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何が何でも10位内へ

 中間テストまで1週間となった。

 本日より学内はテスト色に染まる。

 授業を寝て過ごしていた奴は、まるで封印が解かれたかの様に起き上がり必死に授業を聞いているし、先生がやたらと「ここテストに出る」と言った瞬間にシャーペンを走らす音が響き渡る。

 授業が終われば、先生はまるでアイドルの様に沢山の生徒達に囲まれている。


 これがテスト1週間前。なんともげんきんな行動だが、もうすぐテストが始まるんだな、と実感できる。


 なんて、悠長に構えている場合ではない。


 俺にはやる事が2つあった。


 1つは政略結婚を企んでいるであろう、一ノ瀬 瑠奈が俺を惚れさす為にテスト勉強を共にするのを阻止する事。


 これに関しては雫が起動してくれるはずなので、何の問題もないはずだ。


 もし、瑠奈と一緒に勉強だなんてなったら――。




『時人君……。少し違う勉強しませんか?』

『違う……勉強?』

『はい……』

『どうして服を脱ぐんだ?』

『どうしてって……。こうしないと勉強出来ないからです。お互いの身体の勉強しませんか?』

『る、瑠奈……。良いのか?』

『良いも何も、大人になる為の勉強ですよ? 大事な事です。ほら……見て……時人くん……』




 ――ぐっは! 最高じゃね? あの身体を勉強させてくれるなんて最高じゃね?


 ――いかんいかん! ダメだ! 親父も言っていただろ! 相手が自分の事を好きじゃなかったらしんどいぞって。

 親父の言葉は確かだろう。そんな夫婦を何人も見てきたから出た言葉だ。

 だから、政略結婚なんて絶対にしない、させない、する気がない!


 まぁその点に関しては神様、仏様、雫様が裏で色々やってくれるので心配の必要はない。


 問題なのは2つ目――1週間の娯楽禁止プラス雫の言いなり。

 雫の言いなりとかは正直どうでも良い。

 最早あいつは俺を言いなりにしてるみたいなもんだ。悲しいけど。


 それよりも1週間の娯楽禁止が俺にはキツすぎる。


 娯楽禁止という訳だから、遊びに行くのは勿論、テレビゲームやテレビ鑑賞といったもの全て含まれるだろう。

 正直、それ位なら我慢出来る。1週間だけなら何とでもなるさ。


 しかし、その中でもスマホが見れないのがヤバい。

 スマホだぞスマホ!

 この中には俺の天使達が眠っているんだ!

 雫という破壊神のせいで、1度は離れ離れになってしまった天使達。

 ようやく再開を果たし、更に新しい天使達も加わり、俺の楽園が出来てきているのに1週間会えないとかふざけんな。

 それ即ち、1週間オ○ニー禁止じゃねぇかよ! 無理だわ! そんなん耐えられんわ! 思春期男子の性欲なめんなよ!




 ――ピッ。


 静寂の教室の中、煩悩の限りの妄想をしていると、いきなり音が聞こえて俺は隣を見てしまう。


 音が聞こえたと言ってもほんの小さな音で、俺の他には気が付いていなかったみたいだ。


「あ、ごめんなさい」


 つい、俺が音に反応してしまい、瑠奈を見てしまったので、彼女が謝りながら左手で、右腕に着けている時計のボタンを押す。


「それって……」

「え?」


 瑠奈は少し強張った声を出した。

 恐らく、この静寂の教室で音が鳴ったので、気不味いと思っているのだろう。


「もしかしてヌタローグッズの1つ?」


 そう聞くと瑠奈は少し表情を緩まして俺に腕時計を見してくる。


「違いますよ。普通の時計です」


 確かに彼女の言う通り、特に何の変哲もない時計が秒針を刻んでいた。


「――この時計、デートの時も着けていたんですけど気が付いてくれてませんでした?」


 そう言って軽く頬を膨らます瑠奈。


 で、デートか……。そう言われるとそそられるな……。


「ご、ごめん……。気が付かなかったよ」


 素直に謝ると瑠奈は小さく笑い「ふふ。全然良いですよ」と言ってくれる。


「ずっと着けてる?」

「はい。出掛ける時は基本的に」


 そうだったのか。そういや、あまり腕には視線がいかなかったもんな……。


「そうなのか……。ピアスも?」


 この会話の流れに任せてピアスの事を指摘すると「――えっ!?」と大きい声出しながら右耳を抑える瑠奈。


「一ノ瀬さん?」


 英語の先生が流石に気が付いて瑠奈に問いかける。


「あ……すみません。何でもないです」


 瑠奈は頭を下げて謝る。


「大丈夫ですか? なら、授業続けますよ。――ここは……」


 特に何も無かったかの様に授業へ戻る。


「――瑠奈……ごめん……」


 俺が変な事を聞いたから、変な注目を浴びせてしまったので謝ると彼女は手を振る。


「い、いえ……。だ、大丈夫……ですよ」


 瑠奈は顔を赤くして右耳を抑えていた。


 うぬ……。やはり怪しいな、そのピアス。




♦︎




 瑠奈のピアスは怪しいが、今はそんな事よりも大事な事がある。

 それは俺が中間テストで10位圏内に入らなければならないという事。何度も言うがこれが今、1番大事な事なのだ!


 放課後になり、俺は一目散に廊下側の真ん中の席で帰り支度をしている男子に声をかける。


「――完士。今日バイトか?」


 背に腹は変えられない。

 完士が俺に何か仕掛けて来ようが、それよりも俺の性欲――成績の方が大事だ。


 完士の成績はかなり優秀で、常にトップ3に入る頭脳の持ち主。マラソン姿はあれだが――それは関係ない。コイツと共に勉強すれば10位圏内も余裕だぜ。


「んにゃ。今日はないぜ」

「なら一緒に勉強しないか?」

「勉強?」

「そうそう。テスト勉強」

「あー……。テスト勉強ね――」


 完士は少しだけ間を置いて提案してくる。


「勉強するならファミレス行かないか?」

「ファミレス?」


 俺が聞くと頷きながらノビをする。


「ああ。小腹空いたし。腹に何か入れてからの方が勉強捗るしさ」

「それは一理あるな。というか、俺も軽く腹減ったから賛成だわ」


 そう言うと完士は含みのある笑みを見してきた。


「決まりだな」


 完士は立ち上がりながら言う。


「善は急げってな。行こうぜ」

「ああ」


 俺はこの時、深く考えずにいた。普通に考えればこの後の展開は予想出来たはずだ――。

 まぁ……。俺の脳内は性欲で一杯だったからな。仕方ないさ。

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで煩悩性欲まみれの主人公だと逆に清々しい笑
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