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『始原の帰還者、札幌でひっそりお弁当屋を始めます〜深層の魔物で作った『魔素抜き弁当』が美味しすぎると探索者たちの間で話題な件〜』  作者: 姫宮澪
始原の帰還者【四食目】連続襲撃犯の濡れ衣を着せられたけど、すべては極上の『始原の魔物』を仕入れるための布石。仲間を遠ざけて裏で護衛に回る、【不器用で暗躍する凄腕シェフ】

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エピソード72 暗殺者の猛攻と丸投げされた白猫【世界滅亡の危機よりも弁当の仕入れを優先するシェフ】

 ……何かとんでもなく誤解をされているようだ。


 ナイフを引き抜きざまに地を蹴り上げたヒカリ――。残像を残して、すぐさま僕の目の前に現れる。


(速いっ!?)

 魔力、技量、身体能力ともに高レベルな探索者といってもいい。僕はとっさに体を反らして、斬撃を躱す。幾筋もの連続するナイフの軌道は、確実に急所を狙ったものだ。


(……本気で僕を討伐するつもりか?)


 術式を展開させる。反撃のためのものでなく、相手の能力を探るための解析である。

 ヒカリの能力とその身のこなしからしても、魔法系の暗殺者といったところだろう。

 ナッツとの感覚共有を通して、ある程度は彼女の能力を知っているつもりになっていたが、実際に対峙してみると、能力以上の強さが伝わってくる。


 ヒカリの放つナイフの軌道から避けるように、僕は後ろへと押されていく。


(……あのナイフ、何かの術式が施されている)

 彼女が虚空を切り裂く度、その軌道には魔力の残像が残る。術式でナイフのサイズを変えているのか、もしくは形状を変化させているのだろう。


「ちょっと、待とうか。多分、何か勘違いをしていると思うんだ」

「っ!?」


 このままでは埒が明かないと判断したのか、僕の言葉を無視して、そのままヒカリは後ろへと飛び去り……――。


「切り裂け、『剛刀の銀糸セライム・ナイフ』!」


 広間でグレイドに放ったあの不可視の針――目に見えない魔力の光線が散弾のように放たれる。


(……このままだと――!?)


 僕はとっさに魔法障壁を展開させた。

 薄いカーテンのように閃く透明な布が、硬殻海老アーマー・シュリンプに直撃する瞬間に、ヒカリの術式を拡散させた。


魔物みかたを守るなんて、さすがは魔王様ね」


(せっかくの食材に傷がつかないように、ヒカリの一撃を防いだだけなのだけど……)

 途方もなく、誤解は続いてしまっているようだ。


 どうするか……まだ、食材狩りはしたいし、朱里にかけられた術式を解かなければならない。それに加えて、目の前にいる暗殺者の誤解を解かないと、魔力暴走で朱里が世界を滅ぼしかねない。


『……ミナト、状況を説明しろ』

 僕もどうして命を狙われているのか知りたいところだが、念話を通して、これまでの経緯をナッツに説明した。


(現状は、朱里の周りに展開している『自己防衛アブソリュート・テリトリー』の術式を制御しない限り、始原の魔物たちはこの世界に放出されてしまうわけなんだ……)

『なるほど……そこに、ヒカリがお前をグレイドの仲間だと思っているわけだな』

(ナッツさん……面白がっているよね?)

『何を言うか。こんな滑稽なことなど、久方ぶりではないか』

(それを面白がってるって言うんだよ)


 この瞬間にも、ヒカリからの猛然たる閃撃は止むどころか増すばかりだ。

(……それに――)


 ちらりと魔物たちの様子を見やる。個体数が増えている。次元の裂け目が広がってきたのだろう。


(朱里さんは……?)

 球体に魔力を吸収されて、立っているのがやっとといった感じだ。このまま彼女が意識を失えば、魔力の暴走は免れない。


(あまり時間がないね……)

 周囲を見渡した僕は、グレイドを視界に探した。


「グレイドっ。動けるかい?」

「御意。もちろんです。主様」

「一瞬でいい……魔物たちの動きを止められないかな」

「始原の魔物どもの動きを……ですか……多くの時間は持ちませんがよろしいですか?」

「あぁ、構わない」


 僕は言って、ヒカリの放った一撃をペティナイフで受け止め、彼女のナイフごと大きく弾き飛ばした。


「魔物たちを統率して襲ってくるつもりね!」


(……いや、違うから)

 焦りの表情をにじませながら言うヒカリに、僕は心の中で速攻で否定する。

 だが、そんなことをしている場合ではない。


(ナッツさん……お願いがあるんだ――)

 僕は念話ごしに、作戦を伝えた。


『面倒だが仕方あるまい……』

 白い猫は僕の言葉を聞いて静かに頷くと……――。


「朱里を返しなさい! 魔王っ!!」

 叫びながら術式を展開させたヒカリの前に、ナッツが魔法盾を展開し、彼女の術式を解除した。


「ね……猫様……どうして」

『話を聞け。朱里の魔力によって、次元の裂け目が生まれている』

「それは本当ですか?」

『あれを見ろ――』


 白い猫が見上げた視線の先に、朱里がいる。彼女の周りに展開した幾つもの術式が旋回しているのが見える。


『朱里を捕らえているのは、紛れもなくあの術式だ。あれを支配しない限り、魔物たちの放出は防げんぞ』

「わかったわ。わたしは何をすればいい?」

『……あの術式を支配しろ』


 ナッツとのやり取りで、とりあえずヒカリの意識は僕から朱里へと向けられた。


 僕は五匹目の銀鱗鱒アビス・トラウトを仕留め……もとい、討伐し終えてから、恐鳥アーケオ・バードを冷凍して亜空間収納を完了させ……――グレイドに指示を出した。


 各自、僕の計画に沿って準備に入る。

 弁当の食材も充実したし、あとは朱里を救出して次元を元に戻すことだけだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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