ファ・レス攻防戦-1
~ルーア征討艦隊旗艦ブリーフィングルーム~
パーベリーとユーリがキマイラのブリーフィングルームに入る。
パーベリーは空いていた末席に座りユーリもその傍らに腰を降ろした。
辺りを見回すと陸海軍の参謀長や指揮官達が既に集まっていた。
「君がセラフの指揮官か?」
パーベリーは呼び掛けられ誰かと思い振り返ると中将の階級章を付けた1人の男が立っていた。
あわてて2人は席を立ち敬礼をしてみせた。
「はっ!第4セラフ艦隊所属、パーベリー・フォン・クロイツェル近衛中佐であります」
「うむ、私は帝国陸軍第46軍司令官クルト・バイエルライン中将だ。見たところ随分と若いな...まぁ戦に年齢など関係は無い、しっかり励めよ」
「はっ」
クルトは満足そうに頷き自分の席に戻ろうとした時、視界の端に1人の青年士官が目に止まった。
「む...君は?」
「はっ第4セラフ艦隊所属ユーリ・メア・ローゼン近衛大尉であります。」
「ローゼン...とすると君はローゼン財閥の関係者かね?」
「はい、現総裁ガルファ・ローゼンは父にあたります」
「何と!あのガルファの息子か。幼い次男坊がセラフに入隊したとは聞いていたがまさかそれが貴官とはな、世間は狭いものだ」
ガルファと妙に慣れた口調にユーリは怪訝な表情を浮かべる
「閣下は父をご存知なのですか?」
「あぁ、中等部の後輩でな。色々と世話してやったものだ」
どやぁとキメ顔のクルト中将、自分の感情に素直なのだろう悪い人ではないらしい。
「ガルファの息子ならさぞ優秀なのだろう、どうなのだパーベリー君」
「はい、彼は我が艦隊の誇るエースパイロットです。必ずや閣下の力となるでしょう」
「うむ!期待しているぞ」
そう言うとクルト中将は自分の席へと戻り、それと同時にリカルド中将が副官を伴ってブリーフィングルームに姿を現した。
「諸君、お待たせして申し訳ない。ルーアに新たな動きがあったと本国から連絡が入ってね」
「ほう...その動きとは?」
クルトの問いにリカルドは若干眉をひそませながらこう答えた。
「反乱軍にディロス共和国の義勇軍が参加しているらしい」
「なにっ!義勇兵の戦力はどれほどなのだ?」
これにはクルトも驚きを隠せず、他の将官達も動揺している。それはそうだろう、他国の植民地の反乱に義勇兵とは言え実戦部隊を送り込んでくるのは銀河憲章第2条第7項【内政不干渉の原則】違反であり明確な敵対意志の表明とも言える。
「現在確認されているのは航空戦力のみだ。だがいつ陸戦部隊...いや艦隊が派遣されるやも知れん」
「しかしそこまでやりますかな?ディロス共和国は民主主義国家。国民がそれを許さないのでは」
陸軍の参謀が疑問を口にする。が、リカルドはその意見を一蹴した。
「我が国がかつて小マゼラン銀河に対して何をしたか知らぬ訳ではあるまい。ディロスの民はそれを忘れてはいないのだよ。」
それとは帝国全土の学校で必ず教えられる植民地戦争のことだ。
かつて帝国は植民地を求めて小マゼラン銀河を侵略した。
数度の遠征で広大な領域を手中に収めたもののその過程で小マゼランの超大国【ディロス共和国】と戦争が勃発、幾つかの惑星に対して熱核兵器の無制限使用を行い死の星へと変えた過去があるのだ。
それを指摘された陸軍参謀は押し黙ってしまった。
「となると急がねばならん。ディロスが本格的に介入してくるまでにケリをつけなければ」
「その通りだクルト中将、したがって今回の作戦では迅速かつ徹底的に反逆者どもを殲滅せねばならん。」
そう言うとリカルドは副官に合図を出す。
と同時に照明が消え、目の前のディスプレイに作戦の概要が表示された。
「では作戦の説明をおこなう。」
「現在、ファ・レス要塞を包囲している反乱軍は約16万。重砲を用いて攻撃をおこなっている」
「これに対し要塞に立て籠っている友軍は3千、現在は要塞砲で対抗しているがディロス義勇軍の航空攻撃により損耗が激しく、既に要塞の外郭は陥落。内郭も危険な状態にある。」
「よって本作戦の目標は敵包囲網の突破及び味方部隊の救出である。クルト中将」
リカルドに促されクルトが席を立つ
「これより上陸作戦の説明をおこなう。まず、セラフ艦隊の航空戦力を先行して惑星に突入させ要塞上空の制空権を確保、然るのち爆撃によって敵野戦司令部、重砲陣地、物資集積所を破壊して陸戦部隊を投入する。参加兵力は3個歩兵師団と3個戦車大隊及び2個空挺大隊の3万5千とする。」
「これらの戦力を4つに分けその内3部隊はそれぞれ1個歩兵師団と戦車大隊の1万1千とし包囲網の外側3方向から攻撃をおこない、空挺部隊は要塞に突入し中に入り込んだ反逆者共を叩き出す」
「閣下、航空隊の編成は私に一任していただきたいのですが」
突如としてパーベリーがクルト中将に進言した。
クルトは一瞬驚いた表情を見せたが
「勿論だ、貴官に任せる。」
パーベリーの進言を容れた
「他に質問がある者はいるか?」
「ではこれで作戦会議を終了とする、各員作戦準備に入れ」
「航空隊の先鋒はユーリ君に任せようと思っているんだが」
作戦会議が終わり自艦へと戻るシャトルの中にて、パーベリーがそう提案した。
「それは有難いですが他の者が納得しないでしょう」
「初陣ならな。だが、君は実績を残している。他の士官には私から話そう」
「君の蒼いMSL109で反逆者に鉄槌をくだしてやれ」
MSL109...エルデン帝国軍の主力戦闘機




