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第2章:失われた遺跡と真実の鍵

1節 新たなる依頼

「やっぱり、あの事件には続きがあったか……。」


リベルナのギルドの一室。俺たちはギルドマスターのカイルと再び顔を合わせていた。例の廃倉庫での呪術の儀式を止めてから数日。俺たちは一度安堵の息をついていたが、それは長く続かなかった。


「……大地、これを見て。」


ティリアが机に置かれた一枚の地図を指差す。そこにはリベルナ周辺の地形が描かれており、いくつかの場所に赤い印が付けられていた。


「これ、何の印ですか?」


「失踪事件が発生した場所だ。」


カイルが静かに答える。その印の数は5つ。廃倉庫を含むリベルナ周辺の各地に散らばっていた。


「これらの事件を調査した結果、いくつかの共通点が見つかった。その一つが“魔法陣”だ。どの場所でも魔法陣が描かれており、強い呪術の痕跡が残されていた。」


「廃倉庫の時と同じってことですか……。」


俺は腕を組みながら考え込む。この手の事件が他にも起きているとなると、単なる偶然では済まされない。


「それだけじゃない。」


カイルはさらに地図の中央を指差す。その場所には赤い印ではなく、大きな円が描かれていた。


「全ての失踪事件が、この円の中心に向かって収束していることがわかった。」


「中心……って、ここ?」


俺はその場所を指差す。そこには何も記載されておらず、空白のままだった。


「ええ。地図上では何も記されていないが、そこには“失われた遺跡”があるとされている。今ではほとんど伝説のように語られる場所だが、事件を追う中でここに何かが隠されているとしか思えない。」


「……遺跡か。」


遺跡と聞いて、俺の胸に一抹の不安が広がる。これまでの冒険と比べても、明らかにスケールが大きい話になりそうだ。


「そして、その遺跡を調査するために、君たちの力を借りたい。」


カイルが俺たちをじっと見つめる。その目にはただ事ではない緊張感が宿っていた。


「……どうする、大地?」


ティリアが俺に問いかける。その目は、すでに腹をくくっているように見えた。


「俺たちがやらなきゃ誰がやるんだって話だよな。」


俺は剣の柄を軽く握りながら答えた。


「行こう、ティリア。遺跡で何が起きてるのか確かめるしかない。」


その言葉に、ティリアは小さく頷いた。


2節 遺跡への道

翌朝、俺たちはリベルナの北東に位置する山間部に向かって出発した。カイルの情報によると、遺跡への道は険しく、かつモンスターが多い危険なエリアらしい。


「山道か……また体力勝負になりそうだな。」


俺がボヤくと、ティリアがクスリと笑った。


「大地、少しは鍛えられたんじゃない?この間の戦いで結構動けてたわよ。」


「いやいや、あれは必死だったからだって……俺、まだ普通の高校生なんだぞ?」


「普通の高校生が異世界で魔物を倒してる時点で、もう普通じゃないわ。」


「ぐっ……確かに。」


俺たちは軽口を叩き合いながら山道を進む。だが、その平穏は長くは続かなかった。


「大地、止まって!」


ティリアが手を挙げて警戒態勢に入る。ナヴィが彼女の肩から飛び降り、周囲を見回す。その動きに、俺も剣を構えた。


「来るぞ……!」


次の瞬間、茂みの中から飛び出してきたのは――巨大な熊のようなモンスターだった。全身を覆う黒い毛並みと鋭い牙。その目は赤く輝いており、明らかにただの動物ではない。


「シャドウベアー……!」


ティリアが素早く弓を引く。その矢はモンスターの肩に命中するが、致命傷には至らない。


「くそっ、こいつ硬ぇ!」


俺も剣を振り下ろすが、その一撃をシャドウベアーは鋭い爪で受け止める。その力に押され、俺は一瞬ひるんだ。


「大地、下がって!」


ティリアが叫ぶと同時に、ナヴィがシャドウベアーの顔に飛びかかる。その小さな体が敵の注意を引きつける隙に、ティリアは再び矢を放った。


「ナイス、ティリア!」


その矢は見事シャドウベアーの喉元を貫き、巨体が崩れ落ちる。


「……危なかったな。」


俺が息を整えながら言うと、ティリアは弓を下ろしながら小さく笑った。


「少しは落ち着きなさい、大地。これからが本番よ。」


その言葉に、俺は改めて気を引き締めた。


山道を進む中、俺たちはいくつかのモンスターに襲われながらも、何とか目的地へと近づいていく。そして、ついに遺跡の入り口にたどり着いた。


目の前に広がるのは巨大な石造りの門。長い年月を経て崩れかけているものの、その荘厳な雰囲気は圧倒的だった。


「ここが……遺跡か。」


俺が見上げながら呟くと、ティリアは真剣な表情で門を見つめていた。


「行くわよ、大地。この奥に何が待ち構えているのか……確かめるしかない。」


「……わかった。」


俺たちは剣と弓を構え、遺跡の中へと足を踏み入れた――。



3節 遺跡に潜む罠


「……暗いな。」


遺跡の中に足を踏み入れた瞬間、周囲を覆う圧倒的な暗闇に俺は思わず呟いた。外の光はほとんど届かず、壁や床も湿気で滑りやすくなっている。冷たい空気が肌を刺すようで、ただ歩いているだけで背筋がゾクゾクした。


「ここ、本当に安全なのか?」


「安全な遺跡なんてないわよ、大地。」


ティリアが冷たく言い放ちながら、慎重に周囲を見渡す。その手にはすでに弓が握られており、いつでも攻撃できる態勢だ。肩の上のナヴィも耳をピンと立て、警戒している。


「まぁ、確かにそうだけどさ……なんか嫌な感じがするんだよな。」


俺は剣を構えながら足元に気をつけて歩く。


遺跡の中は不気味なほど静かだった。壁には謎の模様が彫られており、時折、古びた石像や壊れた壺が目に入る。それらがさらにこの場所の異様さを強調しているようだった。


「この遺跡、本当にただの廃墟なのか?」


俺が尋ねると、ティリアは目を細めながら答えた。


「カイルの話だと、この遺跡は“古代魔術師たち”が使っていた場所だと言われているわ。何らかの儀式や実験が行われていた可能性が高いわね。」


「古代魔術師って……また面倒な設定出てきたな。」


「その“面倒”を調べるのが私たちの仕事でしょ?」


ティリアの言葉に、俺はため息をつきながら「そうだな」と返すしかなかった。


しばらく進むと、大きな空間に出た。広間のような場所で、中央には巨大な魔法陣が描かれている。赤黒い光がうっすらと浮かび上がっていて、何か禍々しい気配を放っていた。


「……魔法陣だ。」


俺が呟くと、ティリアは弓を構えたまま慎重に近づいていく。


「この魔法陣、最近描かれたもののようね。これが“儀式”に使われている痕跡だわ。」


「ってことは、誰かが今もここを使ってるってことか?」


「ええ、その可能性が高いわ。」


ティリアがそう答えた瞬間――


――ゴゴゴゴゴッ……


地面が揺れ、魔法陣が赤く輝き始めた。遺跡全体が不気味な音を立てて震える。


「何だよ、何が起きた!?」


俺が叫ぶと、魔法陣の中心に黒い影が現れた。それは徐々に形を成し、やがて巨大な鎧をまとった騎士のような姿へと変わった。


「シャドウナイト……!」


ティリアがその名を呟く。


「大地、準備して!こいつはただのモンスターじゃないわ。高度な呪術で作られた“魔法生物”よ!」


「そりゃまた厄介そうだな……。」


俺は剣を握りしめ、シャドウナイトに向き合った。鎧をまとった巨体からは凄まじい威圧感が伝わってくる。武器は大剣で、その刃には黒い炎のような魔力が宿っているようだ。


「来るぞ!」


ティリアの声と同時に、シャドウナイトが突進してきた。そのスピードは巨体に似合わず速い。俺はギリギリで横に飛び退き、その攻撃をかわす。


――ドガァンッ!!


シャドウナイトの大剣が地面を叩きつけ、衝撃で石の床が砕け散る。


「やばっ……こんな攻撃まともにくらったら終わる!」


「大地、私が注意を引く!その隙に攻撃して!」


ティリアが矢を放ち、シャドウナイトの注意を引く。その間に俺は剣を構え直し、背後に回り込もうとするが――


「うわっ!」


シャドウナイトは素早く振り向き、大剣を振り回してきた。かろうじて避けたものの、その威圧感に再び足がすくむ。


「くそっ、どうすればいいんだ……!」


その時、頭の中にあの声が響いた。


【創造魔法】が発動します。想像したものを具現化します。


「そうだ……これしかない!」


俺は頭の中で「シャドウナイトの防御を貫ける武器」を必死にイメージする。そして、手に現れたのは――細身の槍だった。


「これで……いける!」


俺はシャドウナイトの隙を狙い、槍を投げつけた。それは真っ直ぐ飛び、鎧の隙間に突き刺さる。


――ガギィンッ!!


シャドウナイトの体が一瞬揺れ、動きが鈍くなる。


「今よ、大地!もう一撃を加えて!」


ティリアの声に応じ、俺は剣を握り直し、全力でシャドウナイトに斬りかかった。


――ズバァッ!!


剣が命中し、シャドウナイトの体が光の粒となって消えていく。


「……倒した……!」


俺は息を切らしながらその場に膝をついた。隣ではティリアが静かに弓を下ろしている。


「よくやったわ、大地。でも、これで終わりじゃない。」


「まだ何かあるのか……?」


「ええ。この遺跡に隠された“真実”を突き止めるまで、気を抜かないで。」


ティリアの真剣な声に、俺も再び立ち上がった。ここからが本当の試練なのかもしれない――そんな予感がしてならなかった。

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