表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/58

暴君鼠

「今だー!!」

空が白い光で包まれた直後、ドクロの叫びと共にれなの仲間達が同時にエネルギーを発射!!

様々なエネルギーが入り交じった虹色の光線が、残りのウジ怪人達を包み込む!

ウジ怪人達は次々に全身を削られ、莫大なエネルギーで爆発する時間さえ与えられずに体内の魔力ごと消し飛ばされた!



…焦土と化した闇の世界の大地。

隕石でも落ちたかのようなクレーターが無数に刻まれている。

ドクロ達が立っていた地面だけは辛うじて削られずに残り、大きな岩の柱のようになって残っていた。

タイガとダイルの捕食者二人が膝をついて息を切らす。

いつも肉体一つで戦う二人は、ここまでエネルギーを放出する事はないのだろう。

葵とれみが、二人の背中をさすってあげる。


「…!あれ見ろ!」

テリーの骨の指がある地点を指差す。


…バリアが消えたマウトが両手を大地につき、全身から黒い煙をたてながら目の前のれなと闇姫を睨んでいる。

闇姫はマウトの頭に足を置く。灰色の髪の毛に汚れを塗りたくり、そして顎を軽く蹴飛ばした。

凄まじい勢いで吹き飛ばされ、遠くへ飛ばされるマウト。そんな彼にも追い付く速度で走る闇姫。

また、彼の前に立ってみせる。

地に伏し、赤くなった顎を地面に擦り付けるマウト…。

「魂の力などと言ってバリアの種を明かすからだ。あれが悪喰の魂の力で展開されているなら、こちらも同じ悪喰の魂の力で応戦すれば良い。アホなのか、てめえ」

それを聞き、思い出したように目だけを空へ向けるマウト。


…赤い空から、ジャリュウがゆっくりと降りてくる。

そして、マウトの前に立ち、恐らく裏切られてから初めてマウトを見下してみせた。

マウトは右手から爪を射出するが…体が動かない。

「マウト。聞きたかった事がある」

マウトはジャリュウを思い切り睨みつつも、特に何も言わずに頭から生えた鼠耳を傾ける。

「何で裏切った?お前は嫌なところもあったが決して悪人ではないと思い続けていた。…何で、捕食者の島の平和を乱すような真似をした?」

このやり取りを遠くから聞いていて、葵達が期待した。

回答次第では、ジャリュウの心を変えるかもしれないと思ったのだ。


…しかし。

「お前は本当に馬鹿だな。何が最強の捕食者だ。俺は悪喰が死ぬまで捕食者の島で生き延び続け、この時が来るのを待ってたんだ。捕食者の帝国を築き上げ、俺がそこに君臨するその日を」

マウトは這って近づいてくる。

「ジャリュウ。お前も捕食者だろう。この世界を変えたいのだろう。俺達をここまで追い詰めた人間どもを皆殺しにしたいんだろう。ならば俺のところに就け。闇姫軍のように生ぬるい事などせずに、二度とこの地球に人間など生まれないように。殺し尽くそう…」

弱々しい声に、ジャリュウは呆れたため息をつく。

マウトは、何か大きな勘違いをしているようだ。ジャリュウが一方的に人間を滅ぼそうとしてると考えているのだ。


「…マウト。俺はな。世界のあるべき形を取り戻したいんだ」

ジャリュウはしゃがみ、マウトと目線を合わせる。

戦場では不気味なジャリュウの目が、美しい光を放っている。

「弱者でも強者へ抵抗できる力を持つ世の中。互いに一方的に打ちのめされる事なく、平等に生きる世界を目指したい。…だが、今の世の中、それを実現するには善行はあまりに無力だ。ならばいっその事、悪として世界を支配し、世界のルールをコントロールできるようになれば…」

声のトーンが落ちていくジャリュウ…。


改めて、自分は馬鹿な事をしていると分かっていた。

だが、もはやこうするしかないのだ。大きな事を成し遂げる…その為には、犠牲は必要なのだ。

目の前にいるマウトだって、その犠牲だ…。


(…もう後戻りはできん)

立ち上がり、右手で拳を作るジャリュウ。

闇姫とれなはジャリュウの心情を察し、後ずさって離れる。れなは、何かを言いたそうな表情で言葉を必死に殺してる。


「…許せ、マウト!!」

振り下ろされるジャリュウの拳!



…マウトの両目が、黄色く光った。





…直後、ジャリュウの拳から血が吹き出し、動きを止めてしまう。

「なっ…」

流石に予想外だ。ジャリュウは拳を引っ込め、マウトを見る。


…もう動く事もできないはずのマウトが、右手から爪を射出してジャリュウの拳を切り裂いていた。

先程までの様子が嘘であったかのように立ち上がり、一同を睨む。


「ジャリュウ…お前のその考えは、この力を前にしてすぐに崩れ去る事になるだろう。強者の正しいあり方は、弱者を従わせ、踏みつけ、そして食らう。それこそが捕食者の生き方だ…俺達の命運なのだ!!」

マウトは膝を曲げ、今までにない勢いで力を高める。

これには闇姫も目を丸め、れなも焦りを隠せない。


「はああああああ!!!」

マウトから強風が放たれる。

それを見た葵が何かを察し、叫ぶ。

「…!三人とも離れて!!」

三人は飛行し、マウトから離れる。



…マウトから血のように赤いオーラが滲み出し、その体は少しずつ筋肉が肥大化していく。

灰色の体毛が全身から大量に生えていき、口からは刃物のように鋭い前歯が生えていく…。


…そして…。


「ジャリュウ…これこそが悪喰の魂の力だ。お前達とは違い、悪喰と同じように他者を食い物にして生きてきた俺だからこそ引き出せる、最強の力!俺こそが、最強の捕食者だぁぁ!!」

筋骨逞しい鼠の巨人と化したマウト。

その大きさは、まるで怪獣のようだ。今までの小男とは訳が違う。

マウトは笑いながら拳を振り下ろしてくる!

れなはその拳を受け止めようとするが…。

「ぐっ!!」

とてつもない怪力だ。れなは秒も持たずに地面に叩きつけられる!!

それを見て、真っ先に飛び出したのはナイフを構えるラオンだ。

飛び交う瓦礫を切り裂きながら急接近し、マウトの腕にナイフを突き刺そうとするが…。

「見え見えだ!!」

マウトは左腕を振るい、ラオンを殴り飛ばした!

飛ばされるラオンを葵が受け止め、右手に持ったハンドガンでマウトの顔目掛けて発砲!

しかし、マウトは背中を思い切り反らし、銃弾を回避する。

すぐに体勢を変えると、巨体を滑らせるような勢いでラオンと葵のもとへ突進し、二人を蹴飛ばした!!

天高く吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる二人を見て、テリーが驚きを隠せない。

「あいつあんなでかいくせに何て速さだ…一体何であんな姿に!?」

「悪喰の魂の力だ」

ダイルが言った。

「悪喰もマウトも同胞の捕食者達を使って最終的には世界の頂点に立つ目的が一致してる。つまりマウトは悪喰とほぼ同じ邪悪な魂を持っているという事だ。マウトの魂と悪喰の魂が混じり合って一つとなり、マウトの肉体に染み付いた。今や悪喰の魂はやつの体の一部。秘められた力を引き出す事など造作もないのだ」

話してる間にもマウトは四足歩行になり、更に速度をつけて巨大化した爪でれなを切り裂こうと執行に追いかける。

れなはひたすら回避していくが、あまりの速さに若干目を回していた。

「お姉ちゃん!」

姉のピンチにれみが飛び出し、マウトの背中を蹴りつける!

…だがダメージがない。マウトは勢いよく振り返って爪を叩きつけ、れみを吹っ飛ばす!

「ぐっ…今だー!!姉貴ー!!」

吹っ飛びながら、思わずれなを姉貴と呼ぶれみ。

れなはマウトの隙を突き、右手に瞬時に力を集めて叫ぶ。

「オメガキャノン!!!」

右手の平から青い破壊光線が放たれる!

マウトの上半身が光線に飲み込まれ…。


…後には、マウトの下半身のみが残る。

下半身のみになっても、依然としてマウトは立っている。

一同は何も言わず、血を流すマウトの下半身に目を向ける…。


「…馬鹿が!」

下半身から生えるように、上半身が再生した…!

驚く一同の隙を見つけたマウトは口から赤い光線を吐き出し、一斉に凪ぎ払う!!

闇姫とジャリュウはかわすが、それ以外は全員光線に叩きつけられてしまう!

「げひゃひゃ!!正に最強!正に捕食者だ!!俺がこの世界で一番強いんだぁーーっ!!!」

マウトの笑い声が、闇の世界の赤い空に響き渡る…!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ