何があっても変わらない関係
最近ペース落ちて来てすみません……。
瑠奈の告白を断って数日。
断った次の日は気不味くてどうしたら良いのか頭の中でグルグルと考えていたのが「おはよう時人君」の一言で消え去った。
彼女は何も思ってない様な態度でいつも通り俺に接してきた。
それには救われた。それのおかげで俺は罪悪感なく彼女と同じ空間にいる事が出来る。
ただ――。
「その恋は本物?」
彼女の言葉が引っかかる。
まるで俺と雫の事を言っている様な見透かされた様な台詞。
――当然だ。俺が雫を想う気持ちに嘘はない。
だけれども、その言葉が俺の心に残ってしまっていた。
♦︎
「はーい! じゃあ今から文化祭の出し物決めたいと思いまーす!」
教壇に立つ完士の声が教室内に響くとザワザワとクラスメイト達が騒ぎ出す。
学校イベントでも人気の文化祭。思い出作りの為に皆、気合いが入る。
「何かやりたい事ある人いますかー?」
完士の提案にピタッと沈黙が流れる。
思い出作りに重きを置くが、自分からの発案はしない――出来ないと言ったところか。
敷かれたレールの上を走る事しか出来ないのだろう。哀れなり――俺もだけど。
これはあかん。長引くやつやで。
そう思われた沈黙を破ったのは紗雪の1言だった。
「飲食系が良いかなー」
まさに天からの助け。そう言わんばかりに「良いじゃん」「やっぱ文化祭といえばそれよね」なんて都合の良い事を言うクラスメイト達に俺は「たこ焼きとか良いよなー!」なんて合わせておく。
ふっ。御曹司といえど俺もまだまだ小物。クラスからハブられる事を思えば長いものには巻かれろの精神よ。
しかし、予想外にも俺の言葉でクラスが再度沈黙となる。
え? なに? もしかして俺何かやっちゃいました?
「たこ焼き良いじゃん」
「やっぱお祭りといえばたこ焼きよね」
「たこ焼きは外せない」
まさかの俺の発言がバズった。
「――えっと。それじゃあ文化祭の出し物は『たこ焼き』で良いのかな?」
完士が聞くとクラスメイト達は「異議なーし」と調子の良い声を上げる。
「それじゃあ俺等のクラスは『たこ焼き』で決定! んで、飲食系をやるクラスは『飲食ランキングバトル』ってのに参加出来るから、そこで1位目指そう!」
完士の言葉にクラス中が盛り上がる。
「よっしゃやったろ!」
「うおおおおおお! 天辺とろうぜええええ!」
先程まで小物感を出していたクラスメイトが一変、かなりの盛り上がりを見せた。
♦︎
その後色々と段取りしていく中で決まった事がある。
「それじゃあ時人と一ノ瀬さんが練習用のたこ焼きの具材の買い出しで」
一応クジで決まった役割だが――。
「――お前仕組んだろ?」
文化祭での出し物、役割決めが一段落したので休憩となる。
完士が「自販機行こう」って誘ってきたから俺は頷いて一緒に自販機までやってきて、ジュースを買いながら聞いてやると「あはは」と乾いた笑いが出る。
「バレてたか」
「バレバレだよ」
缶ジュースのプルタブを開けて呆れた声を出す。
「許してくれ」
「まぁ良いけど――完士は知ってるのか?」
「何を?」
「俺と雫の事」
「あー」
完士は何の事か察して声を出すとジュースを飲んで答える。
「知ってるよ。だから悪い事したなぁと思って今謝ってるんだよ」
「ま、別に良いけど――でも、瑠奈は何を考えているんだ?」
「さぁな。流石にご主人様の腹の底までは分からない。でも、俺は瑠奈様の執事。主人の指示には従わないといけない。それで友人の恋仲が悪くなろうとも――」
「ええ!?」
俺は驚いて缶ジュースを握り潰してしまう。
中身が勢いよく飛び出してくる。
「別れさせようとか考えてんの!?」
「あ! いや! そこまでは多分――。でも……」
完士は頭を下げて謝ってくる。
「友人として時人側にはつけない。何があっても俺は瑠奈様側になってしまう。それだけは理解してくれ――それでも時人は俺の友人だ。例えそれで時人が俺を憎もうとも」
「ほんと。都合良い台詞」
笑いながら俺は潰れた缶をゴミ箱に捨てた。
「安心しろよ。お前らが何をしようが雫との関係も完士との関係も――瑠奈とも関係も何にも変わらない」
そう言い残して俺は「先に戻るわ」と言って教室に戻る。
「俺もそれを願うばかりだよ」




