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『始原の帰還者、札幌でひっそりお弁当屋を始めます〜深層の魔物で作った『魔素抜き弁当』が美味しすぎると探索者たちの間で話題な件〜』  作者: 姫宮澪
不死者の冤罪【六食目】本日のメニューは「土鍋ご飯とレッドバッファローの牛カツ弁当」です。

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エピソード101 落ちきった砂時計と太陽の広場【白猫に時間稼ぎを丸投げし、崩壊した街の違和感に気づくシェフ】

 不死者であるが為にーー生まれながらにして罪を背負うもの……。


 自然の摂理と法則を捻じ曲げ、ことわりの再構築の能力を秘めているもの――それらを、不死者の冤罪アンデットテイカーと呼ぶ。


 テイカー……すなわち、死を奪うものを示しているという。


 だが――万能というものでもない。ダンジョン内でしか不死者になれず……――時間という制約に違反したものには、罰が与えられる――と、カグラは言った。


『……まがけがれというものが、違反者を抹殺するわけだな』

 食べ終わったままの土鍋を両手で抱えながら、カグラは静かにうつむいた。その様子を見て、牛カツの皿をキレイに舐めながら、ナッツは深いため息を吐く。


「違反したのは、私――だから」

 ……理屈としても、能力スキルの制約もわかった。僕の気になることは一つ……。

「制約違反の理由は?」

「砂がなかった……」

 ……砂?

「私たち、不死者の冤罪アンデットテイカーには能力スキルがあって、ダンジョン内で不死者として活動できる時間に制約があるの」

『それが、あの砂時計……なのだな』

「知ってるの? 博識な猫さんね」

 少し驚いた様子でカグラは白い猫に言った。


 ……砂時計か? 忍と牢獄迷宮プリズンダンジョンに入ったときにあったものだろうか。


「たまにね。ダンジョンに入った直後に、すでに条件を満たしていれば、砂時計の砂はなくなってしまうこともあるのよ」


 ……ランダムダンジョンと似ている。理が示す概念の意味を破壊することで、ダンジョンは閉じられる。それと一緒だろう。

 それにだ。ポータルが出現していないというのは……


「条件は満たしているのに、答えが見つかっていない……こういうことかな?」

「……そう、ね」

 暗い表情で、カグラは土鍋をテーブルの上に置いた。

 ……残さず食べてくれたようで良かった。


『それで、砂時計の砂とやらがなくなると、亡霊ゴーストに制約違反で殺し屋たちを送り込まれるわけだな』

 呆れた顔でナッツは言った。

 だが、答えがわかったところでどうすることもできない……。


――いや、できる。


「答えを見つければいい……」

「無理よ。その間にも、まがけがれが私を抹殺しにくる……そんなことになれば、君たちも巻き込む」

「そこは、大丈夫――」

 僕の笑顔の視線の先には、ナッツの姿があった。

「ナッツさん……頼める?」

『お前……あの物騒なものとやり合えというのか』

「時間稼ぎでいいよ」

『あてはあるのか?』

「ない。探す……今からね」

 僕の返答に、一瞬だけ嫌な顔をした猫は言葉を止め、その後すぐに、視線をカグラに向けた。

『どうする? 迷子。こいつの大博打にかけるか?』

「私は……」

 答えの出ないまま、彼女は視線を足元に落とした。


 ……決められるものでもないことはわかっている。自分以外の者たちを犠牲にする決断が必要になるからだ。


 キュキュン、キュキュ……。


 鳥――違う、鳥型の魔物のように見える。


 店外には多重結界が展開されているはずだが……。

「ひょっとして、その丸っこいのは鳥のつもりかな?」

 背中にある短い羽を羽ばたかせながら、小さな魔物が店の中に飛び込んできた。そのまま、天井をくるくると回っている。

「コカトリスに決まってるでしょ」

『私には羽の生えたリスにしか見えないが……』

 ……ナッツにも判別不明か。

「リスじゃないわ。鳥、鳥だから」

 がばっと立ち上がると、カグラは入口の壁に背を置いて、身を隠した。

「気をつけて! 来るわ。まがけがれが……」

 ……あの鳥のような不格好な魔物は、カグラが召喚して放っていた偵察用のものだろう。

 召喚した魔物が知らせに来たということはーー亡霊ゴーストが、すぐそこまで迫っているということになる。


 かといって、ずっとこのまま、ここに隠れているわけにもいかない……手は打たないとーー僕は少し考えてから、ナッツとカグラに切り出した。


「作戦は、こうだよ。僕がダンジョンの秘密を解き明かす。カグラはそれまで生き残れ――以上」

「ちょ……ちょっと、そんなの作戦じゃない――」

 何かを言いたげなカグラを残し、僕はカレー屋を飛び出した。


 ……いる!? 何かが……。


 特定はできない。視線を巡らせる。五感の全てで感じ取り、見えない亡霊ゴーストたちの気配を探る。


 見張られているーー!


 でも、僕には手を出してこない。それは恐らく、不死者の冤罪アンデットテイカーへのペナルティであって、僕とは無関係なためだろう。


 だが、それは同時に、彼らがカグラの側にいるということでもある。


(それなら、好都合だ……)


 瞬間――術式展開、閃光の乱渦ヴォルテックス・スパーク


 ヒジジジジシィイイッ……!


 激しい稲光が乱舞するように、辺り一面を飲み込む。


 亡霊ゴーストだとしても、広範囲で無数の雷を突き落とせば、ダメージはなくとも足止めくらいにはなる。それに、無差別級の術式は見えない相手にも有効だ。


(ナッツさん! 後は頼んだよ)

『任せろ……だが、あまり時間はないぞ』

(わかってる!)

 僕は念話でナッツと会話した後、太陽の広場に向かった。


 ……違和感があった。始めからだ。魔物たちにも。崩壊した街にも。


――もしも、そうだとすれば……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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