第374話。アトラス帝国で戴冠式が行われる数日前、マ・リエはルイらを伴って、帝都に入った。瓦礫だらけだったそこは整理され、小山のような建物ができていた。そこから出てきたのは、神金竜ヴァレリアと…。
第374話です。
恐れ多いにも、ほどがあるわ。
そんな私の心中をよそに、それから一か月の後。
アトラス帝国で、新しい皇帝の戴冠式が行われる日の数日前となった。
ルイが自分がついていく、マ・リエを乗せるのは自分だけだと言い張ったので、ユニコーンの姿の彼に乗せてもらってアトラス帝国の帝都に降り立った私は、思わず目を見張った。
私が炎竜の子、リオネルを追って帝都を離れたとき、邪気の弾丸にやられた帝都はほとんど廃墟になっていたと言ってもよかった。
特にほころびの瞳が開き、塔と王城が崩れた中央部は建物の形すらなく、瓦礫の山となっていたはずだ。
数か月が過ぎた今も、瓦礫は片付けられてはいたけれど、建物はほぼなくなっていた。
その、小山のような建物を除いては。
「え? これ、は?」
私の隣で人型になったルイも、驚いて言葉を詰まらせている。
黒鋼竜に乗せてもらって、私たちについてきてくれたサラやダグ、タニアも呆気にとられていた。
その建物は他に何もなくなり、あちこちに瓦礫の山ができている帝都の、かつては王城のあった手前の、広場があった辺りにそびえ立っていた。
広場は確か、帝都で最も広い広場であったはずだ。
だからここには瓦礫がほぼないのね。
けれどその建物は…建物、というより、まるで岩山のような異様さであった。
いきなり地面から生えている、小山のような盛り上がり。
ただ、あちらこちらに窓っぽい穴があったり、扉っぽい石やら、木の板があったから、建物っぽく見えているだけだった。
「これは…何かしら?」
私に続いて、サラやダグ、タニアも口々に声を上げる。
「山…にしては、人工的ね?」
「そうだな。不格好ではあるが、確かに人の手で作られたものだ」
「あれは窓で、あれは入口ですよね?」
ちょうどそのとき、タニアが言った入口、と指示された場所から、ヴァレリア様が何人かの人たちと出てきた。
タニアが示したのは正面にある、逆さにしたU字型の、高さ十メートルくらいありそうな巨大な穴のことだったのだが。
入口なのは間違いなかったらしい。
ヴァレリア様と一緒に出てきた人たちは、それぞれ身なりがバラバラだったので、国や身分が違うことが一目でわかった。
「マ・リエ、ナギ。それにその従者たちよ。よく来たのう」
そう微笑むヴァレリア様の後ろに、知り合いの姿を見つけて、私はほっとした。
「トリスラディ様。お久しぶりです」
それはかつて世話になった、地竜の領主アラル・トリスラディ様だった。
トリスラディ様は進み出てきて、私の手をそっと握り、優しく語り掛けてくれた。
「おお…聖銀様。お体の具合はいかがですか? ほころびの瞳が開き、おひとりで大変なご苦労をなされて…我らはなんの力にもなれずに、無念な思いをしておりました」
トリスラディ様は大きな体を縮めるようにして、うつむいた。(続く)
第374話までお読みいただき、ありがとうございます。
久しぶりにトリスラディに会えましたね。
また次のお話もお読みいただけたら嬉しいです。




