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第373話。立派に務めを果たしたと誉められたマ・リエは、神金竜ヴァレリアに一度帝都に来て欲しいと頼まれる。その日には、新しい皇帝の戴冠式があるのだと。戴冠式、と聞いて驚きあわてるマ・リエは…。

第373話です。

「いいや、そなたは立派に務めを果たしたとも。建物の被害はともかくとして、ほころびの瞳が開いた状態としては、命の損失はわらわも驚くほど少ない。一万年前の、神金と聖銀の数がそろっていた頃と比べてもな」

 その言葉に、私は本当にほっとして、肩の力を抜いた。

 そうしてヴァレリア様は私を優しくなだめてくれた後、一度帝都に来て欲しいと言い出した。

「今度、戴冠式を執り行うこととなってな。わらわも折り入ってそなたに頼みがあるゆえ、こちらに来てはもらえぬか?」

 私は驚いて聞き返す。

「えっ? 戴冠式…です、か?」

 戴冠式…戴冠式?

 一体誰のための?

 というか、どうして?

 ヴァレリア様が言っているのだから、アトラス帝国の、だよね?

 私に出席しろ、ということ? なんで?

 私の知り合いで、王様になる人なんていたかしら?

 それから私の脳裏に、子供のころにテレビで見た、某国のきらびやかで荘厳な戴冠式の様子が思い出され、ぐるぐると回る。

 えっ、いや、いやいやいや無理。パンピーな私には、そんな立派な席に出るなんて無理よ?

 だって制服で出た卒業式と、一番安いレンタルスーツで行った成人式くらいしか、お堅い席には出たことなんてないのよ?

 一人でひそかにあたふたしていると、クスクス、と笑う声がした。

 振り返ったが、私があわてていることを誰も気づいてはおらず、誰も笑ってなどいない。

 …あ。

 そっか、ナギね。

 よく考えると、笑い声は私の頭の中でしているのだった。

 思わず赤くなる私に、さすがに気づいたのだろう。

 ヴァレリア様がふふふ、と笑って言った。

「よもや、衣装が気になるのか? 今世の聖銀は可愛いのう」

「そっそんな、ヴァレリア様」

 両手をぶんぶんと振る私に、ヴァレリア様は微笑んだ。

「心配せずとも、衣装はこちらで用意するとも。そなたはその身ひとつで来てくれればいいのじゃ。戴冠式とは言っても、帝都が邪気で破壊された今の状況では、そんな大仰なものではないしな」

「そ…そう、なのですか?」

 そうは言われても、やっぱり心配なのだけれど。

「うむ。新しい皇帝の、顔つなぎのようなものよ。他国からの王族や貴族は来るが、まあ気楽にしてくれてよい」

「は…はい…」

 ほんとは衣装の問題だけじゃ、ないんだけどな。

 私はただの一般人だったのよ?

 そりゃこの世界に来て、聖銀竜のナギと融合して、歌うことでいろんなことを解決してはきたけれど。

 私にしてみれば、歌ってきただけで、治癒とか浄化とかは私の中のナギの力なのに。

 私はただ、彼の力が発現する力添えをしただけなのに。

 それなのにこんな偉い人にまで、皇帝の戴冠式に招かれてしまうなんて、驚きしかないじゃない。(続く)

第373話までお読みいただき、ありがとうございます。

マ・リエは戴冠式に出席するのでしょうか。

また次のお話も読んでいただけましたら嬉しいです。

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