存在らしい。


「普通の軍隊が対応するんじゃないのか?」


俺が恐る恐る口を挟むと、ギルドマスターは苦い顔をして答えた。


「本来ならその通りだが、南部には今、十分な兵力がない。王都からの増援が届くまでには時間がかかる。それまでに奴らがさらに被害を広げれば、この国全体が危機に陥るだろう。」


つまり、冒険者ギルドに早急な対応を求めているってことか。俺の胸に緊張が走る。


「当然、全冒険者に協力を呼びかける。討伐に参加してくれる者は、ギルドの名誉に応じて報酬を支払うつもりだ。」


ギルドマスターの声が響くと、周囲の冒険者たちから次々に声が上がる。


「冗談じゃねぇ!500体なんて相手にできるか!」

「オーガロードなんて大物、俺たちじゃ歯が立たねぇよ!」

「さっさと軍隊を呼んでこいよ!」


その場の雰囲気は明らかに拒否ムードだった。まぁ、無理もない。俺だって聞いただけで逃げ出したいくらいだ。


だが――。


「……私は行く。」


静かにそう告げたのはティリアだった。その言葉に場の空気が一瞬にして変わる。


「ティリア、お前、本気か?」


俺が驚いて尋ねると、彼女は鋭い目で俺を見返す。


「当然よ。魔物の大群がこのまま放置されれば、王都も安全ではいられない。それに、私には“この国を守る理由”があるの。」


「理由……?」


詳しく聞きたかったけど、ティリアはそれ以上は何も言わなかった。ただ、その目は何か決意を秘めているように見えた。


「ティリアが行くなら……俺も行く。」


気がつけば俺はそう言っていた。自分でも驚いたけど、隣で困っている彼女を放っておける気がしなかったんだ。


「……本当に大丈夫なの?大地。」


ティリアが少し意外そうに俺を見る。俺だって自信はない。でも、ここで何もしないで見ているだけなんて、後で後悔するに決まってる。


「俺は冒険者なんだろ?少しは役に立ちたいんだよ。」


そう答えると、ティリアはほんの少しだけ笑みを浮かべた――いや、気のせいかもしれない。


「……なら、一緒に行きましょう。」


そのやり取りを見ていたギルドマスターは、満足げに頷いた。


「他に参加する者がいればすぐに準備を整えろ。隊を編成して南部に向かう。君たちの勇気に期待しているぞ。」


こうして俺たちは、王国を脅かす魔物の大群との戦いに向かうことになった。俺にとって初めての大規模な戦い――そして、この異世界での本当の試練が始まるのだった。



2節 真の力の目覚め


「……こいつら、やばすぎる。」


俺は息を切らしながら剣を構え直した。目の前には、無数の魔物たち――オーガ、ゴブリン、巨大な狼型モンスターが蠢いている。どこを見ても敵、敵、敵だ。


南部の平原地帯で待ち構えていた魔物の大群。それを見た瞬間、俺は本気で逃げ出したくなった。だが、もう後戻りはできない。


「大地、右から来る!」


ティリアの鋭い声が響く。俺は慌てて右を振り返り、迫ってくるゴブリンに向けて剣を振り下ろした。


「よし、やった!」


なんとかゴブリンを倒したものの、その直後に別の魔物――オーガが迫ってくる。その巨体に思わず足がすくんだ。


「うわっ、でかすぎ!」


「大地、下がって!」


ティリアが俺を庇うように弓を引き、素早く矢を放つ。それがオーガの顔面に命中し、巨体が一瞬だけ怯む。


「……助かった。」


「油断しないで。これで終わりじゃないわよ!」


ティリアの言葉通り、敵の数はまだまだ減らない。ギルドの冒険者たちが懸命に戦っているけど、次々と倒れていく。


「やばい、これじゃ全滅する!」


焦る俺の耳に、ティリアの冷静な声が届く。


「大地、あなただけが頼りよ。あなたのスキルなら、突破口を開けるはず。」


「俺のスキル……」


ティリアの言葉にハッとする。そうだ、俺には【創造魔法】がある。このスキルで何とかできるかもしれない――いや、やるしかない!


「よし、試してみる!」


俺は剣を握りしめ、必死で頭を働かせる。この状況で必要なのは――そうだ、もっと大きな武器だ!俺一人でも多数の敵を倒せるような武器!


「想像しろ……強力な武器を……!」


頭の中でイメージを描く。巨大な槍――いや、もっと広範囲を攻撃できる武器。炎をまとった――そうだ、爆発する矢だ!


「これでどうだ!!」


叫びと共に、俺の手に光が集まり、やがて一本の矢が現れた。それは赤く輝き、燃え上がるような熱を感じさせる。


「ティリア!」


俺は矢を掲げてティリアに声をかける。彼女は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに理解したように頷く。


「その矢、貸して!」


俺は矢をティリアに手渡す。彼女はそれを素早く弓につがえると、狙いを定める。


「いけっ……!」


ティリアの手から放たれた矢は、炎の尾を引きながら空を裂き、大群の中心に突き刺さった。次の瞬間――


――ドガアアアアアアン!!


凄まじい爆発音と共に、炎が一帯を覆い尽くす。中心にいた魔物たちが次々に燃え上がり、灰となって消えていく。


「……すげぇ……!」


俺は思わずその光景に見入った。自分のスキルがここまでの威力を発揮するとは思わなかった。


「大地、よくやったわ!」


ティリアがこちらを振り返りながら微笑む。その顔には確かな信頼が感じられた。


「……でも、まだ終わってない。」


ティリアの言葉に我に返る。炎に包まれたエリアの奥から、黒い影がゆっくりと現れた。それは――


「……オーガロード……!」


他の魔物とは桁違いの威圧感を放つ巨体。鎧のような筋肉に包まれたその姿を見た瞬間、全身に冷たい汗が流れる。


「ティリア、これ倒せるのかよ……!?」


「倒すしかないわ。」


彼女は弓を再び構え直す。その横で、俺も剣を握り直し、気持ちを奮い立たせる。


「……わかった。俺もやる!」


「当然よ、大地。」


こうして俺たちは、オーガロードとの最終決戦に挑むことになった――。


3節 新たなる旅の始まり

「大地、来るわよ!」


ティリアの鋭い声が飛ぶ。その声に呼応するように、目の前の巨体――オーガロードが地響きを立てながら突進してきた。その勢いと圧力に、俺は本能的に身を引いた。


「うわっ、でかすぎだろこれ!」


まるでトラックが突っ込んでくるような威圧感だ。しかも、両手に握られた棍棒なんて、軽く振り回しただけで建物を壊せそうな代物だ。


「逃げないで、大地!」


ティリアが俺を叱咤する。俺も恐怖で固まりかけた体を奮い立たせ、剣を構え直した。


「わかってる……でも、どうすりゃいいんだよ!?」


オーガロードの棍棒が振り下ろされる。俺は間一髪で横に飛び退き、土煙を上げる衝撃波をなんとか回避した。だが、次の瞬間、振り上げられた棍棒が俺の剣と衝突する。


――ガキィンッ!!


「っ、重っ!」


両腕が痺れるほどの衝撃が伝わる。まともに受け止めるなんて無理だ。力の差が絶望的すぎる。


「大地!弱点は額の“魔晶石”よ!そこを破壊すれば倒せる!」


ティリアが素早く指示を出してくる。俺はオーガロードの顔を凝視すると、確かに額に紫色の輝きを放つ石のようなものが埋め込まれているのが見えた。


「わかった!でも、あんな高い位置どうやって狙えば……!」


「あたしが支援する!その隙に決めなさい!」


ティリアはすぐに弓を構え、次々と矢を放つ。それらはオーガロードの巨体に命中するが、皮膚が硬すぎてほとんどダメージになっていない様子だ。それでも、オーガロードが矢を嫌がるように動きを止める一瞬の隙を作ってくれている。


(チャンスは今しかない……!)


俺は心を落ち着けて、【創造魔法】を発動させた。狙うは一撃必殺の武器――額の魔晶石を確実に砕ける武器だ!


「頼む、成功してくれ……!」


頭の中で強くイメージした結果、俺の手には光る投げナイフが現れた。それは普段の剣や槍よりも軽く、小さく、けれど強烈な破壊力を秘めているように感じた。


「行ける……これなら!」


俺はナイフをしっかりと握り締め、全力でオーガロードの額を狙って投げつけた。


――スパァンッ!!


鋭い音を立ててナイフは魔晶石に命中し、紫色の光が激しく瞬く。そして――


――ガキィィィン……!


魔晶石が砕け散る音が響き、オーガロードの巨体がガクンと崩れ落ちた。


「倒した……?」


俺は息を切らしながら、崩れたオーガロードを見つめる。すると、その巨体が徐々に光となり、消えていく。


「やった!倒したぞ!」


俺が歓喜の声を上げると、ティリアが静かに歩み寄ってきた。その顔には安堵の色が浮かんでいる。


「よくやったわ、大地。あれがなかったら、私たちは全滅していたかもしれない。」


「いや、ティリアのおかげだろ。俺一人じゃ絶対無理だったよ。」


そう言いながら、俺はぐったりとその場に座り込む。体は疲労で限界に近かったけど、胸の中に広がる達成感はそれを忘れさせてくれた。


王都へ戻った俺たちは、ギルドマスターから直接感謝と報酬を受け取った。魔物の大群を食い止めた功績は大きく、冒険者としての評価も一気に上がったらしい。


「これで少しは冒険者らしくなれたか?」


ギルドの酒場でくつろぎながら、俺はティリアにそう尋ねた。彼女は珍しく柔らかい表情を見せながら、軽く頷く。


「そうね。大地、あなたは成長しているわ。まだ危なっかしいところもあるけど……」


「まだって、結構頑張っただろ!」


俺が抗議すると、ティリアは小さく笑った。


「ふふ、冗談よ。でも、これで終わりじゃないわ。」


「え?」


「今回の魔物の大群……ただの偶然じゃない気がする。」


彼女の表情が再び真剣なものに変わる。その言葉に俺も思わず身を引き締めた。


「偶然じゃないって……どういうことだ?」


「詳しくはわからない。でも、誰かが意図的にこの国を混乱させようとしているように思えるの。」


その言葉に、俺の胸に新たな不安が広がる。同時に、これが俺たちの「新たな冒険の始まり」を告げているような気がした。


「……なるほどな。だったら、次も俺が頑張るしかないか。」


「大地、次も私を頼っていいわ。ただし、足を引っ張らないでね。」


「おいおい、信頼されてるのかバカにされてるのか、どっちだよ!」


俺たちはそんな軽口を叩き合いながら、王都の夜空を見上げた。


こうして、俺の異世界転生冒険譚の第一章――いや、序章が幕を閉じる。そして、この先に待つのはさらなる試練と謎。だけど、俺にはティリアや仲間たちがいる。きっとどんな困難も乗り越えられる――そんな気がしてならなかった。

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