第12話
弥國の銃口が、迷いなく“もう一人の凪”へ向く。
85-M7式自動小銃。
安全装置は既に解除済み。
雷撃。
装填。
「止まれ」
短い一言。
「……物騒だなぁ」
もう一人の凪は困ったように笑った。
「初対面の人に銃を向けるなんて」
「お前は誰だ」
弥國の声は冷たい。
「朝雛凪」
「違う」
「うーん」
「じゃあ質問を変えようか」
その凪は笑う。
「君たちの知ってる朝雛凪って、どっち?」
「は?」
本物の凪が間抜けな声を出す。
「いや俺だろ」
「そうかな?」
「俺だよ!」
「それを証明できる?」
「いや……」
「ほら」
「え?」
「困ったね」
「くだらん」
メフィストが吐き捨てる。
「貴様が何者であれ、私には関係ない」
赤い瞳が細くなる。
「重要なのは」
「ここが何処で」
「何故連れて来られたかだ」
「お、話が分かる人」
「貴様は嫌いだ」
「酷くない?」
凪は頭を抱えた。
「いや待て待て待て」
「俺一人で十分なんだが!?」
「ひどいなぁ」
もう一人の凪は少しだけ頬を膨らませた。
「せっかく会えたのに」
「会いたくねぇよ!」
その時。
白い空間全体に波紋が走る。
そして。
初めて。
“声”がした。
いや。
声ではない。
意思。
概念。
理解。
それらが混ざり合った情報。
(観測完了)
(比較開始)
メフィストが眉を顰める。
弥國の指が引き金にかかる。
凪は嫌な予感しかしなかった。
(個体:朝雛凪)
(個体:朝雛凪)
(相違点:確認)
(差異:測定)
「……おい」
凪の顔が引きつる。
「何を比べてんだよ」
もう一人の凪は。
変わらず笑顔のまま。
まるで。
答えを知っているかのように。
静かに呟いた。
「そろそろ来るよ」
「彼が」
「彼?」
次の瞬間。
白い空間の一部が。
“黒く染まった”。
それを見たメフィストが。
初めて
ほんの僅かに目を見開いた。
「……馬鹿な」
「何故、ここにいる」
弥國も気付く。
弱点が見えない。
いや。
それ以前に。
「認識できない」
そして。
黒の中から。
一つの足音が響いた。
コツ。
「──ようやく見つけた」
知らない声。
だが。
何故か。
四人全員が。
その声に覚えがある気がした。




